表と裏

安倍内閣が示す「安全」という言葉の裏側

私たちが食料品を購入する時、その食品のパッケージの表には、商品名と購買意欲を誘うキャッチコピーなどが書かれています。                        最近では、健康志向の高まりにより「安全」「安心」「無添加」「国産」などの文字が目立つ商品が多くなってきました。又、裏面には、食品表示法に基づき原材料名や添加物、加工年月日(消費期限、賞味期限)、産地名、内容量といった表示が義務付けられています。特に直接人体に影響を及ぼす食品は、厳しい規制の下で管理され「絶対に安全」でなくてはなりません。                                                                 これらの基準や規制に違反した食品は、当然のごとく厳しい社会的制裁を受けることになります。                                      商品の表紙に書かれてある表示やキャッチコピーは、裏面の商品説明でしっかり裏付けされていなければなりません。だからこそ安心して購入できるものです。

2014年4月、安倍内閣は「エネルギー基本計画」を閣議決定しました。           この基本計画は、原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、今後も原発を使い続けるということを示すものとなっています。                       いままで繰り返し言われ続けてきた「安全神話」は、福島原発事故により過去のものとなりました。そして誰もがこの四文字を信じていません。               しかし、安倍首相は基準に適合した原発は「安全」だとして再稼働をはかることを繰り返し強弁しています。これは新たな「安全神話」を復活させるものにほかなりません。

2014年7月、安倍内閣は「集団的自衛権の行使を容認する解釈改憲」を閣議決定しました。そしてこの閣議決定を基に今年7月、安全保障関連法案(戦争法案)が衆院本会議で可決、さらに9月19日には参院本会議で強行採決されました。                           名称どおり「安全を保障する法案」なのでしょうか?

この二つの閣議決定と安保法案の衆参両院審議の中では、安倍内閣による「安全」という言葉が常にひっかかるように感じました。                         安倍内閣発行の「原発商品」と「安保法案商品」のパッケージの表には、大きく「安全」と書かれています。手に取ってパッケージの裏側を見たら商品説明は何も書かれていない状態です。                                     法案審議の最終盤、安倍首相は「成立した暁には時を経ていく中において間違いなく理解が広がる」とのべていました。又、成立後「これから国民に説明していく」と会見していました。                                     国民の理解が得られていないこの商品を食べろと言われても躊躇してしまいます。

人として守るべき道~倫理的判断

私たちは絶対に忘れません。原子力核爆弾による唯一の被爆国であることを。     私たちは絶対に許しません。福島原発事故による放射能汚染を。                原子力発電の経済性や供給安定性がどうであるかにかかわりなく、又、将来想定される地震の規模や頻度の論議、津波対策での防潮堤のかさ上げを何メートルにしたら安全性が高まるか、などという時間とお金をかけた議論や対策ではなく、もっとそれ以前の人として守り行うべき道という倫理的な判断が求められるものではないでしょうか。

原子力発電については以前から、過酷事故を起こした場合の被害が大きすぎる事業であると考えられてきた。またそうした破局的事故については、リスク=被害規模x発生確率、という公式を適用すべきではなく、どんなに発生確率が小さくても認めるべきではない。  確率という概念をあえて用いるならば、破局的な大事故の確率は十分に小さくなくてはならないが、破滅的な事故の確率は絶対的にゼロでなければならない。どんなにわずかでも破滅の可能性が残るような技術は、究極の「死の文化」であり、そのような技術の選択をすべきでない。  「脱原子力政策大綱」原子力市民委員会著より 宝島社

発行された安倍内閣の「原発商品」のパッケージの裏側には、「破滅」という文字が浮かび上がってきたような気がします。

2015原発1  2015原発2   映画「日本と原発」自主上映映画作品。今、全国各地で上映がはじまっています。     チェルノブイリ、福島原発事故の悲劇、東電の企業責任と原発訴訟の現状、原発輸出や軍需産業の振興とそれらを取り巻く「原子力村」の実態など、わかりやすいドキュメンタリー映画でした。

集団的自衛権行使の目的は、世界のあらゆる地域で米軍とともに戦争をするということが、この間の国会審議ではっきりしました。                                                                              後方支援は「武力の行使」にあたらないといっても、いままでの「非戦闘地域」という歯止めを撤廃して、「戦闘地域」まで自衛隊が行って米軍の後方支援を行えば、相手方からの攻撃にさらされることになります。攻撃されたら「自己防衛」として武器を使用し、結果殺し合いという悲惨な状況を生むことになります。                                            こうした「武器の使用は武力の行使にあたらない」という論理は全く通用しません。違憲であることは明白です。

集団的自衛権行使は、日本に対して武力行使を行っていない国に対して、日本の側から武力の行使を行うということになります。それは、相手国からみれば、日本による事実上の先制攻撃として受け止められます。                          ここにも「人として守るべき道」としての倫理的な判断が必要ではないかと思います。

「安全な保障をする法案」(安全保障法案)ではなく「戦争をする法案」(戦争法案)という文字がパッケージの裏側に浮き出てきたような気がします。

2015戦争法案5  2015戦争法案7   9月21日、カミサンと国会に行ってきました。国会は休みでしたがシルバーウィークということで全国から多くの方が来ていました。お話した方々は、沖縄、広島、山形、群馬から来られたご夫婦、家族連れの人達でした。

2015戦争法案6  2015戦争法案8   皆さん手づくりのデモンストレーションで意思表示されていました。

どんなものにも表と裏があります。いつも表ばかり見て判断してしまうことがありますが、裏もしっかり見てほんとうに大丈夫なのかと確認することが大事だと思います。    安倍内閣が示す「安全」という言葉を信じることはできません。

6 thoughts on “表と裏

  1. いつも力強い意見で元気づけられます。
    これからTPPの問題もあり、食の安全はほんとうに難しくなると思います。
    生き延びていくには、自分で食料確保がいちばん…という時代に突入していると感じます。
    若いご夫婦が小さな子供を連れて田舎に移住して半農するケースが多くなりました。
    大変だと思いますが、賢明な選択だと思います。

    1. 家犬さん

      コメントありがとうございます。
      関税ゼロになるTPPは、農林水産業に大きな打撃を与えると思います。
      さらに安全な食品という面でも深刻な問題を引き起こすように思われます。
      そういう意味でTPP問題にも関心を持たざるを得ませんね。

  2. 民意を無視する政策を数々ゴリ押しする安倍首相ですが、国民はそれでもやはり彼に続投させるのでしょうか。私が一番驚いたことは消費税を立て続けに上げても国民がそれほど反発しなかったことです。今回の問題で多くの国民が立ち上がったことにとても感激しています。

    1. ジュリーさん

      コメントありがとうございます。
      消費税増税には過半数以上の国民が反対していますが、今回の安保法案については、戦争という国民の命が直接関わってくる大きな問題として立ち上がったのではないかと思います。安倍政権は時間が経てば反論や騒ぎがおさまってくるだろうなんて思っているかもしれませんが、そうはいかないと思います。必ずやその反動はくると確信しています。

  3. 初めまして。
    私は、旧産炭地の筑豊在住です。石炭産業がまだ生きていた時代(私の高校卒業ごろまで)炭鉱事業所のいたるところに「安全」「保安」の看板が掛かっていました。坑内のトンネル入り口にも、「安全第一」の大看板があり、その下を鉱員を乗せたトロッコ電車が地下に向かって行きました。全産業の中で炭鉱事故の犠牲者が突出していた時代、最も「安全」ではない職場が炭鉱だったのです。この筑豊の石炭が明治以降の基幹エネルギーとして富国強兵政策を支えてきたのです。戦争中は戦艦や戦車等の鉄材を製造する八幡製鉄所の「後方支援」を行ってきたのです。NHKの「花子とアン」の伊藤伝衛門は石炭採掘業の成り上がりで、「副総理の」麻生家も同様です。
    いつ落盤が起こるかわからない危険な坑内作業、労働の過酷さに見合わない低賃金、多くの朝鮮人労働者もいました。中小成り上がりの経営者の上に、三井・三菱・安田・明治等の財閥系の大企業が大きな事業所を各地に持っていました。
    石油へのエネルギー転換により「スクラップ&ビルド」政策が実施され、瞬く間にこれら大企業は引き揚げ、そこに炭鉱があったことなどわからないように過去を消滅してしまいました。多くの炭鉱犠牲者の上にいったい何がこの筑豊にもたらされたのか分かりません。私は、炭鉱産業における「国の棄民政策」を通じて、国は国民の生活を守らないどころか切り捨てるということを中高校生の時に学びました。
    大震災・原発事故・戦争法案でいう「安全」「安心」「復興」は「危険」「過酷」「自己責任」だと読み替えています。また、政府の言う「国民」は一部の「大企業・支配層・富裕層」の意だと解釈しています。
    世界産業遺産に「軍艦島」なら、当然、筑豊をはじめ各地の旧産炭地を入れるべきだと思いますが、ことごとく負の遺産は覆い隠されてしまいました。歴史が発掘されたら困る人たちがいるのでしょう。

    1. mittyさん

      貴重なコメントありがとうございます。
      先月末から山旅に出かけていたため返信が遅れまして申し訳ございませんでした。
      筑豊炭鉱の詳しいことについてはよくわかりませんが、日本経済に関わるこうした産業への「進出と撤退における大企業の責任と役割」は大きいものがあると思います。北海道夕張市の財政破綻の要因の一つに、撤退に当たって大企業の「北炭」の異常なやり方が夕張市民の負担になったことは、まだ記憶に新しいものがあります。
      政府の手厚い保護の下、利益を上げるのは大企業とその関連会社です。  
      原発に巣食う「原子力ムラ」がいい例ではないでしょうか。そしてこうした事業の危険な部分やマイナス要素はすべて覆い隠されてしまいます。いざという時のツケは、全て国民にまわってくるしくみになっています。
      又、世界産業遺産の「軍艦島」においても朝鮮人労働者のことも隠されようとしました。歴史上の事実を隠してまで世界遺産登録する必要性はあるのだろうかと疑問に思いました。
      第二次世界大戦の日本の中国、東南アジア諸国への「侵略戦争」だったことさえも隠されようとしています。
      mittyさんがおっしゃられるように「負の遺産が覆い隠される」ことは、たいへん危険な状況に向かっているのではないかと思います。
      まさにこうしたことが、今回の「戦争法案」「原発再稼働」にあらわれていると思います。

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