選挙制度と民意を考える

戦争法案の強行採決

民意が反映されない日本の政治

昨日17日、戦争法案が参院安保法制特別委員会で大混乱のなか強行採決されました。    大多数の国民がこの法案に納得できない、国会の審議が充分に尽くされていない、政府の説明が不十分などの状況での採決でした。                       最近のメディアの世論調査において、今の国会で戦争法案を成立させることについては、  朝日=必要ない68%、必要20%、産経とFNN=反対59.9%、賛成32.4%、NHK=反対45%、賛成19%と反対・必要ないが圧倒しています。                   更に、テレビ朝日の調査(12、13日)でも「国民に十分に説明していると思わない」人が80%に上っています。又、TBSの世論調査(5、6日)は、政府の説明は「不十分」と83%が回答しています。

以前、このブログで「川内原発稼働と民意」(8/12日)についてお話しましたが、過半数を超える国民の声が通らない政治が今回の戦争法案採決にも同様に行われました。           ここで「民主主義」「多数決」「過半数」ということについて考えてみました。      民主主義とは、いうまでもなく個人や一部組織の意志決定ではなく、選挙で選ばれた代表者全員の合意による意思決定の体制を指します。そして、多数決という手段で最終決定されます。                                    国会の法案採決において、多数決による結果だから議会制民主主義は守られているというかたちにみえますが、はたしてそうでしょうか?                    それ以前の問題として「民意が反映されない選挙制度」に大きな問題があります。     より多くの国民の声が反映される国会運営こそ民主主義の基本であると考えるならば、現行の選挙制度は大きな問題をはらんでいると思います。                   現在の選挙制度は、小選挙区制と比例代表制の二つの選挙方式で行われています。比例代表制の場合、国民の意志・声が直接的に反映されます。一方、小選挙区制の場合、区割りされた選挙区でトップの候補者だけが当選し、他の候補者は全て落選=死票になります。  選挙制度の基本である民意の公正な議席への反映がゆがめられる結果につながります。

この小選挙区制度は、大政党に有利になる制度です。過去の選挙結果では、2005年自民党296議席、2009年民主党308議席、2012年自民党294議席。そして昨年2014年の解散総選挙では、自民党291議席を確保して公明党と合わせ326議席の3分の2を超える結果になりました。この291議席は、ほんとうに民意を反映した議席なのか?            過去いずれの選挙も小選挙区の第1党の得票率は4割台にもかかわらず、7~8割もの議席を占めています。得票率と獲得議席数に著しいかい離を生み出し、議席に反映されない投票「死票」が過半数にのぼっています。                          ※全ての選挙区で候補者を擁立している大政党のため、その得票率は4割台と多くみえるが、中小政党が候補者を擁立すれば、実際の得票率はさらに下がる傾向。         

昨年の総選挙での自民党の比例代表選得票率は33%でした。又、小選挙区選の得票率は48%でした。そして獲得した議席はなんと76%です。                  安倍政権は、民意を問うということで解散総選挙を行い、大政党に有利な小選挙区制度で議席を獲得して「信任された」と思いこんでいるのではないでしょうか。            棄権者を含む全有権者の絶対得票率では、自民党は17%、小選挙区では24.5%です。     これだけの得票率(支持)で過半数を超える議席を獲得し、国会での採決では多数決において可決されるという現実をみるかぎり、これが民主主義なのかと目を疑うばかりです。

私たち庶民の生活に関わる消費税増税、年金削減、医療費負担増などの反対意見は、過半数を超えています。又、川内原発稼働反対57%、沖縄普天間基地問題では、県知事選挙で当選した反対派の翁長氏の得票率は51.7%でした。                    国の方向性を決める法案の決定は国会にあります。過半数を超える国民の声(民意)があっても、現行の選挙制度ではその声が届かないしくみになっているのではないでしょうか。                                                        民意を正確に議席に反映させる制度=比例代表制に切り替えることが必要だと思います。

今回の戦争法案の強行採決は、まさに国民の民意が無視されたかたちになりました。    前述したメディアの世論調査でも6割の国民が今国会での成立に反対、8割の国民が政府の説明が十分でないといっています。私(私たち夫婦)もその中のひとりです。       この法案は、戦闘地域での兵たん、戦乱が続いている地域での治安活動、米軍防護のための武器使用、そして集団的自衛権など憲法違反であることは明白です。          このような憲法違反の法案が、過半数にもとうてい満たない得票で得た議席多数の「数の力」で強行採決されること自体「暴力」そのものです。

2015戦争法案1  2015戦争法案2   9月17日PM2:00 国会正門         参議院別館 傍聴受付所

2015戦争法案3  2015戦争法案4   国会前の歩道。戦争法案強行採決に反対する集会とデモンストレーション。

17日雨の中、何らかのかたちで意思表示をしようと思いデモンストレーションに参加しました。カミサンも職場の仲間と共に何度か国会に足を運んでいます。この日も夜遅く帰宅してきました。                                   どこかの政党を支持するウンヌン関係なく、思想信条をのりこえ多くの国民がこの法案反対に向け参加されていました。

先日、親しい友人に会った時、昨年の選挙で知人から頼まれ地元選挙区の自民党候補者(当選)に投票したそうです。「まさかここまでの暴挙をするとは」と悔いていました。  一票が政治を変えることはありません。それぞれの方が何らかの考えを持って投じる票ですから、まったく個人の自由です。                          選挙期間になると、その候補者や運動員の方々は「よろしくお願いします」の連呼だけが目立ちます。具体的な政策には触れずただ有権者に頭を下げているのを目にします。    ご近所の付き合いや地元有力者からの声があったから、先輩や上司、友人に頼まれたから投票したなどあるかもしれません。それもまた個人の何らかの考えがあっての投票です。  候補者や政党がこれから何をしようとしているかを見極めてからでも遅くはないと思います。                                                     

7 thoughts on “選挙制度と民意を考える

  1. 雨の中、夜遅くまで、お疲れさまでした。
    TVの前で、国会の前の人々に申し訳ないような気分でおりました。
    この法案により、アメリカに加担する戦争が増えると思います。
    そのための税金はとてつもない額になるでしょう。
    国、国民を守るために、別な形で税金を使ってほしいです。
    人命も税金も無駄になってしまいます。

    1. 家犬さん

      戦争法案に対する適切なコメントありがとうございます。
      世界中のどこでも米軍防護のための武器使用が行われます。
      たしかにとてつもない税金が投入されることが目に見えています。
      大切な国民の税金は、国民にとって有効に使われなければならないと思います。

  2. 匿名さん

    コメントありがとうございます。
    まず、世論調査についてですが、私は一つの指標として上げました。「多数の」または「多くの」という表現は、聞き手にとって非常にアバウトな言い方になってしまいます。具体的な数値を上げることでおおよその判断ができることとして出しました。メディアの報道は公共性を持っていますので、ある程度近い判断材料になります。
    「正確」なのかといわれれば難しい点はありますが、方向性はあります。
    小選挙制度については、「死票」が増えるということに問題があると指摘しました。
    そのことはひとつの考え方です。そういう考えがあって意見を述べています。
    選挙制度についてはいろいろな考え方がありますが、その中のひとつの考え方です。
    個人がどう考えるかは自由です。
    「一方的な思想で凝り固まった子供じみた論拠では、横から見てもおかしい」という言い方は、逆にコメントとして不適切な言い方です。
    それだけの考えをお持ちであれば、匿名ではなく名前を出してください。更に、匿名さんの選挙制度に対する考えを明確に意見としてお寄せください。

  3. 匿名様
    私のコメントに対してのコメントかもしれないと思いました。
    安保法案の自衛隊法を読まれましたでしょうか。
    その条文に合衆国軍隊等の要請によって、防衛大臣の判断で、自衛隊が使われるのです。
    人命、戦争にかかわることが、この法律によって決められていきます。
    こういった重要な法改正があることを選挙前に公にしていません。
    政権をとったからといって、すべて、おまかせで法改正をやっていいわけがありません。
    この法律が可能になったらどうなるか、その想像力がないのは賛成している人々です。
    集団的自衛権がなくても、個別的自衛権で国は守れます。
    その考えのもと、法律を作って守ろうとしていない、ということです。
    戦争好きなアメリカのやり方を、考えもせずしたがっているだけです。

    1. 家犬さん

      今回の戦争法案による集団的自衛権の本質について、的確なコメントありがとうございます。
      集団的自衛権行使は、日本に対して武力攻撃をしていない国に対して、日本の側から武力の行使を行うということです。これはまさに相手国からみれば日本による事実上の先制攻撃になります。相手国に日本を攻撃する大義名分を与え、今度は日本に対して攻撃の矛先を向けてくることになります。
      「人命、戦争にかかわることが、この法律によって決められる」という家犬さんのコメントどおりだと思います。
      武力紛争を日本に呼び込むこと、これがまさに集団的自衛権の本質です。
      沖縄米軍基地をはじめとする国内の基地問題は、日本のアメリカ従属型の典型です。

  4. アメリカに住む者からの意見で恐縮なのですが。
    アメリカは建国以来(1776)その90%の年月を戦争に費やしてきたそうです。
    国防に力を入れれば入れるほど戦争の数を多くなっていくようですね。今回の安保法案可決によって日本はアメリカと肩を並べて戦争に参加できるわけです。
    戦車が増えたら国は安全になるのでしょうか。今のアメリカが一番の悪い例だと思います。空港でもマラソン大会でも、人の集まる所は危険が一杯なアメリカです。
    日本がアメリカと同じ道を歩かないことを祈るばかりです。

    先日沖縄の辺野古の海を見に行ってきました。ジュゴンが生態している近くにセメントを流しこんで滑走路を作るようです。近くでその規模を見て本当にショックでした。
    ケネディー大使が数ヶ月前にこの地を観察したそうですが、果たして彼女の街マサチューセッツの避暑地にこんな滑走路を作るだろうか。アメリカが日本に居るのはあくまでも自国の利益を守るだけなのです。

    1. ジュリーさん

      アメリカで生活されているジュリーさんのような方からのこのようなコメントは、たいへん説得力があり真実味が伝わってきます。ありがとうございます。
      ジュリーさんのおっしゃるように、日本はアメリカと肩を並べて戦争に参加するようになってしまいます。このようなことはけっして許されるものではありません。
      「アメリカが日本に居るのはあくまでも自国の利益を守るだけ」という考え方は、まさにそのとおりだと私も思います。
      国会での法案可決だといってもまだはっきり決まったわけではありません。
      国民の大半は反対しているわけですから、廃案に持ち込むことも可能だと確信しています。

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