税と暮らしを考える  消費税

企業への消費税還付金って何?

今年4月消費税増税によって8%になりました。更に来年10%に引き上げられる予定です。  先日、政府の月例経済報告では、9月・10月と2ケ月連続して景気判断を引き下げました。  新聞TVなどのマスコミでも報道されていますが、現政権は来年10月からの消費税の再増税に向け7~9月の国民総生産(GDP)などを見て判断すると言っています。自民党内でも増税に対しての慎重論も出てきているようです。                     10月のNHK世論調査では、消費税増税10%への引き上げについて「予定通り行う」23%に対して「遅らせる」「取りやめ」が合わせて73%だそうです。

現在、勤労者の実質収入が14ケ月連続マイナスしている中、4月の増税以降、円安の影響もあり物価が上昇して家計消費支出は減少し続けています。              前回、当ブログでもお話しましたが、「法人税」の税制見直しや改善によって消費税の増税はおろか、消費税自体を廃止することができます。                 本来であれば国の税収入は、企業活動によって見込まれるはずにもかかわらず、優遇税制により減収し、その穴埋めとして消費税増税を推し進めています。           更にここで問題なのが消費税還付金制度です。消費税増税によって企業が儲かるしくみに転嫁してきていることです。

輸出大企業が消費税増税によって儲かる?

消費税還付金制度の中に「輸出戻し税」というものがあります。これは、「輸出品に課税しない」というもので、海外の消費者から日本の消費税をとることはできない制度です。 輸出品に消費税を課さない場合、輸出業者は仕入れの際に払った消費税分が「損」になってしまいます。その分を税務署が輸出業者に対して還付するしくみです。        私たちは商品を購入する時に消費税分を支払っています。そして、販売した事業者は売上の消費税分と仕入れにかかった消費税分の差額を税務署に納税しています。      これを「仕入れ税額控除」と言っています。                     一般的に商品価格は=仕入れ価格+経費分+利益分が入っているので、一般に仕入れ価格より販売価格の方が高くなります。それぞれの価格に対して消費税分が乗りますから、その差額が消費税として納税されます。                        この「仕入れ税額控除」に大きなカラクリ(強者と弱者の力関係)が潜んでいます。  それは、どの業界でも同じですが仕入れの価格決定権は、常に親会社や大企業が持っています。こうした強い企業は、中小零細企業、下請けなどから仕入れ価格の引き下げを要求します。その場合、例えば「消費税分だけ下げろ」などと言って原価削減する実態があります。つまり、立場の弱い下請けは、元請けに対して消費税分を請求しにくいことです。価格競争が激しい業界では、販売価格に転嫁できなく自分の利益を削ることになります。

輸出大手企業の場合「輸出戻し税」をうまく利用して、仕入れ先や下請けに払った消費税分を還付金として受け取っています。しかし、実際には仕入れ先や下請けに対して消費税分の原価削減をしているので、そっくり還付金が利益として入るしくみになっています。

輸出大企業上位10社に年間約8700億円の還付金

湖東京至氏(税理士、関東学院大学大学院教授)が全国商工新聞の中で指摘しています。     消費税の最大の不公平は、トヨタ自動車など巨大輸出企業に対する還付金制度です。大企業などは消費税を1円も税務署に納めていないのに巨額の還付金をもらっています。10年度の有価証券報告書をもとにこれらの大企業への還付金を推算したところ、上位10社で8698億円に上ります。還付金の合計は3兆3762億円で、この額は全消費税収のおよそ28%に相当します。                                一方、中小事業者は消費税を完全に転嫁できないのに納税額が発生するため、納税資金の手当てに四苦八苦しています・・・。巨大輸出企業は滞納の心配はまったくなく、還付金の振り込みを楽しみに待っています。                        政府は「外国の消費者から日本の消費税はもらえないから、トヨタなどが仕入れの際に払った消費税分を返すのだ」と説明します。ですがトヨタなどは下請けに消費税を本当に払っているのでしょうか。経済取引では価格決定権を持っているのは常に親会社です。「消費税まけとけ」といわれればその価格で納品しなくてはならず、たとえ消費税分を請求書に書いても元の価格が下げられていれば消費税をもらったことにはなりません

消費税還付金  消費税還付金2

還付金の最も多いトヨタ自動車は最近5年間で1兆3000億円の還付金を受けています。   消費者はトヨタの車を買う時に消費税を払います。トヨタは当然、国内販売分の消費税を税務署に納めなければなりません。しかし、トヨタは還付金から差し引き1円も納税していません。つまり、国内販売分の消費税額を差し引いても、なお巨額の還付金がもらえます

輸出還付金で税務署が赤字?

全国の税務署のうち消費税の還付金が消費税の税収を上回っている赤字の税務署が、9つもあります。9つの税務署はいずれもその管内に輸出企業を抱えています。赤字の一番大きい税務署はトヨタ自動車のある愛知・豊田税務署ですが、管内の消費税収入より還付金が1153億円も上回っています。(09年度分、5%)還付金をもらっているのは全国でおよそ15万5000社、そのほとんどが輸出企業です。

還付金 税務署

 

消費税制度の廃止が問題解決の糸口

還付金を受けている企業がすべて消費税分を取引先にまったく払っていないというわけではありません。問題は、消費税の還付制度そのものにあるのではなく、大企業が下請けに対して消費税分を押し付けているところにあると思います。                         一部の巨大企業が法人税減税や優遇税制によって、本来納税すべき税金が免除されています。政府と財界は、世界的な企業間競争に打ち勝つためにもこうした税制度が必要だと説いています。企業の成長が、新たな雇用を生み出し、勤労者の賃金が上がり消費が増えることで豊かな生活ができるようになるという論法です。(三段論法)          果たして現実はそうでしょうか? 賃金は14ケ月連続減少、家計消費支出も減少、非正規労働者の拡大がすすんでいます。                          今年4月の消費税増税による物価高騰から家計の圧迫、円安による輸入原材料や資材の高騰から中小零細企業の収益悪化、更に一部輸出大企業の下請けに対しての仕入れ原価削減などからダブル・トリプルパンチが拡大しています。                 こうした状況の中で来年10月消費税が10%になろうと検討されています。特に輸出大企業の下請けは更なる原価削減が強要され収益は大きく悪化することは目に見えています。

消費税制度がある限り還付金制度があり、そのもの自体否定するものではありません。輸出企業にとって必要な制度であることは分かります。消費税制度という不公平であいまいな税制度自体に問題があるということです。消費税がなければ当然還付金制度もなくなります。したがって、消費税増税ウンヌンという論議より「消費税の廃止」が全ての問題を解決する糸口だと思います。                            消費税がなければ国の歳入が減少して、国家そのものの運営に支障をきたすことになるという考えがあるかもしれませんが、その前に法人税の適正化をはじめとする日本の税制上の欠陥を修正することにあると思います。

私は35年間小売業に携わってきました。この小売業界は価格競争が激しいです。1円でも競合他社より安い価格で販売しようと店頭価格を設定します。一般に「水もの」という商品があります。これはペットボトルの水であったり、清涼飲料水というソフトドリンクなどです。水物ですから人間が生きていく上で必要なものです。当然、価格感度が高い商品に位置付けられます。例えばコンビニや自動販売機で売られている500mlのソフトドリンクは、ほぼ定価(メーカー小売希望価格)です。これがスーパーに行けば3割~4割安い価格で販売されています。130円~150円する商品が88円、78円などです。更に2Lの水で言えば100円を切る価格は当たり前で中には78円、68円の商品もあります。        これらの商品は、単純差益率(粗利)が1%~3%なんて当たり前の商品ばかりです。特売になればいわゆる逆ザヤ(マイナス利益)になります。               消費税率が上がっても(5%→8%→10%)価格競争が激しい業界ですから、本体価格を上げることができません。

企業は販売価格を抑えながら少しでも利益を確保するためにいろいろな手段を講じます。その方法として「仕入原価の削減」です。特に大手小売業は、仕入先に対して原価交渉を行い、大量発注による原価の引き下げを要求します。当然この原価引き下げは、連鎖的に下請けへの原材料引下げにつながっていきます。仕入先及び各下請け企業は、少なくても身銭を切るかたちになります。更に、コストの安い海外への進出もあります。                                                                   もう一方で企業は「経費の削減」を行います。消費税率が上がっても本体価格の据え置きや商品値下げ(特売など)が行われ続けますから、製造から最終小売までの全ての流通段階で企業の経費削減活動が実施されることになります。                   この経費削減の最も象徴的なものが「人件費」です。企業活動の中でいろいろな経費が発生します。その中で大きなウェイトをもつ人件費は削減の対象になります。例えば生産性の向上ということで機械化、従業員の能力開発、業務の統合などがあります。こうした活動は、企業の成長を支えていく上でも重要な手段であり仕組みだと思います。      しかし問題は、こうした企業努力にも関わらず消費税増税による収益の悪化が続き、更なる経費削減が行われます。そして賃金の抑制や人員削減、本社員から契約・パート社員への切り替えによる非正規労働者の拡大につながっていきます。             膨大な内部留保を持ち、利益の上がっている巨大企業でさえも本社員の賃金抑制が行われ、派遣社員や期間契約社員への依存が高まっているのが現状です

勤労者の平均年収が400万円台の中、生活にゆとりがありません。生活防衛のために財布の紐を固く締めるようになります。その結果、消費支出が減少してきます。消費支出が減少すれば当然企業の収益も悪化してきます。収益が悪化すれば更なる商品価格引き下げがはじまり、経費削減ということで人件費抑制が行われる悪循環に陥ります。       ここ最近、物価が3%台に上昇してきたと言われてきています。消費税増税や円安による輸入資材、原材料の高騰があるためですが、大企業の下請けである中小零細企業にとっては、その高騰分を原価上乗せに反映できなく更に身銭を切る現状もあります。         物価高を上回る賃金の上昇がなければ消費支出は増えません。ここに「デフレ不況」の根本的な原因があると思います。大企業をはじめとする利益が上がっている企業は、まず膨大な内部留保やマネーゲームで投資している巨大資金を従業員の賃金・雇用にまわすこと消費税の廃止こそが「デフレ不況」脱却につながると思います。