北海道ロングステイ 富良野編 (12)

登山・山歩き その3

 

お花畑が広がるトムラウシ

 

今から十年前、羽根田治著書の山岳遭難シリーズの「気象遭難」のドキュメント本を読みました。
その中で、2002年7月北海道トムラウシで起きた遭難事故の詳細が記されていました。
愛知県の4人パーティ(女性パーティ)が、旭岳からトムラウシに縦走する計画の中、途中ヒサゴ避難小屋で天候が悪化。
台風6号がスピードを速めて明日夜に北海道に上陸するという状況のようでした。
このパーティは、小屋で停滞するとその後の行程が遅れるということで、風雨が強まる中、予定通り山行きを決行。
その結果、パーティの一人(リーダー)が、低体温症で亡くなるという事故が起きました。

このドキュメント本を読んでからすぐに、皆さんも多分ご存知だと思いますが、2009年7月トムラウシで登山者8名が低体温症で亡くなる悲惨な大量遭難事故が起きました。

この二つの遭難事故は、共に7月の夏季縦走登山、天候悪化、ヒサゴ小屋出発後、低体温症で亡くなるという共通したものがありました。
最初に起きた遭難事故のドキュメント本を読んだ後でしたから、まさか全く同じような条件の中で事故がまた起きたのかと驚きました。

 

トムラウシといえば、2009年夏の大量遭難の記憶が新しい。あの事故で「トムラウシ=魔の山」のイメージを持った人は多いだろう。ただ、事故がなかったとしても「トムラウシ」の名はなんとなく怖い。むろん根拠などない。私個人の率直な感想である。
樋口一郎著「新釈日本百名山」より

 

樋口氏が言うように、過去にこうした悲惨な遭難事故が起きたイメージは、やはり大きく心に残るものがあります。
初めての山に登る時、この山はどんな山だろうか、登りやすさ、展望の良さ、お花畑などの高原植物の鑑賞ができるのか、といった思いあります。
しかし、今回登ったトムラウシの最初のイメージは、どうしても事故のことが頭から離れませんでした。

北海道に来て、日本百名山9座の内、4座目登頂が今回のトムラウシでした。
今回の登山は、遭難事故が起きた登山ルートとは全く異なる日帰り短縮コースだったこともあり、登山口から一歩踏み出した時から最初のイメージは頭から消えてなくなっていました。
それよりも熊さんが出ないように祈りながらの登山でした(笑)

 

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トムラウシ公園(8合目付近)に咲くチングルマ

 

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見渡す限り咲き誇るハクサンイチゲ

 

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頂上直下にひっそりと佇むコマクサ

 

往復10時間半のピークハント

 

トムラウシ登山コースは、縦走の場合、何日もかけてテント泊しながら頂上を目指すことになります。
又、ピークハントの場合は、トムラウシ温泉から登りますが、行程が長いため頂上直下の南沼テント場で一夜を過ごすことになります。
近年、このトムラウシ温泉から更に登った場所に短縮コース登山口ができました。
この場所まで車で行けば、日帰り登山ができるようになり、最近では最も登山者が利用するコースになっているようです。

短縮コースといっても、山と高原地図の参考タイムは11時間40分。
休憩を入れれば12時間以上ということになります。
一方、朝日新聞出版の「日本百名山」地図のコースタイムは9時間でした。
同じコースで2時間40分の差があります。これほどの時間差がある山は今までありませんでした。
北海道の慣れない山で、しかもロングコースですから油断はできません。
一応、両者の間をとって、行程時間10時間、休憩含めて11時間の計画を立てました。
11時間というロング登山ですから、前日に登山口に着き車中泊、翌朝早目に出発するプランです。

 

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前日、トムラウシ温泉に向けて出発。
富良野から約120Km、山の奥へ奥へと進んで4時間近くかかりました。
明日は晴れかな~と期待しつつ車を走らせましたが、なんと登山当日の天気は?・・・(涙)

 

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温泉に向かう途中、山間部に学校がありました。
「富村牛小中学校」?、漢字で書くとトムラウシは、「富村牛」なんですね。

 

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温泉から更に8Kmの林道を登っていきます。
対向車が来れば万事休す。祈りながら運転しているとなんとブルドーザーが!! え~ウッソー!
林道を慣らすためのブルドーザーが道幅いっぱいに下ってきました。
ラッキーなことにちょっと広い道幅の所へ車を寄せて、なんとかすれ違いできました。やれやれ。

午後、登山口に着い時は、駐車場が約7割ほど埋まっていました。
この後、下山者の車の空きスペースができましたが、明日登る登山者の車がひっきりなしに登ってきました、
日本百名山の人気と短縮コースということもあって、多くの登山者が前日から来ていました。

 

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朝4時、出発しようとした時、なんとバスが登山口に入ってきました。
え~!、こんな狭い道幅の林道にバスまで登って来れるの?
それも団体登山ツアーのようです。ガイドも含めて20名のパーティでした。
ほぼ全員団塊世代の方々ばかりでした。皆さんお元気ですね。

 

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出発してすぐに雨が降り出しました。こんなはずではなかったのに~。
ここ数日の雨で登山道はドロドロのぬかるみ状態でした。約1時間のこの登山道に悪戦苦闘しました。

 

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雪渓が残っていました。アイゼンがいらない20分ほどの雪渓歩きが続きます。

 

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森林限界を超えると少し青空が見えてきました。しかし、それもほんのわずかの時間でした。
この後はずっとガスが立ち込める中の登山でした。残念です。

 

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岩稜帯を超えると、眼下にトウラウシ公園が見えて来ました。

 

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険しい山岳地帯の中、ここだけがオアシスといった感じです。
ここから頂上直下まで広大なお花畑が広がっていました。

 

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北・南アルプスにはない広さのお花畑は、これぞ北海道という登山を満喫させてくれます。

 

 

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「大雪の奥座敷」といわれる標高2141mのトムラウシ頂上!(日本百名山)
北海道では大雪山旭岳に次ぐ2番目の高さです。
残念ながら視界はまったくありませんでした。
晴れていれば大雪山山系、十勝連峰まで見渡せる展望だったのに(涙)

ちょうど同時刻に登ってきた単独男性二人と写真を撮り合いました。
一人は岩手、もう一人は新潟から来た方でした。(共に65歳前後)
夏季登山シーズンになれば全国から百名山詣での登山者がやってきますね。
同じ志を持つ同士ですから初対面でも話題は尽きません。

 

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下山途中、トムラウシ公園のお花畑の中で昼食タイムで~す。

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登山開始早朝4時、下山14時30分。10時間30分のトムラウシ登山でした。
今回は、残念ながら天候に恵まれず期待していた眺望はありませんでした。
しかし、トムラウシ公園でのお花畑に咲き乱れるチングルマ、ハクサンイチゲ、コマクサなどの高山植物を鑑賞できたことは、大きな収穫だったのではないかと思います。

あの「魔の山」と思わせるようなイメージはまったくありませんでした。
悪天候の中で無理をした登山が、あのような結果を生んだと思います。
無理をせず戻る勇気、留まる判断こそ登山の基本ではないかと思います。

「トムラウシ=広大なお花畑が咲き乱れる山」というイメージが残った登山でした。

 

「北海道ロングステイ 富良野編 (13)」へ つづく

2 thoughts on “北海道ロングステイ 富良野編 (12)

  1. 日進月歩の世の中と言えども、自然には逆らえないのでしょうがないです
    ね。
    でもそんな視界がきかないからこそ、可憐な高山植物が光るのでしょう。
    なんか人生みたいですね。

    ところで北海道の隠れグルメの紹介を忘れるところでした。
    それは「ようかんパン」です。
    クリームパンやアンパンにようかんがコーティングされたパンで、コンビニ
    かスーパーにあるはずです。
    https://sirabee.com/2014/10/16/5015/

    私は娘に頼まれて、お土産に買ってきました。

    1. 匿名さん

      コメントありがとうございます。
      おっしゃる通り自然には逆らえませんよね。
      今日は大丈夫だと思っても特に山の天気は変わりやすいですから。
      それと、こうした天気だからこそ高山植物が、「私を見てよ」と言っているようです(笑)

      「ようかんパン」?、知りませんでした。
      セイコーマートで売っているんですか。こうした甘い菓子パン大好きなんです。
      ぜひ試してみようと思います。
      ご紹介ありがとうございます。

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