まちの「豊かさ」に思うこと (1)

地方のまちの光景

退職以降、くるま旅やぶらり街歩きを通していろいろ気づくことがあります。       最近では北陸、東北、北関東などのくるま旅で各地方小都市や町、農村漁村などを訪れてきました。大都市への人口集中により地方の衰退が進む中、そこでは、観光客誘致のためにまちをあげての取り組みに目を瞠るものがありました。道路や建物を整備したり、新たに郷土資料館や物産館、博物館などが併設されている所もありました。           私たちのような観光客にとっては、その土地のことを知り、その土地ならではの特産品を食べたり、お土産として購入することができるという点では、旅の面白さがいっそう増えることにつながります。                                   これはあくまでも有名な観光地やそれに準ずる町、又、まちおこしが進んでいる所です。  こうした活性化されたまちは多分ごく一部だと思います。                                  近年マスコミなどでも報道されているように、地方から若者が減り、高齢化が進む市町村が増え、商店街も昔のような活気はなくシャッター通りになっている光景をよく見かけます。このことは、くるま旅にでかけた時や田舎(実家)に帰った時も実感します。

2015島田2  2015島田1   私が生まれ育った町の商店街。子どもの頃は活気に溢れ、行きかう人でいっぱいでした。      今ではシャッター通りで、取り壊されたお店は更地にされ駐車場になっています。      多分この光景は、地方の多くの町の商店街と同じではないでしょうか。

2015長浜2  2015長浜3   先日くるま旅で訪れた地方の小都市です。昔城下町だったことで、まちをあげて商店街の道路や建物を整備・統一してお客さんを迎える街並みになっていました。週末は観光客でごったがえすそうです。この日は平日で雨でしたが、かなりの観光客が訪れていました。

IMG_8498  IMG_8502    このお城は近年になって建てられた北陸のお城です。昔のお城が廃城となったため、場所を変えて新しく近代建築を駆使して作られたものです。(正式名は○○城博物館)                    建物から見れば一見すごいお城だな~、なんて思いましたが、実際には「作られた城」ということで魅力あるものではありませんでした。まちおこしの一環として作られたようですが、いわゆる「ハコモノ」の部類のようです。この日は祭日でしたが、観光客はほとんどいなく閑散としていました。

コミュニティデザイン

「まちづくり」は、一般的に経済的な成果を目的に捉えられています。          まちにお客さんや観光客が来ることで活性化し、そこに住む人たちが潤い生活していくことができます。又、地域周辺の人とのつながりがしやすい環境も必要なことと思います。                                                         こうしたまちづくりは、一般に道路や建物の整備、住民が利用する施設(公民館、公園、福祉、スポーツ関連)の充実など、まずは「かたち(建物)」から入っていきます。          そして、このプランが行政主導、または地域住民が参加して作ったものであっても、建物の使い勝手の良さや見た目のデザインというハード面が優先されるように思えます。                    斬新な建物や広場(整備された商店街や博物館など)を作った、公共施設(公民館、公園など)を新設したとしてもお客さんや観光客、地域住民にとって魅力あるものなのか、使われるものなのかというソフト面はどうなんでしょうか。

ところが時代は変わった。いい空間をつくるだけで人々が集うということがほとんどなくなった。むしろ重要なのは、弱体化した地縁型コミュニティの代わりにどんなコミュニティが屋外空間を使いこなすのか、ということである。まちを賑やかにするためには、斬新な広場のデザインが必要ではなく、斬新な広場のマネジメントが必要なのだ。      山崎亮著「コミュニティデザインの時代」(自分たちで「まち」をつくる)         ※地縁型コミュニティ:自治会、町内会、商店街組合、老人クラブ、婦人会、子供会など

「まちの活性化」という言葉も、活性化というのはつまり経済の活性化だという話になることが多い。金と物だけが豊かさの指標ではないといわれているにもかかわらず、「豊かなまち」ということになると経済的に豊かかどうかが問題になってしまうのは寂しい・・   個人における「豊かさとは何か」はかなり考えられてきたものの、まちの豊かさになると急に20世紀型の豊かさや活性化の概念に戻ってしまうのは少し残念なことである。      同著より

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日本の人口は2008年をピークに減少に転じてきています。2048年には1億人を割って9913万人となり、2060年には8674万人になると推定されています。※総務省          こうした状況の中で、人口増加のための対策や環境づくりをするのも必要かもしれませんが、現実的には難しい課題だと思います。だとしたら、人口が減少していくのであれば、それに合わせた施策に力を入れていくことの方がいいのかもしれないと思ったりします。

屋外空間を使いこなす主体については、地縁型コミュニティに代わってテーマ型コミュニティを集める必要がある。テーマ型コミュニティは同じテーマに興味を持つ人たちのつながりである。福祉や環境や趣味などのテーマに応じて集まる人たちがつくるコミュニティだ。 同著

こうしたコミュニティは、ここ最近各地域で増えてきています。形態はいろいろありますが、金や物だけに捉われず、地域住民が主体になっているところに特徴があります。   行政がお膳立てして運営するのであれば長続きはしないと思います。

個人やまちの経済的な豊かさと同時に、人と人とのつながりを大切にしたコミュニティもまた「豊かさ」の大きな部分を占めていると感じます。

 

次回は、「若者とまちづくり」について考えてみようと思います。

                       

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