一期一会~人との出会いも登山の楽しみ
登山に行くと全国老若男女問わずいろいろな方との出会いがあります。
単独行の場合、常に一人ですから寂しいとか、話し相手がいないなんて思うかもしれませんが、そんなことはないんです。 一人で山の景色を楽しみながら登ったり、休憩したい時自由に休むことができたり、写真を撮りたい風景や花があった時にじっくり時間が取れたり、単独行の特権といってもいいでしょう。 そして、誰かと話したい時には、山小屋やすれ違った登山者に声をかければ、話が止まらないくらい会話ができます。 そういう意味では、一人でいたい時には常に一人でいられる。話したい時にはこちらから声をかければ打てば響くように話ができる、という点での気軽さがあります。
22Kgのザックを背負って全山縦走!?
今回の10日間山旅の私のザック重量は14Kgでした。
全て山小屋・避難小屋泊まりですから2日分位の食料だけで済みます。
又、光岳~北岳まで縦走をされている登山者は、知る限り多分私だけではなかったかと思います。会ってお話しする登山者は、ほとんどが2~4泊といったところでした。
初日、登山口の畑薙ダムから茶臼岳まで一気に標高差1500mを登りました。
今回の登山では一番きつかったように思います。
しょっぱなからコースタイムを2時間近くオーバーする位でしたから・・・。
そんな厳しい登りで出会ったのが、千葉県から来ていた64歳男性のAさんでした。
私が休んでいる時、声をかけられしばらく山の話をしました。
お互い単独、同じようなルートと縦走登山ということで気が合い、その後光岳までの2日間前後しながら行動を共にしました。
Aさんのテント 光岳小屋のテラスでAさんとの語らい
私とAさんとでは、同じ縦走といっても決定的に異なる点が2つありました。
一つは、Aさんの場合、全てテント泊だったことです。食料(米まで持参)やテント用品まで含めなんと22kgの装備です。私よりも一回り大きなザックでした。
もう一つは、光岳~北岳までの縦走は同じですが、更にその先の仙丈ケ岳、甲斐駒ケ岳、鳳凰三山まで、なんと南アルプス主脈全山縦走(南アルプスの百名山10座全て)ということでした。スケジュールでは17日間の行程になるということです。 とんでもない人とお会いでき、お互い尽きることのない山談義に花が咲きました。
世の中こうした方がいるんですね、驚きでした!
登山中の塩分補給?
今までの登山の中で、今回これだけ水分を取ったのははじめてのことでした。
登山開始日がちょうど東海地方の梅雨明け(7/18日)と同じだったことから、初日から照りつける強い日差しに苦労しました。このため、3日間ほど毎日1.5L~2Lほどの水を飲みました。 3日目の山小屋(聖平小屋)では、胃がむかつき食欲がなくなりました。
以前にもこうした症状は多少あった経験はありますが、今回は夕食を残すほどでした。
聖平小屋で私の寝床の隣にいらっしゃったのが東京から来た60代の単独女性Bさんでした。
その方といろいろ山の話をしている時、登山中の体調管理の話題になりました。
Bさんは、いつも山小屋での食事をとらず持参の食料で食事していると言っていました。
山に来ると食欲がなくなり、山小屋での食事は多いのでいつも残してしまうことから、自分にあった食料を携帯しているとのことでした。
そして、Bさんからは常に塩分補給をする方がいいということを教えられました。
大量の汗をかくと同時に身体から塩分も一緒に出てしまうため、適時に塩分補給をして体調を整えるということでした。 塩分が不足すると胃のむかつき、食欲低下につながるということだそうです。
Bさんは翌日下山する予定で、持参した「塩の錠剤」が余ったから差し上げるということでいただきました。
山旅4日目以降、Bさんからいただいた塩の錠剤を飲み、更に水からポカリスエットに切り替えた水分補給を心がけたことにより、体調が整い快適な旅を続けることができました。 ちなみに、塩の錠剤は水と一緒に飲めばいいということでしたが、飴のように舐めているととても美味しく感じられました。これは身体が塩分を要求していることではないかと思いました。
Bさん、とても貴重なアドバイスと塩の錠剤ありがとうございました!
ちょっと変わった山小屋のルール!?
昨年の北アルプスも含め、今まで数多くの山小屋に宿泊してきました。
それぞれ山小屋ごとに特徴があります。
夕食メニューが名物の○○料理、温泉がある(滅多にありませんが)、ご主人が話好き 小屋周辺にお花畑が広がっている、美味しい湧き水で挽きたてコーヒーが飲める、等
基本的に1泊2食付きで宿泊を頼めば必ずその条件で泊まることができます。
※山小屋着が夜になってしまった場合、頼んでも食事が出ないことがあります。
山旅2日目、光岳小屋に泊まりました。
この山小屋については、行く前の計画時点から宿泊ルールに関しての情報を耳にしていました。
(ヤマレコなどの山関連サイトで実際に泊まった方の体験情報)
あまりいい噂ではなかったように思います。
当日13時30分、予定より30分遅れで光岳小屋に着きました。
受け付けを済ませてからザックを置いて手ぶらで光岳に向かう予定です。
小屋に入って宿泊をお願いしたところ、ご主人が笑顔で
「たいへんだったですね、お疲れさまです。受付名簿を書く前にお茶をどうぞ」と!
今まで山小屋で受付前にいきなり熱いお茶を出されたのははじめてでした。
外は夏の日差しが照り付ける暑い天気でしたが、この熱いお茶がなんとも気持ちを和ませてくれました。素晴らしいおもてなしだと感動しました。
なんか、噂とは違うな~。とてもいい雰囲気なんだな~、という感想です。
光岳直下に立つ光岳小屋。中腹に立つ小屋のため景色は抜群でした。
小屋のラウンジから見る早朝の富士山。
夕食の時間になりました。
この日の宿泊登山者は、私の他に単独の男性1名、男性の4人パーティが1組みでした。
この4人パーティの方々とは、前日の茶臼小屋で同宿したので顔見知りでした。
食堂に行くと私と単独男性の2人分の食事の用意がされています。
あれ?4人パーティの方はどうしたんだろうかな?、素泊まりで自炊なのかな、と思いつつ2人で食事をしました。 食事が終わってからしばらくして食堂に行ってみたら、4人の方が夕食の準備をしていました。皆さんレトルトのご飯とみそ汁を作っていました。
「あれ、皆さん自炊なんですか?」と聞いたところ、声をひそめて「いや~、違うんですよ」と、事のあらましを聞かせてくれました。
要約すると食事に関する3つのルールがあるようでした。
■午後3時までに小屋に入らないと夕食は出ない。
■50歳未満には食事を出さない。
■50歳以上でも4人パーティ以上は食事は出さない。
ということで、この4人パーティの方々(皆さん60代)は、3番目のルールに引っかかったようでした。 「へー、そんなルールがあるんだ~」と思いました。これがサイトであまりいい噂になっていない事情なんだなということが分かりました。
このようなルールは、他の山小屋にはありません。この光岳小屋だけではないでしょうか。なぜ、このようなルールにしているかは分かりませんが、
言い換えれば、安全登山のために山小屋にはできるだけ早く着きなさい。山小屋は十分な食料確保が出来ません。できるだけ食料持参で登山をしてください。というような意味合いが含まれているように思えます。 営利だけを中心に考える山小屋経営がある中、こうした登山の心構えや夕方以降山小屋に駆け込んでくる登山者への戒めとしてこうしたルールを設置しているのではないかと思いました。 ちなみにこの山小屋では、他の小屋と同様にレトルト食品やカップ麺などが売店で販売されています。
山小屋のご主人が予報する天気が的中!!
山小屋での登山者の一番の関心事は、なんといっても翌日以降の天気です。
各山小屋では、テレビをつけて天気情報を常時見られるようにしています。
今回、光岳小屋で見た天気情報では、翌日から一週間毎日曇りのち雨の予報でした。
この時、ご主人が「大丈夫ですよ。23日まで晴れが続きますよ。24日は午前中が晴れれ次第に曇りになります。この頃になると低気圧が接近してくるので・・・」と。
私が泊まった日が19日でしたから、翌日からほぼ5日間は晴れが続くということです。 ほんとかな?晴れてくれればいいのに、と内心嬉しく思いました。
これだけはっきり天気を予報し断言した山小屋のご主人は、今まで一度もありません。
半信半疑といった気持ちで翌日から山旅を続けました。
すれ違う登山者との会話、この後山小屋で同宿した登山者同士との天気の話題の時には。光岳小屋のご主人の話の受け売りで「大丈夫!24日までは晴れますよ」と言ってちょっと自慢しながらお話ししました。 なんとこの天気情報が完全的中しました! その証拠に私の今までのブログを見ていただければ分かると思います。
光岳小屋のご主人と奥様(夫婦で小屋経営)は、巷でいわれているような噂の方ではありません。親身になって登山者のことを考えアドバイスしてくれる優しいご夫妻でした。
山小屋泊の時には、ちょっと異質なルールがありますが、それを守ればとても気持ちの良い素晴らしい山小屋です。 又、山小屋本体もとてもきれいで清潔感のある建物でした。
トイレは2ケ所外にあるので小屋内での異臭は全くありませんでした。
これからこちら方面に行く方がいれば、ぜひお勧めする山小屋です。
この旅で百名山を目指す登山者が、ちょっと無理をして茶臼小屋から1日でピストン(往復12時間前後)する方が多いように思いました。
※茶臼小屋で泊まった時、他の登山者の実際の行動を見てわかったことです。
易老渡(いろうど)登山口が、今年通行不能となったためという理由もありましたが。
茶臼小屋から光岳小屋までの稜線は、たいへん素晴らしい景色が楽しめます。
途中に仁田岳やイザルケ岳もあり、そこからの眺望は絶景でした。
又、光石と南部方面の山並みも景色もしかりです。 そういう意味では、これらの景色をゆっくり楽しみ光岳小屋に宿泊する価値は十分にあると思います。
もう一度、この稜線の写真をお届けします。ブログ掲載以外の写真もあります。
茶臼岳~光岳間の稜線から望む聖岳(中央)と兎岳(左)
稜線から望む光岳(中央)
仁田岳から望む光岳 稜線上のハイ松の中の登山道
立ち枯れの中の登山道 光岳小屋直下の水場とお花畑
イザイケ岳(中央)と湿原 イザルケ岳頂上2540m
光石
先を急ぐのではなく、もう一泊する余裕が、山の魅力を数倍増やしてくれるのではないかと、今回の山旅で改めて感じるものがありました。
このことは、光岳に限らず南アルプスを縦走する中で確信に近いものがありました。
時間のある退職したオヤジだからこそ出来るんだろう、と思うかもしれませんね。
確かにそうかもしれません。私も働いていた頃は、もう一泊する余裕がありませんでしたから。 だからこそ、今こうした時間を大切にしたいと思います。
登山は単に登って楽しむだけはなく、こうした人との出会いもまた魅力のひとつです。
「南アルプス大縦走 編集後記」おわり
余談ですが、この後また一週間ほど山旅に出かけてきます。
夏のカンカン照り大好きな私にとっては、この時期を絶対に見過ごすことはできません。以前、すでに登頂した山ですが、ルートを変えてチャレンジしようと思ってます。
次回ブログアップは、一週間後になりますのでご了解お願いします。
返信コメントなど、お気遣いなく~
また1週間の山、すごいですね。
それにしても、山小屋の食事を残して縦走できたこと、驚きました。
見た感じ、私と夫は、これではまったく足りない量だと思ったからです。
若いとき、テント泊だったせいもあるのですが、疲れるほどにお酒がすすみ、
大量の肴と食事をしていましたね…
ちなみに、餅とサラミは必需品でした。
個人差もあると思いますが、食べないとバテルという恐怖もあったので、水と食糧は大量に持参していました。
いろいろと面白い情報でした。
家犬さん
山から帰ってきました。
実は、海抜0mからの剱岳登頂でした。
まったくバカなことをするオヤジですね。
一応、全体概要のダイジェスト版をアップしましたのでご覧ください。
いつもコメントありがとうございます。