私たちの生活と経済政策

金融・投機マネー頼みの経済政策・・・

安倍首相が言う「果実」とは?

英国のEU離脱が世界に大きな衝撃を与えました。                 この影響により急激な円高と株価の大暴落が起きています。              こうした現象は、少なからず多くの方々が想定されたのではないでしょうか。      現政府の経済政策(アベノミクス)は、異次元金融緩和で円安をつくり、海外から投機マネーを呼び込んで株価をつり上げる方法をとってきました。             これが投機マネー頼みの円安・株高政策であるため、投機マネーの動きにきわめて弱い経済をつくりだしてきました。                           実態経済が伴わないのに株高の傾向が続く? 金融や株式の動向について、詳しくない方でもおかしいんじゃないの、と思うのは私だけではないと思います。

参議院選挙が公示されました。                          今回の選挙で「最も重視する政策」についてのアンケート調査がありました。     NHKの世論調査では、社会保障が29%、経済政策が25%と高い関心が集まっています。又、報道ステーションの調査でも経済政策が33%、年金・社会保障が30%と、こちらも同様に高い数値が出されていました。                    やはり私たちの生活に直結するこの2つの政策に対して関心が高まるのもうなずけます。

2016NHK世論調査       2016参議院選世論調査   NHK世論調査                  報道ステーション世論調査

21日に開かれた日本記者クラブの党首討論会、又、報道ステーション、ネットでも同じように党首討論会があり、多くの国民の方々が視聴されたと思います。             この討論会の感想については、各個人の考えや立場によってそれぞれだと思いますが、特に経済政策に関しての安倍首相の発言については違和感と危険性を感じました。

2016党首討論1  2016党首討論3

経済政策アベノミクスを語ると安倍首相は雄弁だ。税収増、雇用改善、賃金上昇すべて「アベノミクスの果実」と言う。                          野党からいくら批判を浴びても、首相は成果を誇り続けた。             「果実」の源は史上空前の金融緩和に支えられた円安、それに海外からの投資マネーを呼び込んだ株高だった。首相は参院選の勝機もそこに見いだし「アベノミクスのエンジンを最大限にふかす」と宣言した。                          だがその裏側にある財政と金融政策の危うさに一切触れようとしない・・・。     アベノミクスは、中央銀行が大量のお金を刷って財政を助ける禁断の財政ファイナンスに近い。一見、安上がりだが、将来世代の負担をあてこんで需要を先食いしているようなものだ。 6.26朝日新聞「問う2016参院選」

ちょっと異常じゃないかと思えるような強弁で成果を誇り、今まで以上にアベノミクスを推進しようとしている姿に恐怖さえ覚えるものでした。               2012年度に比べて16年度は「税収増21兆円」と声高らかに誇っていましたが、その中身の9兆円は消費税の増税として私たち国民が負担したものです。           又、その比較の年度もちょっと首をかしげます。2012年度は、リーマンショック(08年)と東日本大震災(11年)の2つの打撃を受け税収が減った時期ではないでしょか。    更に、リーマン前の07年度と比べた場合、税収は全体で4兆円しか増えていない上、消費税の増収9兆円を差し引けば5兆円ものマイナスです。(07年95兆円、16年99兆円) 

経済成長の動向を把握する上での指標はいくつかあります。             GDP(国内総生産)、経済成長率、物価指数、完全失業率、個人消費、賃金の伸びなどその他いくつかあります。                            GDP、経済成長率といってもその数値は、私たち庶民にとって直接ピンときません。 私がまだ働いていた頃(小売業)、計画企画段階で個人消費(家計消費支出)の数値傾向をよく指標として使いました。                          この数値は小売業に関わらず、多くの販売業にとっては購買動向を把握する上で参考にしたものではないでしょうか。それだけ商売と密接する指標だと思います。       日本経済の6割を占める個人消費は、私たちの暮らしそのものの状況を知る上で最も大事な指標のひとつといえると思います。                       その個人消費が、なんと2年連続マイナスになっています。今までこのようなことはありませんでした。それだけ深刻な経済状態にあるということだと思います。

もうひとつ大事な指標は実質賃金の伸び率だと思います。               物価を考慮した実質賃金は、5年連続マイナス(5%目減り)という状況のようです。 こちらも経済成長の動向を把握する上で指標となるものです。            個人消費の低迷、実質賃金の減少、この2つの動向については、今回の党首討論会で安倍首相から一言もありませんでした。

又、果実のひとつとして「就業者数が増えた」と言っていました。          確かに増加していますが、その中身をみると正社員は36万人減、非正規が167万人増という内容です。非正規雇用が増えたとは言っていませんでした。           その他にも「有効求人倍率1倍を47すべての都道府県に広げた」と言っていました。 その中身は正社員0.85、非正規1.34という内容です。                これらを含め不利になる数字は言わないようです。

今までの首相は、党首討論や議会においてそれなりに相手(野党党首や議員など)の意見に耳を傾け、尊重する部分もありましたが、それすらない首相ははじめてではないでしょうか。このことが違和感と危険性を感じたことです。

果実として増えたのは、大企業の内部留保と富裕層の年収(優遇税制などで)、その影響で増加したのは非正規雇用、そして大きく広がったのは格差と貧困ではないでしょうか。 安部首相は、さらにエンジンをふかし果実を大きくするようです。          今まで以上に内部留保を増やし、非正規雇用を拡大し、格差と貧困を広げていくことを目指すのでしょうか。

それでも朝日新聞による直近の世論調査では、アベノミクスの評価は「成功」「失敗」どちらも46%で拮抗する。リスクを感じていない国民が多いのは、財政に先行きを案じるあらゆる警報装置が正常に作動していないからではないか。 6.26朝日新聞

物価が上がった、保険料が上がった、医療費が負担だ、年金が下がった、給料が上がらない、特養に入れない、保育園に入れない、奨学金が返せない・・・。                 「またか、しょうがない」の一言で済ましてきたツケが回ってきているようです。   「政権批判はご法度」という濁った空気に水を差し、あらゆる警報装置を正常に作動させていく機会なのかもしれません。

 

2 thoughts on “私たちの生活と経済政策

  1.  英国のEU離脱の結果が出た後の英国内の混乱を報道で知る限り、英国でも政治家は嘘を巧妙に吐くのだと知りました。それに乗せられた衆愚政治の姿だと言うコメンテーターもいます。
     二日前、私の勤めるデイサービス事業所を利用する87歳の利用者と同居する娘さんが相談に見えました。
     娘さん(50代)の話では、要介護2の母親の介護をしてきたが、このところ急に夫(うつ病で失職中)と母の折り合いが悪化し夫が暴力をふるうのではないかと心配で母を自宅に置くことができない。ケアマネに施設を探してもらっているがどこも費用が高いので入れない。母の年金は月7万円、夫は障害年金(月6万6千円)、私は老健の施設内ヘルパーと訪問ヘルパーを休みなしで働き月10万円くらい、特養は要介護3以上しか入れないし、グループホームなどどこも空きがない、介護付き有料老人ホーム(地域密着型介護事業所)が一か所空いていたので面談に行くと、月11万円の費用と入居金2か月分が必要だと言われた。所帯分離して生保申請をし、入居できないかとケアマネからも相談してもらったが、生保は受けていないと断られた。
     こういう相談でしたので、私の宅老所で二日前から急きょお預かりしていましたが、引き続き年金内でお世話することにしました。
     その相談の場で、政府は今後要介護1,2も介護保険から外す方針で検討していることやどうして特養入所の条件が要介護3以上になったのかなどを話し、政権が今のままでは、ますます介護を受ける人たちが困るようになる方向であること、私たちのような理念でやっているところはいつまでやれるかわからないことなどを説明しました。 母親の生活の場所ができなんとか年金内で済むようなので、娘さんも表情が明るくなって安心したようでした。しかし、そのあと娘さんが「母を今から、選挙の期日前投票に連れていきます」と唐突に言ったのには面喰いました。母親は認知症状のため自立的な判断や意思表示ができないのです。後で政権にあるK党支持者だと知りました。今介護で困っていることと投票行動は結びついたでしょうか。
     英国のラッセルという人の、90%の大衆と民主主義について書かれた文章を思い出しました。英国の国民投票後の騒動とこの母子と重なって、大衆操作をする側される側、我々の愚かしさ、労働と余暇の過ごし方、そういうことを重ねて考えてしまいます。
     だれがほくそえんでいるのでしょうか。

    1. mittyさん

      介護や生活で困っている方の相談にのり、mittyさんの宅老所に入居できるような配慮と対応、素晴らしいことだと思います。            「下流老人」の著者藤田孝典さんが著書の中で、ケアマネの仕事について触れている箇所がありました。単に介護保険だけの範囲でその対応をするのではなく、生活保護制度という社会福祉までのことを考え行動することが求められているという指摘でした。
      こうしたことも含めこれからの課題だと思います。

      mittyさんのおっしゃる「今介護で困っていることと投票行動の結びつき」 鋭いご指摘だと思います。
      この表現は、今までの日本の状況を一言で表している言葉だと思います。 生活に困っていること、改善してほしいことなどが政治と直結していないように思えます。
      いいも悪いも生活は生活、選挙は選挙という別物のようになっているような気がします。
      「政治とカネ」問題がいい例ではないでしょうか。
      汚職、賄賂など枚挙にいとまがない政党に対し「ああ~またか」という一言で済ませてしまう国民にも大きな責任があると思います。
      そういう体質を持った政治と私たちの生活が結びついていないことが残念でなりません。
      「もういいでしょ」と言って決別したいものです。
         

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