60代~切り替えの年代
もういいんじゃないの、もういいよ・・・。
私は退職して4年目に入ります。
この間、同世代の友人や知人、又、団塊世代前後の先輩の方々との出会いが数多くありました。
それらの方々は、定年退職前後の人やそのご夫婦、継続雇用で働き続けている人やそのOB会・飲み会など、又、65歳になってこれからの生き方を考えている人など・・・。
私は今まで、ブログ「60歳からの現実(リアル)」を通して、60代というのは人生の節目ということを何度か述べてきました。
60歳定年で完全リタイアする人、継続雇用で働き続ける人、転職・起業して新たな仕事にチャレンジする人、65歳以降も働き続ける人など、個人によってさまざまな生き方があると思います。
それぞれ異なる生き方の中で、この60歳を境にひとつだけ共通することは、これからの人生をどうするか、どう生きるかということを「考えている世代」ではないかということです。
こうした中で、60代のキーワードとして「もういいんじゃないの」「もういいよ」という言葉が浮かびます。
ここでは、「もう終わり」だとか「それ以上望まない」とか「限界」という意味ではありません。
「60代は切り替えの年代」なんだと思います。
多くの方との出会いとその会話の中で、この言葉が表す意味は深く考えさせられるものがあるように思えます。
私たちの日常生活のいろいろな場面で、そうした言葉を使って会話風にまとめてみました。
実際に体験したこと、聞いたこと、又、それに近い場面を想定して脚本した会話もあります。
いずれにしても私たち「60歳からの現実(リアル)」なんでしょうか。
夫婦の会話
妻:「あなた、65歳まで永年ご苦労さまでした。この後、働かなくてももういいんじゃないの。あとは年金と貯蓄があるから、それでなんとか老後の生活送れるわよ」
夫:「そうは言っても身体を動かしていた方が気がまぎれるし、家計の足しにもなるからな~」
妻:「だったら、やりたがっていた登山、サイクリング、それとマラソンにもチャレンジしてみたら」
夫:「この歳で?~」
妻:「だって、男性の健康寿命は70歳くらいまでよ。今やらなければいつやるの!」
夫:「〇〇子(妻)、今まで家事、子育て、父の介護世話まで一人でやってきてくれてありがとう。退職したからもういいよ、これからは俺も手伝うよ」
妻:「へ~、あなたできるの?大丈夫」
夫:「いろいろ教えてくれ。父の世話の手伝いや昼めしぐらいだったら作るよ。その間、友達とゆっくりおしゃべりしてくればいい」
妻:「そうね、お昼ごはん作ってくれるだけで助かるわ」
夫:「〇〇子(妻)、退職したから海外旅行にでも行こうか」
妻:「エッ!海外旅行?」
夫:「今まで働きづめで、お前と一緒に一度も行ったことがなかったからな」
妻:「でもお金かかるんでしょ、大丈夫?」
夫:「もういいんじゃないの、このくらいの贅沢は。これからは年1~2回位行こうか」
妻:「お隣のご主人退職後も継続雇用で働いているみたい。友達のご主人も子会社で顧問として働くと言っていたけど」
夫:「ふ~ん、そうなんだ~。人にはそれぞれいろいろな考えや事情があって働き続ける人もいるからね」
妻:「あなた働かなくても大丈夫なの?」
夫:「もういいんじゃないの、他人と比較することは。会社組織や人間関係で比較する、される人生はもうやめにしよう」
妻:「それもそうね。それぞれの生き方・過ごし方があるもんね。それに自分たちの人生なんだからね」
妻:「あなた、退職してからも株や投資やってるの?」
夫:「多少のこづかい稼ぎになるし面白いから」
妻:「もういいんじゃないのお金稼ぎは。それに損したらどうするの」
夫:「そりゃリスクはあるよ。損しないように毎日時間をかけてチェックしているから大丈夫だよ」
妻:「そんなことをしている時間があるんだったら、もっと他にやることやりたいことに時間を費やしたら」
夫:「それもそうだな、たかがこづかい稼ぎ。そんなお金のためだけの人生じゃつまらないね。それよりも限られた時間を有効に使った方がいいよね」
会社・同僚・友人たちとの会話
部下A:「Bさん、退職おめでとうございます。これからどうなされますか?」
60歳B:「継続雇用で勤めることにしたよ。給料は下がるけど精神的に楽だし安心だからね」
部下A:「そうですか~。管理職から平担当になりますけど、いままでがむしゃらに働いてきたわけですから、もういいんですよね」
60歳B:「これからは、働きながらこの先のことをじっくり考えるよ」
同僚C:「Dさん、後の仕事は私が引き継ぎますから残業しなくても大丈夫ですよ」
Dさん:「そうは言ってもこの仕事は俺しかできないからな」
同僚C:「そんなことはないですよ。部下のEができるし、Eにも経験させなくっちゃ」
Dさん:「そうかな~、心配だな~」
同僚C:「もういいんじゃないですか、部下に道を譲っても」
Dさん:「それもそうかな」
同僚C:「そうですよ、部下を育てる意味でも大切なことだと思いますよ。Dさんの経験豊富な適切なアドバイスと困った時に相談に乗ってあげればいいんじゃないですか」
友人F:「ヨッ!久しぶりだな。お互い定年退職してからもう5年になるね。今どうしてる?」
友人G:「継続雇用で5年働いて今年完全退職さ。知り合いの紹介でまた働こうと考えているんだ」
友人F:「そうか~まだ働き続けるんだ。働かないとやっていけないのか?」
友人G:「そんなことはないよ。ただ、やることもないし・・・。家にいてもな~・・・」
友人F:「お前んとこ、たしかお父さん寝たきりだと言ってたよな」
友人G:「ああ~、家内が世話をしてるよ」
友人F:「それだったらもう仕事辞めてお父さんの介護手伝ったら。それに、たしか奥さんのお母さんも一人暮らしだったと言ってたよな。そっちも方も大変なんじゃないの」
友人G:「そうなんだよ・・・」
友人F:「お前、もういいんじゃないの、これからは親の世話や介護を手伝い、それに奥さんを楽にさせてあげたら」
友人G:「そうなんだよな~」
友人F:「お前、本音は仕事と言って逃げてんじゃないの?奥さんに押し付けて。俺はもう両親はいないよ、今まで何もしてあげられなかったけど、そのことが今も悔いに残ってるよ」
友人H:「このOB会ももう3年になるな~。みんな元気でなによりだな」
友人I:「ようやく厚生年金がもらえるようになったけど少ないよな。満額になるまで後2年だけどこの先厳しいよな」
友人J:「でもしょうがないよ、年金自体の原資が少なくなってきてるし、これから高齢化社会になってくるんだからね」
友人I:「年金だけでなく、医療や介護にかかる財源が膨らんでくるし、保険収入だけでは国としてやっていけなくなるんだからね」
友人J:「先日、年金削減の法案が国会で通過したね。財源がないんだから俺たち皆が我慢すればいいのかな、しょうがないよね」
友人H:「はたしてそうなんだろうか?我慢すればいい、しょうがないだけで片付けていいんだろうかね~」
友人I:「だって財源がないんだからどうしようもないんだろう。どっかを削らなければ」
友人H:「財源がないんじゃなくて、税収を取るべきところから取っていないことや、不必要なところに大事な税金が使われていることじゃないかな。つまり、税収入のあり方と使い方に問題があると思うんだ」
友人J:「エッ!それどういうこと?」
友人H:「例えば、新聞テレビでも報道されたけど、法人税減税によって企業の内部留保が370兆円にもなっているよね。その他、企業や資産家のタクスヘイブンなどの税逃れ問題。それに前回の消費税増税分が社会保障にほとんど使われていないこと、又、2011年の福島原発の処理と既存の廃炉処理費、それと米軍基地への年間数千億の援助など・・・、これ全て国民の税金なんだよね」
友人I:「言われてみればたしかにそうけど・・・」
友人J:「ということはHお前、今の政府のやり方に反対ということ?」
友人H:「賛成とか反対とかという問題じゃなくて、税収入のあり方と配分に問題があるんじゃないと思うんだ」
友人J:「H、お前の言っていることは現政権に対して批判的に聞こえるけどね~」
友人I:「まあまあ、お二人共そんなに熱くならないで。俺たち同じ会社で働いている時はこんな政治の話はしなかったよね。会社内で政治の話をすると、どうしても人間関係がギクシャクしちゃうし、それに俺たちの会社の場合、周りも上からも反対や批判的な発言を避ける雰囲気があったからね。多分どこの会社も同じだったと思うけど」
友人H:「たしかにそうだよな。俺もこうしてハッキリ言ったのは初めてだよ。今までそうは思っていても、ハッキリ口に出して話すのはこの場が初めてだよ。もういいんじゃないかな、思っていることを素直に言える歳になったんだから」
友人J:「そうだよな。俺も決して今の政治に対して全て支持しているわけじゃないから。ただ、反対だとか批判的な発言ということに対して抵抗があったかもしれない」
友人I:「お互い定年退職して仕事から離れても生きていくことは共通しているよね。これから生きていく上では、年金や医療、介護などどうしても政治と関わりを持っていくわけだから。周囲の顔色や雰囲気、固定概念にとらわれず自分の意志を大事にしてハッキリ言えるようにしていきたいよね」
友人H:「退職してからテレビのニュース番組や政治経済に関連する報道を見聞きする機会が増えたけど、どうしても一方的な報道になるから、それが正しいとストレートに受け入れてしまうことがあるよね。でも、ちょっと見方を変えれば全く別の考え方になったりするよ。新聞やテレビも見方しだいだよね」
町内会での会話
町内会長K:「Lさん、班会費の集金していただきありがとう。あれっ?今日は奥さんじゃないの?」
町内班長L:「今日はちょっと女房が風邪こじらせちゃって、私が持ってきたんですよ」
町内会長K:「そういえば、Lさんは2年前大手商社を退職されたんですよね」
町内班長L:「そうですよ。退職後は関連会社の役員で席を置いていたけど待遇や条件が悪くて昨年辞めました」
町内会長K:「そうだったんですか~。商社時代は部長まで昇進されたようでしたね」
町内班長L:「あの頃は部下300人を従え年間数千億円の取引をしていましたよ。その他にもプロジェクトの責任者として海外を飛び回っていたんだ。家にも帰らなかった日が続きましたね。それと、こんな仕事も・・・。あの仕事も俺がやったし・・・」
町内会長K:「そうでしたか、で、今は退職されて何かされてるんですか?趣味とか・・・」
町内班長L:「何もしていないで家でブラブラしているだけですよ。女房は女子会とか習い事やってて、家にいても顔を合わすことがほとんどないですね~。でも三度の食事は作ってくれているから・・・。じゃまた」
出納担当M:「会長Kさん、そばで聞いていたけど、Lさんの長~い自慢話聞かされてご苦労様でした」
町内会長K:「いや~まいったよ。かれこれ1時間位の自慢話だったかな~」
出納担当M:「退職された人の中で、Lさんのような方って意外と多いんですよね」
町内会長K:「退職した私やMさんもそうした時期はあったと思うけど、Lさんもいろいろ悩んで迷っているんだろうね。でも、もういいんじゃないかな、過去に生きること、過去を引きずることは。」
出納担当M:「そうですよね。過去を振り返っても何も生まれてこないんだから」
町内会長K:「リタイアしたらゼロからのスタートだからね。これからをどう生きるか、前向きに考えたいよね。過去の実績や名声は、それはそれで本人の宝物だけど、心の奥底に閉まっておけばいいんじゃないかな。これからの生き方に邪魔になることもあるからね」
私たちの日常生活の中ではいろいろな場面に遭遇します。
「もういいんじゃない」というひと言は、60代だからこそ有効に使いたい言葉ではないでしょうか。
けっしてネガティブ、後退的な意味ではなく、自分を変えるひとつの節目として使いたい言葉ですね。
とても読みやすく、胸に落ちることが多い、会話例でした。
確かにこの60歳、退職を機に今まで当たり前だと思っていたことなどをリセットできればいいの
ですが。そうすることも難しくそのまま生きている人が多いように思います。
その人たちにも読んでほしいなと感じました。
槌が崎さん
お久しぶりですね。
退職後、私もそうでしたが、”今までからこれからは~”という気持ちの切り替えは、なかなかうまくいきませんでした。
ただ夢中になるものがあったから切り替えがうまくいったのかもしれません。
昨日、新宿で会社時代のOB会がありました。
出席は15名で現役組み、継続雇用、転職、求職中、完全リタイアなどそれぞれでした。
一人づつ近況報告を述べ、同じ職場で飯を食った時代の良き思い出話が続きました。
そして、この年代の話題は、これからの過ごし方、年金、親の介護、自分の健康状況などに絞られてきますが、今回のOB会でも全く同じでした。
やはり60代というのは、自分自身のこれからのことを考える世代なんだな~、と改めて感じました。
又、槌ケ崎さんがおっしょるように、うまくリセットできればいいのですが、まだまだ難しい面があるようです。
これもまた60歳の現実なんでしょうか。
これからもぜひコメントお寄せください。
先週「終わった人」(内館牧子)を読みま
した。
ここに書いてあることがそのまま小説に
なっているようでした。
最初はラジオ深夜便で作家本人がこの小
説について話しているのを聞き、近くの
図書館で借りようとしました。
待ちのリストが何十人、隣の市の図書館
でも何十人が待っていたので、amazonで
購入しました。
退職して「終わった人」の世界に入る準
備のガイドとして参考になりました。
一読してみてください。
northsnow20さん
書籍のお知らせありがとうございます。
そういった本があるとは知りませんでした。
「終わった人」ぜひ読んでみます。
最寄りの図書館で借りようと思いますが、同じように予約がはいっているかもしれませんね。
先日、図書館である本を予約しましたが、16人待ちということで驚きました。
係の方が言うには、約半年待ちでしょうということでした。
もし、大勢の予約が入っているようでしたら購入して読んでみます。
ご連絡ありがとうございます。