山と山小屋 (1)

山小屋の思い出

山で知り合った登山者たちとの語らい

先日、ヤマレコ友達(メールだけのお友達)の日記に「山と山小屋」小林百合子=文、野川かさね=写真(平凡社)の書籍が紹介されていました。こういった本があるのかと早速アマゾンで手配して読んでみました。副題「週末に行きたい17軒」の山小屋の様子が掲載されていました。

山と山小屋2 山と山小屋3

 

振り返ってみると、十数年前から登山をやりはじめて多くの山小屋に泊まってきました。  いつもは山の景色や雄大な山容に魅せられ、特に山小屋を意識することなく過ごしてきました。しかし、こうして山小屋だけにスポットを当てて思い返してみるといろいろな思い出が蘇ってきます。                                山小屋は単に宿泊するだけの場所ではないと思っています。山をやりはじめた頃は、日が傾く夕方に到着して、あわただしく夕食を済ませてすぐに寝てしまいました。夏山中心の登山でしたので夕方でも明るかったことが、そうした行動を起こしていたのでしょう。  登山の基本「早出早着」はよく言われる言葉です。天気が安定した早朝に行動することでガスがかかっていない景色が楽しめること。小屋に早く着くことで疲労を回復させること。そして何よりも山小屋でのゆっくりとした時間を充実させることだと思っています。 私は、登山とは単に山を登るだけの行為だとは考えていません。景色や高山の動植物を観て楽しみ、更に、出会った登山者たちとの山の語らいをすることだと思っています。   最近、山小屋到着時間はお昼過ぎ頃にしています。遅くても14時頃で、時間がまだあるから先を目指そうという考えは一切捨てました。働いていれば休日日数が決められているので、どうしても先を急ぐ山旅になってしまいますが、サンデー毎日であればゆっくと時間をかけて楽しむようになりました。これも完全リタイアの特権でしょう。        今までがむしゃらに働いてきたせいか、空いた時間を有効に使うということが苦手な方が多いのではないでしょうか。私もそうでしたが、”何かしなければいけない””何かやることがないか”など、と考えてしまいます。山小屋でそうした方々をよく見受けます。    「こんなに早く着いちゃったから、次の山小屋まで行けたね」などと言ってブラブラしている方々のことです。慣れている方や自分のスタイルを持った方は、山小屋での過ごし方を熟知しています。だいたい観察していればわかるものです。             ゆっくり昼寝をする方、スケッチや写真を撮る方、テラスで珈琲やビールを飲みながら景色や読書を楽しむ方、知らない者同士で山談義に夢中になっている方など。こうした何でもないことが山小屋での楽しみなんですね。

この山小屋泊だけが目的の登山者たち ~ 北穂高岳山荘

2013年10月、北穂高岳山荘に泊まりました。槍ヶ岳の稜線上にある南岳から大キレットを通過して、見上げる岩壁のてっぺんにある山小屋です。北穂高岳直下の標高3100mの場所に張り付くように建っています。夏にはクラッシック音楽祭が開催されるようです。食堂兼ラウンジは狭かったですが、なんといってもテラスからの眺望は素晴らしいものです。ここのラウンジで、はじめて知り合った登山者たちと山の話に夢中になりました。どちらから来られましたか?と聞くと「涸沢からです」。明日はどちら方面に行きますか?と聞くと「涸沢に降ります」という応えが返ってきます。つまり、皆さんこの北穂山荘を目指して来たということでした。以前より私もぜひ泊まってみたい山小屋のひとつでしたが、多くの登山者が、この山小屋に宿泊する目的で来ていたということです。特に単独の女性が多かったことが印象的でした。他の山小屋と比較して何か特別なものがあるかというと、特にはありませんが、テラスからの槍・穂高岳や常念山脈の山並み、裏銀座や雲ノ平方面の名峰も一望できます。そしてラウンジではクラシック音楽が流れ、ゆっくりとした時間が漂っていました。                                私のカミサンもぜひ一度行ってみたい山小屋と言っていました。今年の秋、二人で紅葉登山に行く予定です。

大キレット北穂山荘 北穂山荘から前穂

写真左:大キレットから仰ぎ見る北穂高岳。写真左上てっぺんに山荘があります。    写真右:山荘から前穂高岳が見えます。

北穂から常念 北穂テラス

写真左:北穂高岳頂上直下の山荘屋根。正面に常念岳と常念乗越が眺望。        写真右:北穂高岳山荘のテラス。槍の穂先が見えます。

北穂テラス珈琲 北穂山荘窓から

珈琲カップは「北ホ」のロゴマーク入りです。泊まった部屋の窓からテラスと山並みが見えました。

山のブログ 紅葉の槍沢と涸沢

「山と山小屋」つづく。