長谷川式簡易知能評価スケールで認知症の診断
50代、60代の中高年者にとって、親の介護は自分たちの生活の一部になってきているのではないでしょうか。若い頃はそうしたことを考えることさえしませんでしたが、この年代になると多くのシニアの共通した課題だと思います。 今年5月NHKスペシャルで「認知症800万人時代」が話題になりました。平成24年時点で認知症462万人、軽度認知障害400万人、又、認知症行方不明者が年間1万人にのぼることから、現在とこれからの日本の大きな社会問題になってくると思います。 町内にある市の広報スピーカーからは、ほぼ毎日のように高齢者の捜索アナウンスが流れています。認知症が原因で散歩のつもりで家を出たまま帰ってこないケースが、こんなにも多いのかと驚きます。
3ケ月ぶりに実家で一人暮らしの母親を訪ねました。半年前、物忘れが多くなってきた母の介護認定手続きをした時、認知症の進行度合いをみる長谷川式簡易知能評価スケールを受けました。結果は、30点満点中12点で中度の認知症と診断されました。この診断レベルは「いつ徘徊してもおかしくない」というものでした。医者からは、同居するか施設入居が望ましいと言われました。それだけ深刻な状態にあるという点数です。 毎日近くのスーパーに買い物に行き、食事は3食すべて自炊できると自負している母ですが、いつ何が起きるか心配です。 認知症の診断により介護1に認定されました。認知症の場合、普段の生活をしていく上で「自分は大丈夫」という言葉が一番危ないそうです。毎日買い物に行っている、毎日食事を作って食べている、毎日お風呂に入って身体を洗っている、毎日着替えて洗濯しているなど、言葉どおりに受け止めてしまいがちですが、一番そのことが怪しいということだそうです。疑うわけではありませんが、例えばスーパーに買い物に行っても何も買わずに徘徊しているだけ、お風呂に入っていると言っているけど全く身体を洗っていないなど、一人暮らしの場合は、生活シーンを注意深く見ることが大事ですよと医者に言われました。 特に持病のない母は施設に入居するほどでもありませんが、認知症という病気を抱えている以上いつ何が起きるかわかりません。そういう意味では介護サービスを有効に使うことが必要だと思いました。一人暮らしですから親族にとって何よりも「見守り体制の頻度を多くする」ことが差し当たっての対応ではないかと思いました。まだ通所のデイサービスは受けていませんが、週2回のお掃除サービスを続けています。
写真左:お風呂に入っていると言ってますが、身体を洗っているかどうかわかりません。在宅でのお風呂の介助や見守りもできるようです。 写真右:認知症の薬は毎日一錠服用しますが、服用を忘れてしまったり、一度に何錠も飲んでしまうことがあったので、一錠づつ飲むようにカレンダー化しました。
半年後、長谷川式評価点数が12点から16点に!
認知症の薬は、アリセプトD錠5mgを服用しています。最初の診断から6ケ月経ち、今回再検査しました。同じように長谷川式スケールを実施したところなんと16点でした。この薬は脳の働きを活性化するもので、認知症の進行を抑える効果があるということです。 個人によってその効果はそれぞれだと思いますが、母の場合は効果的だったようです。 医者は、もし結果が悪ければもう一段階上の薬を考えていたようですが、評価スケールの点数が上がったことから、引き続き同じ薬で様子をみることにしました。こうしたケースは、患者と薬がうまく合ったということと、最初の診断テストの身体状況もあったんではないかと言ってましたが、いずれにしても進行が抑えられているとのことでした。
認知症は、生活の中で人によっていろいろな行動や発言がありさまざまですが、母の場合は同じ行動を繰り返したり、同じ言葉を繰り返したりします。さっき同じことを言ったね、という発言は5~6回当たり前になってきています。夕食の献立が気になり冷蔵庫を何度も開け閉めする行動もあります。これも認知症という病気ですから、やんわりと見守るようにしています。 今の医療技術では改善する方法はありません。できるだけ進行を抑えることまでです。
早期退職して一人暮らしの母親の様子を見にくる時間ができました。仮に定年まで働き、更に65歳まで継続雇用で働き続けていたら、こうした時間もなかったと思います。 一般的に、働いている中で一人暮らしの親の様子をみる余裕はなかなかないと思います。 これからもっと認知症患者が多くなる社会がやってきます。国は各自治体まかせではなく、具体的に地域の見守り体制を強化する政策も打ち出していくことが必要だと思います。そういう意味では、介護・医療などの社会保障は、これからの日本の大きな課題だと思います。