映画「ゆずり葉の頃」

岩波ホール

幼い頃の淡い想いをつづった大人の静かな物語

シニアになられた皆さんにとってピッタリの映画ではないでしょうか。          私たちの今の生活と過去の想いをダブらせ、けっして派手ではない静かな映画です。        一人の年老いた女性が、幼かった頃に出会った人への淡い想いを蘇らせてつづっていく物語です。                                         シニア世代になられた方にとって、昔の少年、少女時代の甘酸っぱい思い出は誰にでもあると思います。

新聞の文化欄でこの映画の上映を知ったのはつい最近です。カミサンにこんな映画があるから今度観にいってみない?と声をかけたところ、カミサンも最近雑誌で見て知っていました。それなら話は早いということで、早速出かけてみました。

岩波ホールといえば、数々の名作を上映する劇場として以前から知っていましたが、実際に足を運んで観に行くのは今回が初めてでした。                    日本では上映されることの少ない、アジア・アフリカ・中南米などの欧米以外の国々の名作の紹介。欧米の映画であっても、大手興行会社が取り上げない名作の上映。      (岩波ホールHPより)などの理念を掲げて運営されているそうです。           実際に行ってみて、予告上映の際に企業コマーシャルが流れないのはたいへんいいです。 一般のシネマでは、これでもかとウンザリするくらい見たくもない映画の予告編やコマーシャルが流され、さあこれから観ようという期待感が削がれてしてしまうことが多々あります。

2015ゆずり葉5    2015ゆずり葉7          「ゆずり葉の頃」ポスター      岩波ホール 220席 満席でした!

2015ゆずり葉9 2015ゆずり葉10     開演1時間前の午前10時のチケット売場は、60~70代のシニアの方々で長蛇の列。

過去を封印して生きてきた年老いた女性を主人公に、日本を代表する名優である八千草薫と仲代達也が共演した感動的な人間賛歌。思い出の絵を探す旅をする主人公を通して、彼女の人生と戦後の貧しい状況の中で胸にしまっておいた想いをつづる。        共演は、風間トオル、岸部一徳、竹下景子ら。故岡本喜八監督の妻で、プロデューサーである岡本みね子が旧姓の中みね子で監督を務める。(シネマトゥデイより)

主人公市子(八千草薫)が少女の頃に想いを寄せていた人は、今では国際的な画家(仲代達也)になっていた。彼の個展の記事を目にした市子は、思い出の一枚の絵を求め、軽井沢へと旅立つ。海外勤務から一時帰国した息子(風間トオル)は、旅に出た母を気にかけ後を追う・・・。

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「ゆずり葉 」って? 映画を観る前からどういう意味でこのタイトルなのかということを知らずに鑑賞しましたが、観終わってからお互いの感想を言い合う中でカミサンから伝えられ、なるほどなと思いました。                          ユズリハ=人間との関わり                              ユズリハの名は、春に枝先に若葉が出たあと、前年の葉がそれに譲るように落葉することから、その様子を、親が子を育てて家が代々続いていくように見立てて縁起物とされ、正月の飾りや庭木に使われる。 (ウィキペディアより)

細かなストーリーについては特に記しませんが、戦後の厳しい生活環境の中で主人公の母親の苦労と、そして主人公の息子に引き継がれていく親と子のあり方を物語っていく映画でもありました。                                     息子は、今後の年老いた母親のことを思い、海外勤務である仕事を辞めようと考えている気持ちを打ち明けますが、「くだらない」という一言で一蹴し、「あなたの生き方を見続けていきたい」という強い意志を息子にぶつける言葉が印象的でした。          そして、旅を通して幼い頃に想いを寄せた人と思い出の絵画に出会え、ひとつの区切りができたことから、これからの「終の棲家」を探していく気持ちになっていく物語でした。

親と子の関係とその思いは人それぞれです。私たちもシニアと言われる世代になり、今の自分たちのこととダブらせながら観る場面もありました。                今年90歳になる一人暮らしの母親、95歳の義父の介護を通して、親に対する子の気持ちはよくわかります。そして、一人娘の生き方においても、親である主人公の気持ちがよくわかります。                                    以前、当ブログでも書きましたが、                          単に子どもの世話になりたくないということではなく、子どもには子どもの人生や生き方があり、それを阻害する気持ちはありません。                     残る老後生活の社会化のためには、たぶん老人の主導があって、親がまず子や孫を対等な他者として突き放すことである。 山崎正和(劇作家)「介護の社会化」より       ということも、今回の映画を通して再考するものでした。

八千草薫、仲代達也というベテラン俳優による演技で、しかも、脇を支える岸部一徳や六平直政、本田博太郎などの味のある役者も出演されていて重厚感ある大人の映画でした。   又、音楽も山下洋輔のピアノが見逃せません。

ちなみに、6月19日(金)まで岩波ホールで上映中です。

 

ということで、久しぶりにカミサンと二人で都内に出かけて来ました。お昼はちょっと足を伸ばして築地の場外市場で海鮮丼とウニ丼を食し、なんとも贅沢な一日でした。     しかし、田舎者にとっては慣れない都会の人混みは疲れますね。

 

 

 

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