「日本の財政を考える」セミナー (2)

消費税に頼らない道はないのか?

 

皆さん、前回の「日本の財政を考える」セミナーのブログの最後に掲載した資料「消費税の特徴」を読んでみましたでしょうか。
今回のブログでも同じ資料を掲載しますのでご覧になってください。

※セミナーで財務省主税局審議官から配付された資料です。

 

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今回のセミナーの結論的なことは、「消費税増税による財政の確保」でした。

審議官の矢野氏は、この資料について一項目づつ説明されました。
この資料(<消費税の特徴>)は、消費税の長所・短所が書かれていますが、見ての通り長所の部分が大きく取り上げられているのが特徴です。
これは消費税の「特徴」といっても消費税を肯定する文面であり、正当性をもった税であるかのような書き方として受け取れます。
短所としては、最後に黒丸の「負担感を感じやすい」とだけです。この「負担感」という言葉一つだけで片付けていいものなのでしょうか。
ここに増税を施行する、される側の大きな溝というものを見たような気がしました。
適切な言い方ではないかもしれませんが、税と取る側は取られる側(国民)の生活実態をしっかり把握してるのか?疑問を感じざるを得ませんでした。
低所得者層の拡大が急速に進行している現代の格差社会の実態を考慮しないで、安易な方法(増税)に頼るだけの施策ではたしていいのでしょうか。

そして更に、もう一枚の資料「EU加盟国における付加価値税率(標準税率)の引上げ回数」についても、EUの例をあげて複数回引き上げされている状況を説明されました。
※付加価値税:日本の消費税のようなもので、物やサービスの購買時に課せられる間接税のこと。

このような資料というものは、提出する側の意図があります。
他国が何度も引き上げを行っている事例をあげて、そのことが正当なやり方であるような錯覚を生むことにつながるものではないでしょうか。
「他の国がやっているんだから、自国においてもおかしなことではない」というように・・・。

このEUの付加価値税の資料について、矢野氏からは税率をもっと大きく上げた方がいいというコメントがありました。
消費税の増税は、本来の財務省の考えかどうかは定かではありません。あくまでも矢野氏の説明からでは、増税推進と受け止められる内容のものでした。

国家財政に携わり、そのことを仕事にしている方は、いかに歳入(税収入)を増やすかということを考えていると思います。
そのやり方(税収確保の施策)は、さまざまな方法があると思います。
最終的には、国家予算(歳入、歳出)というかたちで国会が決定します。
こうした政策決定は国会ですが、そのベースとなるものを作り上げるのは財務省をはじめ各省庁の方々だと思います。
どのような立場で立案し予算化していくか? もちろん国民の利益と安定した生活を考えて作成されていると思いますが・・・。

 

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セミナーの最後に30分間の質問時間が設けられていました。
最初、誰も手を挙げる方がいませんでしたので、私は「消費税に頼らない方法について」質問しました

「特に日本の場合、なぜ一般市民(国民)は消費税に対して拒否反応があるのか?」「それは消費税増税によるリターンがない、感じられないからではないでしょうか」ということからお話ししました。

■消費税増税分(5%→8%)の税収入の1割しか社会保障に使われていない事実。
■結果として法人税減税分が消費税増税分で穴埋めされている現状。
■法人税減税は経済活性化のために行われたはずなのに、現状は内部留保(約300兆円超)として貯め込まれている。この結果、市場に金が回らず(賃金は上がらない)個人消費の低迷が続いている現状。
■北欧の場合、税負担は大きいが、その分しっかりリターンがあること。(社会保障の充実など)

このことから、消費税増税をする前にもっとやることがないのでしょうか?ということで
■法人税の増税
■富裕層に対する増税
■大企業の優遇税制の見直し、廃止
■タスクヘイブンなどの税逃れに対応した処置(法制化)
をやるべきではいかと質問しました。

質問事項が多く時間も限られていたせいか全て応えを得ることができませんでしたが、
消費税増税分が社会保障費に2割程度しか使われていないことをコメントされました。
法人税については、諸外国と比較して日本の場合は低いと指摘していました。
諸外国と比較した場合、一般的に日本は高いと言われていますが(政府、財界、評論家、一部学者など)、やはり財務省主税局の方は現実(実質法人税は低い)を分かっているのですね。法人税は上げるべきだと言っていました。
又、富裕層への増税については、特に「貯蓄に対する課税」は必要だと述べていました。

その他、中小企業の経営者と思われる方から、消費税にからんで下請けに対する圧力(納品原価が抑えられるなど)が増し、中小零細企業は消費税分を全て自腹で負担する実態があること。
又、大手企業(輸出産業)には輸出免税(資料の国境税免税)があるが、下請けにはその恩恵がないこと、などの質問があり消費税そのものに対する不合理性を指摘していました。

 

今回のセミナーは、「日本の財政を考える」というテーマだけで当初からその内容は分かりませんでした。
財務省の現役官僚の方が講師ということでしたから、税収入の確保とそのあり方について多分お話があると想定していましたが、案の定主なポイントは消費税に関する内容のものでした。
主催者側(一般社団法人勁草塾)の主旨は、情報公開と国民的な議論を交えていこうというものでしたので、そういう意味では意義のあるセミナーだったのではないかと思います。

私は、消費税について真っ向から反対する、反論するという考えではありません。
消費税の導入(是非)や増税する前に現在の社会状況を考えてもっとやるべきことがあるのではないかということです
又、結果として増税されてもその使い道が全く異なるものに使われていることへの疑問です。
これらのことは、全て国会で決定されるもので、財務省の官僚の方が決めるものではありません。

3人目の質問者から「昨年消費税増税(8%→10%)が見送られましたが、2019年の再々はあるんでしょうか?」という質問がありました。
私たち国民にとっては関心があることだと思いますが、矢野氏からの返答はハッキリありませんでした。
当然のことだと思います。

 

矢野氏は最後に、こうした政策(消費税是非論や増税など)については「国民の皆さんが決めることですから」と結んでいました。
もっともなことだと思います。最終的には国会で決められるものですが、その議員や政党を選ぶのは全て私たち国民なんですから。
そういう意味では、消費税ひとつ取っても現政府が勝手に決めていいものではないと思います。

 

今回セミナーに出席された約30人の方々は、皆さんスーツ姿の経営者やサラリーマンの40~60代の人たちでした。
カジュアルなジーンズ姿で出席した退職オヤジは私一人だったと思います。
ちょっと場違いな所に来てしまったオヤジだと思われたかもしれませんね(笑)
でもいいんです。事前に予約希望すれば誰でもが自由に参加できるセミナーですから。

セミナーが終わった後、皆さん審議官の所に行って名刺交換されていました。
退職したオヤジは名刺なんか持っていません。仮に名刺を持っていても交換するようなことはしません。
忖度もなければ利害関係も全くない自由な人間なんですから(笑)

退職後、社会との関わりは遠のいてしまいましたが、一国民として言うべきことは言おうと思っています。
又、こうしたセミナーや勉強会に出ることで、いろいろな考え方の方との出会いもありますから、いい意味でさまざまなことを学ぶことができますね。

帰路の電車の中で今回のセミナーを振り返ってみました。
3人目の質問者が、「2019年に10%への増税はあるんでしょうか?」という質問のことが頭をよぎりました。
こういう質問自体はもちろん関心があってのことだと思いますが、どうしても私たちは第三者的な立場で物事を考えるクセのようなものがあります。私もそうです。
そういう時期になれば、テレビや新聞などのマスコミ報道の中で盛んに「消費税増税か!?」「見送りか?」などの番組や見出し、記事が飛び交います。
こうした報道に惑わされてどうしても受け身という立場に陥りやすいのではないでしょうか
「あるんでしょうか」ではなく「あってはいけないことだ」という自分の考えが必要ではないでしょうか。
逆に「あった方がいい」(増税賛成)ということも個人の考えであると思います。

消費税に限らず傍観者的、第三者的に見ているだけでは何も変わらないと思います。
前途ある若い質問者だからこそそういう思いが頭をよぎったのかもしれません。

5 thoughts on “「日本の財政を考える」セミナー (2)

  1.  なかなか鋭い質問をされていますね! 
    まあ、セミナーというか講演会で、討論会や審議会ではないので、講演者側からの結論ありきの
    感は否めませんが。そして立場上、個人的な意見を言うこともなかなか出来ないのでしょうか
    ら、質問に対しての回答が回答ではなく単なるコメントで、事実関係についての確認みたいな形
    でしかできないことも、やはり少し物足りないところではあります。

    質問の要点は「消費税増税の『前に』やることがあるのでは?」というこの「前に」ということ
    に関しては当然なにも答えてもらえず、単に「法人税は上げる方向」や「富裕税の有り方を検討
    する」みたいな見解しか出せないのですね。 
     ただ、その「富裕税」に関して、「貯蓄に対する課税」を挙げられたのは驚きです。「資産
    税」ということなのかもしれませんが、確かに収入に対してではなく「資産」に対しての課税と
    いう考え方には一理ありますが、消費税増税、社会保険税増税、医療費増加、そしてのコツコツ
    老後のために蓄えて老後の生活を自己責任で何とか安定化させようと貯めてきた老齢者の貯蓄へ
    の課税、となると、ほとんど高齢者狙い撃ちの感が否めません。
     それよりも消費税の最大の問題である「逆進性」(最初のリストの最後にありますが、これが
    他のすべての「長所」を打ち消して消費税の最大の問題か、と思います)に対して、今現在の税
    制の欠点をさらに助長する可能性があります。 今でも、特定の金持ちは、かなり所得税率が低
    いのはご承知のとおりです。「累進課税」ではあっても、それは一般所得に対してであって、株
    などの譲渡益に対しては10%、さらにその売買の手数料を控除できることから、かのバフェッ
    トも「私の税率が私の会社の従業員よりも低いのはおかしい」と言っているとおり、金持ちほ
    ど、それも相当な金持ちほど最終的な所得に対する課税率は10%台と低い、という、これまた
    逆進性が大きな問題だと感じています。 貯蓄に対する課税を考える前に、まずこっちではない
    か、と(笑)

     書き出すと切りがないのでやめますが(笑)、結論はすーさんも最後に書かれているように、
    私たちが出来ること(つまり国会議員を選ぶ選挙も含んで)をまずやることなんでしょうね。

  2.  
     あ、一つ事実誤認がありました。株式の譲渡益に対する課税は、以前は10%だったのですが、
    今は20%になっていますね(所得税15%+住民税5%)私は株をやっていないので知識も古く
    なっていました(笑)。 それでも逆進性は変わらないと思うので、こちらの譲渡益に関しても確
    定申告時に累進性を導入する、などの税制改正を考えるべきではないか、と個人的には思います。

  3. リンロン88さん

    詳細に渡るご感想ありがとうございます。
    リンロンさんがおっしゃるようにセミナーという形式ですから、質問への回答が「単なるコメントや事実関係の確認」というようになってしまいますね。
    討論会ではないので、こうした点はしょうがないと思っています。
    それと現役の官僚の方ですから、立場上言葉を選んで当たり障りのないような返答になっている点もありました。

    消費税の最大の問題は、リンロンさんが言うように「逆進性」にあります。
    審議官は、この点をサラッと流すように話していましたが、多分一番の問題点として分かっていたと思います。だからサラッなのかな?(笑)

    富裕層への課税は、本文の通り「貯蓄に対する課税」だけを何度も繰り返し言っていました。
    今考えれば、株式譲渡利益やその他の課税など(この部分が大きい)かなりの税収につながると思います。「貯蓄に対する課税」だけの意図が何かあるのでしょうか。

    こうしたセミナーや講演会などの場合、講師の方のお話が主流・主役になります。
    当然その話の流れが、講師の意図とする方向に向かっていきます。
    「ああ~、そうなんだ~」などの相槌が打たれたりします。
    聞き手側には、そうでない考えや意見を持っている人も少なからずいると思います。
    今回、そうした流れに水を差す質問になってしまった感がありました。
    最後に司会の方(主催者側)が、いろいろな意見や考えがあって、こうした大事なこと(消費税など)は、多くの議論を交じ合わせていった方が良いとコメントされていました。

  4. お金は投資や消費などして社会に流通させろということですね。
    個人の金融資産の6割を高齢者が持っているという政府や金融機関の調査だそうで
    すが、オレオレ詐欺も政府も金融・保険もみんな、この預貯金が狙いのようです。経
    済活動や産業から生まれる富にではなく、そこに国の財源を求めるとは貧相な発想
    ですね。アベノミクスはどうなったのでしょうか。

    アメリカ映画ようなずいぶん乱暴な白昼堂々の3.8億円強奪事件、自分で稼ぐより人
    の金を盗んだ方が早い。社会全体がそんな風潮でしょうか。

    70歳からを高齢者と呼ぼう、69歳までは働きなさいとなどと、高齢者も労働資源に
    置き換え、とにかく納税者に作り替えようという、高齢期の幸せと夢を打ち砕く国民
    福祉の理念も温情もない最近の政府や役人です。

    現在、税負担率は43%あまりだそうです。消費税を30%にし負担率を70%以上に
    したら、北欧のような高福祉社会を実現できるのでしょうか。この国の政治家や役人
    や有権者のあり方で可能でしょうか。

    役人や政治家がいろいろまわりに忖度するなどして、有効な使い方ができているの
    かどうかさっぱりわからないような国ですから、国民にもっとお金を預けてくださいと
    は恥ずかしくて言えないでしょうにと思うのですが。

    1. mittyさん

      コメントありがとうございます。
      mittyさんがおっしゃるように税負担を増やしたとしても高福祉社会を実現できるか?
      現在の政治や社会状況では全く期待することはできませんね。

      私は最近よく思うんですが、こうした国の財政を扱い、取り決めする立場にある方(現政府、高級官僚など)が、ごく限られた考え方だけで動かしているように思えます。
      より強い者(権力者)の意志の方向に流れていくような感じのことです。
      私もmittyさんが言われるように、「役人や政治家がいろいろまわりに忖度するなどして、有効な使い方ができているのかどうかさっぱりわからないような国」になってきたように思います。
      政府内の各議員も選挙に関連して「忖度と利害関係」もあるでしょうし、高級官僚においても政府が人事権を持っていることから、そこにも「忖度と利害関係」が生じてくるでしょう。
      そして、国や国民のために尽くそうと純粋に思っている国家公務員でも、上司に当たる高級官僚に対して「忖度と利害関係」が発生し、言えることも言えない状況を生むこともあるのではないかと思います。もちろん全てではありませんが。

      これらのことは一般の民間企業にもありますが、特に国民の税金を取り扱う国家運営に携わる方においては、こうしたことがないようにと願うばかりです。
      どういう立場に立って仕事をするか!ですね。

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