3/21日 雪の奥多摩「三頭山」の遭難事故
下山不能の13人パーティー?!
一昨日の夜9時頃、テレビニュースを見ていたところ奥多摩で遭難事故が発生した報道がありました。
この時はまだ救助隊が向かっているとのことで、現地からのライブの放送でしたから驚きました。
こんな時間に?なんで?という思いが頭をよぎりました。
この日は関東地方も例年にない降雪があったことから無理して登ったのかなと思いました。
それにしても深夜のこの時間になっても下山できない状況になったというのは、よほどのことが起きたとしかいえません。
翌朝のニュースでは、脱水症状や低体温症、けが人はいるものの全員無事に救助された報道を聞いて何よりだったと思いました。
3/22日 東京新聞夕刊 3/22日 読売新聞夕刊
奥多摩は私の住む川越からも近く、主に夏季を除く春と秋のシーズンにはよく出かけています。
夏の高山に向けたトレーニングを兼ねてこの奥多摩をベースにしているほど頻度は高いです。
そういう意味では、低山ではあるけれどもその怖さもある程度分かっています。
昨年11月、奥多摩の鷹ノ巣山から榧ノ木尾根(かやのきおね)を下山する途中で道迷いになりました。
この時の記録は、ブログ「道迷いの心理」と題してアップしています。
晴天のお昼時にまさか道迷い?と思われるかもしれませんが、この時は尾根道全体が枯葉で埋め尽くされ登山道を見失ったことが原因でした。
こうした「まさか」が心理的に大きなダメージとなって平常心を失うことにつながるのではないかと思います。
3/22日夕方のテレビニュース
報道によれば3/21日午前10時、奥多摩湖小河内神社から登山開始。
ヌカザス尾根を登り、遭難した場所がヌカザス山と三頭山の間ということのようでした。
通常の登山であればヌカザス山まで標準タイムは2時間10分。ヌカザス山から三頭山頂上まで約1時間です。
積雪や休憩を考慮すればヌカザス山までは3~4時間位でしょうか?
この時点で午後1~2時頃になります。
又、登山道を見失ったことのようですから更に時間はプラスされるかもしれません。
とすれば、仮に三頭山頂上にたどり着いても日が暮れる時間帯になることはおおよそ推測できます。
この時点で下山の判断がされればと・・・。
今回の遭難は、積雪と低温という気象によって起こるべくして起きたのではないかと思います。
普通であればこの時期の異常気象という降雪から登山を止める判断をすべきでしたが、報道によればSNSで知り合った者同士で登山を決行したようです。
こうしたパーティ登山には大きなリスクが存在すると思います。
それは初対面同士ということで登山に関してほとんどコミュニケーションがとられることなく進んでしまうデメリットがあるからです。
お互いが不安を抱えながら、お互いが体力の限界まで行きつくところまで行ってしまう怖さではないかと思います。
こうした中でしっかりしたコミュニケーションが取れていれば、途中下山の判断ができるのではないかと思います。
もちろん最初から中止の判断もできたのではないかと。
今回の事故ではコミュニケーション不足と同時に降雪による低体温で体力が一気に低下し、更に積雪によって登山道を見失ったことから心理的な焦りがあったのではないかと推測します。
この心理的な焦りが先ほど述べた ”平常心を失う” ことにつながり、下山という選択肢を取らず無意識のうちに前に進む(登る)ことしか考えない状態に陥ったのではないかと思いました。
まさにすべてにおいて初対面同士のパーティ登山のデメリットが出た遭難事故だったと感じました。
私も3年前に単独の北アルプス縦走登山の時、山小屋で知り合った初対面のパーティ(3人組)と一緒になって一日行動を共にしたことがありました。
ほぼ一日中風雨の中の登山でした。この時、メンバーの一人が体調不良(軽い低体温症)を起こしたため、リーダー格の人にトラバースルート(エスケープルート)を進言しましたが、そのまま急登を続行するかたちになりました。
結果、体調不良を起こした方は体力を消耗し切って、その途中歩行不能に陥り担いで山小屋にたどり着いた経験があります。
この時、初対面同士のパーティ登山の難しさを思い知らされました。
お互いの力量(体力や技術、知識など)が分からないこと、コミュニケーションが取りづらいことなどが様々な判断を狂わせてしまうことでした。
今回の遭難事故の報道を目にした時、シニアのパーティかな?という思いが頭をよぎりました。
しかし、今回は10~40代の若い世代でした。
通常パーティ登山といえば、知り合い同士の友人仲間とか旅行会社で企画したガイド付きのツアーというものが浮かびますが、SNSで知り合った初対面同士というパーティーがあるんですね。全く思いもよりませんでした。
こうしたかたちでの登山は、当然「登山届」はしていません。ましてやガイドもいません。
軽い気持ちで連れだって行ってみようか、なんていう感覚なんでしょうか。
あまりにも山を軽くみているようにしか思えません。
こうした事故が何らかのかたちで教訓になればと思います。
私は年に数回登山仲間たちと共にパーティ登山を楽しんでいます。
お互い気ごころの知れた友人であり、お互いの力量も分かっています。
そんな仲間たちとの登山であっても単独行と違った緊張感が毎回あります。
パーティ登山の場合、複数ということから安心感があり、又、感動を共有したり、語り合いながら登山ができるという点で大きなメリットがあります。
反面、天候の変化や登山道の具合による行程の変更、メンバー一人ひとりの体調の様子など常にそれらを気にかけた登山と判断が要求されてきます。
そういう意味では、仲間たちと楽しく登山をする一方で、一人ひとりが常に緊張感を持った行動であってほしいと思います。