日本百名山に思うこと (2)

完登のための3つの条件と自分スタイル

山に登るプラスアルファの楽しみを!

百名山に限ったことではありませんが、日本一周自転車旅・くるま旅、四国八十八か所巡り、日本百名城巡り、東海道五十三次ウォーキング、道の駅スタンプラリーなどいろいろな目標を立てて楽しく取り組んでいる方は以外に多いものです。             30年来のご近所の友人も定年退職以降、旧中山道ウォーキング一人旅にチャレンジしています。あまり細かな計画やタイトなスケジュールを立てず、体調の良い時に数日間出かけて一定の距離、宿場を歩き帰ってくるといったサイクルで楽しんでいます。       先日、ご自宅にお邪魔した時、奥さんが「今頃、馬篭か妻籠歩いているんじゃないの?」と言ってました。いつ頃帰るの?と訊ねると「明日か明後日頃帰って来ると思うよ」っていう具合です。                                   お酒の大好きなダンナさんですから、出かける時はいつも電車です。行き帰りの電車の中でチビリチビリやりながら旅を続けている姿が目に浮かびます。一度帰ってきてから数週間後に再び出かけて、途中からまた歩き始めるという自分スタイルの方法で目指しています。                                         帰ってきてから話を聞くと、旅先で旧街道がプッツリ切れて道に迷ったこと、同じ志のお仲間に出会ったこと、地酒や蕎麦・山菜料理のこと、秘湯宿のことなどの土産話で盛り上がります。

今まで出会った日本百名山を目指す多くのハイカーもそれぞれのスタイルで山旅を続けています。完登まで短い人では数年、長い方は数十年といったように個々のやり方で目指しています。私も数年前から目指そうと思い立った頃から感じたことは、ある程度の条件がないとなかなか達成できるものではないと思いました。                                それは、体力・時間・資金です。これらは、百名山登頂に限らず、冒頭でお話したいろいろな巡り旅やウォーキング旅も同様ではないでしょうか。そして、それらの旅と比較した時、最も要求されるものはやはり体力です。もちろんこれらの旅の最低条件共通項は、健康でなければならないことです。一般的な旅行もそうです。              健康であるという最低条件の上に、更に3000m級の登攀もあるのですから体力が最も必要な条件といえます。                                   日本人の健康寿命は男性で70歳、女性で74歳です。そして一般的な話ですが、男性では65歳以降は体力・気力とも下降線をたどっていきます。もちろん個人差はありますが、健康が最低条件であり、こうした身体の減退傾向を考慮しなければならないと思います。                                     今まで70歳を超えて百名山を目指している方に数人出会いました。丹沢山では76歳の方、武尊山では73歳の方、鹿島槍ヶ岳では72歳の方などでした。この三人に共通したことは2点ありました。皆さん小柄な体型であったこと、そして二点目は、目の輝きが強かったことでした。無駄のない身体状況で気力が旺盛であったということが印象的でした。                                                                               ともあれ、男性では体力的に65歳までという年齢がひとつの目安だと思います。

IMG_2237  IMG_0568   深田久弥著「日本百名山」         体力・気力が必要とされる槍ヶ岳

人生ってなかなかうまくいかないものです。どんな世代になっても「ない物ねだり」があります。若者は体力があるのに時間がない金がない。働き盛りの中年は、ちょっとおこずかいがあっても超多忙で全く時間がない。定年退職すればある程度自由に使える小金と膨大な時間はあるけれど体力がない。                         だからこそ、そうした難題を克服して頂上に立った時の達成感は格別なものになります。

時間と資金を効率的に使う登山者たち

百名山登頂を目標に掲げた多くの登山者に共通しているやり方として、「時間と資金」の二つの効率的なやりくりがあります。例えば、同じ稜線上にある二山を縦走する。同じエリアにある三山を数日間かけて巡るといったプランです。                 百名山は、北は北海道から南は九州まで全国に散らばっています。例えば九州在住の方が、北アルプスや東北、北海道に行く移動時間だけでもたいへんなことです。逆に関東や北海道、東北在住の方もしかりです。

IMG_3111  IMG_1197   鹿島槍ヶ岳頂上からの五竜岳方面      瑞牆山頂上からの金峰山

今までこうした二山、三山同時にまとめて踏破する登山者がいかに多いかということは、実際に行ってみるとよくわかります。                         私の登山経験からの例を挙げると、最も多かった山は甲斐駒ケ岳と仙丈ケ岳でした。バスを乗り継ぎ北沢峠まで時間をかけて行くことから、この峠の小屋やキャンプ地で一泊することで可能です。遠路はるばるせっかく来たのだからまとめて登ろうという方々です。   その他にも尾瀬の至仏山と燧ケ岳、金峰山と瑞牆山、北岳と間ノ岳、鹿島槍ヶ岳と五竜岳美ヶ原と霧ヶ峰、谷川岳と武尊山、水晶岳と鷲羽岳、立山と剱岳、鳥海山と月山など。  昨年、磐梯山で出会った長野の登山者は、連泊しながら安達太良山と吾妻山の三山、又、安達太良山で出会った広島の登山者は、前日吾妻山に登って明日は磐梯山だと言っていました。休日をやりくりして広島から新幹線、タクシー、バスを利用して来たのですから、まとめて三山走破は納得できます。                          ちょっとビックリした例では、昨年丹沢の蛭ケ岳山荘でお会いした方は、北海道から飛行機で来て丹沢山だけ登って帰ると言ってました。わざわざ北海道から高額の航空運賃を払って一山だけ? 同宿した登山者一同驚いていました。完全リタイアしたその登山者は、もちろん百名山踏破を目指している方でしたが、ついでに湘南や鎌倉を見物していくとのことでした。これもまた人それぞれで自分スタイルの登山なんでしょう。

私も一昨年、鳥海山と月山の二山を目指して東北まで出かけました。しかし、天候不順のため登山は諦め二日ほど麓の酒井、鶴岡市で観光見物して帰りました。悪天候の中でも登頂は可能だと思いましたが、せっかく登るのだから眺望が楽しめる天気の良い時に行った方がいいと考えでしたのでキッパリ止めました。                      そして昨年、天候に恵まれ鳥海山に登頂することができましたが、翌日予定していた月山は曇りの天気だったので、今度もまたキッパリ止めました。また東北旅行の時にでも来ればいいと思い観光や温泉、グルメに切り替え楽しんできました。

IMG_3895  夕日の丘6   昨年登った鳥海山             曇りのため登山を止めた夕暮れの月山

せっかく遠いところから来たんだから天気が悪くても登ろう」          「せっかくここまで登って来てあともう少しだから登頂しよう」             登山する方にとってこんな経験は必ずといっていいほどあります。この時いろいろなことに頭を巡らせます。体力、時間、資金、眺望などいくつかの判断材料に基づいて決めていくことになります。                                      逆に「せっかく登るんだから天気のいい時にしよう」というように、この「せっかく」の使い方は、個人の考えや価値観によって異なります。又、その時のいろいろな状況や条件などによって、その後の行動は違ったりします。

私も現役時代は仕事を優先にしてきたため、限られたスケジュールの中で無理した登山や諦めた登山がありました。しかし、リタイア後の考え方は変わってきます。        一定の健康、体力を維持している場合、残りは時間と資金です。登山に限らず趣味や余暇に使うお金はそれなりに必要ですし必要経費です。                   とすれば、残りは時間です。リタイア後の自由な時間こそが一番価値があり、有効に使いたいと思います。例えば、2日かかる登山は3日かけてもいいんじゃないか、更に、その土地の観光やグルメを楽しむのであれば4日、5日かけてもいいんじゃないかと思います。天気が悪ければ観光や温泉に切り替え、晴れになったら眺望が楽しめる登山をしようということです。                                  なんとも贅沢なことかと思うかもしれませんが、せっかくある時間だからこそ自分スタイルで使っていきたいと考えています。

 

「日本百名山に思うこと」 つづく

 

 

 

2 thoughts on “日本百名山に思うこと (2)

  1. 家犬さん

    家犬さんの車中泊の旅、お寺や公園の写真うまく撮れてますね。青空がバックだと被写体もはっきりきれいに見えます。これから新緑の時季ですから緑のある風景や色彩鮮やかな花の写真も楽しみですね。

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