これからの介護制度に思うこと

要支援者の保険給付外し? 特養入所は「要介護3」以上限定?

6月18日の参院本会議で「医療・介護総合法案」が残念ながら可決成立しました。    現在、日本の高齢化率は24.1%(2012年65歳以上の人口)。そして、団塊世代が65歳以上になる来年2015年には3395万人になると言われています。更に、2042年には3878万人になりピークを迎えます。資料:政府内閣府「高齢化社会白書」より

シニア世代にとって定年退職後の過ごし方をいろいろと考えている思います。その中で、「親の介護」に直面されている方は多いのではないでしょうか。そして、現在から近い将来にわたる高齢化社会を考えた時、今度は自分自身の問題として対応しなければならない状況になってきます。                                                          自分たちのことはさておき、とりあえず目の前にある親の介護をどうするかということについて、今の社会保障制度に関心をもたざるをえません。                           以前、このブログでも書きましたが、今年4月消費税増税があり、更に来年10月にも10%になる方向です。この財源は、当然ながら国民の生活を支えるものとして使われるべきであり、そしてこれからの大きな課題になる社会保障に当てられるものと信じています。しかし、今回の法案では、そのことに逆行するものとして大きな疑問を持ちます。    実際に実母、義父母の3人の介護に携わっている者として納得できないというおもいがあります。

法案の中で特に                                                                                                     ■「要支援者」の訪問・通所介護の保険給付から外し、市町村の地域支援事業に置換え ■ 特別養護老人ホーム入所を要介護3以上に限定 

要支援者へのサービスは、市町村の事業に置き換えサービスの量質とも低下させることにつながります。又、各市町村によってサービス内容が異なるということになります。更に、この移行が可能か?という市町村へのアンケートに対し「可能」と答えたのが、わずか17.5%だそうです。実際に母がお世話になっている市の福祉協議会に問い合わせしましたが、具体的な対応はまだ決まっていませんとのでした。ただ、その市町村によってサービスが異なってくるだろうとおっしゃっていました。

特養(特別養護老人ホーム)については、その入所に現在52万人が待機しているそうです。そのうち17万8千人が「要介護1、2」です。つまり、今後この17万8千人は待機者になることもできないということです。                                                      現実には、特養に入るには最低3以上でないと無理のようですが、待機者としては見なされず、あくまでも3にならないと入所条件が満たされません。では、それに代わる施設増などの計画があるかというといっさい示されていないようです。となると、特養に入るためには、まずは最低介護2の状態から3に移行する変更申請が必要になってきます。変更するにはケアマネジャーの判断によるところが大きいです。もちろん最終的には、専門の担当による審査と医師の判断により決定されていくものですが、日常の生活や身体状況を把握しているケアマネジャーの意見は大きいと思います。そういう意味では、介護レベルの進行状況についてケアマネジャーと密にコミュニケーションを図り、親族としての意見、要望をはっきり伝えることが重要になってきます。                 変更に当たり、一般的にはケアマネジャーや医師の意見・判断に従うことが多いと思いますが、実際の生活状況を見て対応しているのは親族です。お任せではなく伝えるべきことはしっかり進言することが、この間の変更手続きにおいてよくわかりました。

 

介護3 介護4

 

認知症問題

介護レベルは、要介護度の状態によって認定されます。年齢が上がれば介護レベルが上がるといったものでなく、個人によりその身体状況は異なります。特に体力や歩行状況などは目に見えることで、ある程度判断できますが、認知症の場合、進行度合いはわかりづらいです。                                                                      認知症検査は、一般的に脳神経外科で受けられます。又、介護認定の判断をする時には医師によって検査が行われます。方法としては、MRI検査(脳の断面画像撮影)やMMSE・長谷川式スケールがもちいれられます。このMMSEと長谷川式は、簡易知能評価スケールとして、どちらも主に記憶を中心とした認知機能障害の有無を大まかに知ることを目的にした検査です。2ケ月前、88歳の実母が介護認定のための検査でこの長谷川式テストを受け30点満点中12点でした。この結果は、認知症がかなり進行している状態と判断され即介護1に認定されました。又、先日94歳になる義父が、最寄の脳神経外科で同様の長谷川式テストを受けました。結果は27点で医師も驚いていました。                毎日自転車を引いて買い物や食事のしたくができる母は介護1の認定。足腰が弱り外を出歩くことはもちろん家の中でも歩行が難しい義父は支援2です。それだけ認知症の進行は、要介護レベルの判断をする上で大きな要素になっています。二人の例をみてもそのことがはっきりしています。

5月にNHKスペシャルで認知症問題が取り上げられました。その中で、平成24年度の認知症の行方不明者が9607人、25年度は1万人を超える数にのぼると放映されました。この実態は、これからの日本社会の大きな問題になっていくと思います。ほぼ毎日のように町内のスピーカーからは、徘徊する高齢者の行方を探す放送が流れています。普段の生活の中で親族による見守りは当然のことですが、いつ徘徊するかわからない状態の中でケアに関わる人たちや社会的なしくみとしての見守りを広げていくことも重要な対策のひとつだと思います。

公的制度と自己防衛

退職後の生活を送っていく上で、大きく関わってくる年金制度と医療・介護保険制度には共通した部分があります。それは当初の制度から後退してきているということです。  年金支給年齢は今や65歳になり、更に支給年齢が上がると共に減額の方向にすすんでいます。(政府の2014年「骨太の方針」6/24日) 結果、60歳からも継続雇用で働き続け、65歳で退職しても何らかの方法で働き続けなければ生活(老後の蓄え)できない状況が生じてきます。そして65歳定年制度も現実化してきています。65歳で定年退職しても年金支給年齢が上がり続けるために、70歳までの継続雇用制度も生まれてくることも考えられます。70歳といえば男性の健康寿命年齢です。ようやく働かなくてもいい歳になった時点で人の手を借りなければ生活できない年齢に達していたと思うと何か虚しい気持ちです。

完全リタイア後の生活に関わる公的制度が後退する中、親の介護と自分たちの将来を考えた時、どのように対応していくかということは多くの中高年者の共通した課題ではないでしょうか。年金については、残念ですが支給年齢と金額が決まっているので対応のしようはありませんが、介護保険制度の活用では、利用のしかたによってまだまだ対策を打つことができます。個人に合った介護サービスをうまく利用したり、高額な資金を出さなくても入居できる施設はあります。                                         制度の改善を望みたいですが、今できる範囲の中でやれることがあれば対応していきたいと思います。

やはり消費税増税分は、「社会保障」のために有効に使われることを願いたいです