東北の秘湯めぐり

退職後の一人旅

一日中ボンヤリと何もしない贅沢~温泉三昧

早期退職してちょうど2年経ちました。
皆さん、退職してすぐにどのようなことをしますか?
役所関連の書類や年金などの手続きは別として、夫婦で国内・海外旅行や趣味としていたことに本格的に着手したりいろいろあると思います。


実は私の場合、退職前からやってみたいと考えていたことがありました。たいしたことではありませんが、のんびりと温泉めぐりの一人旅をしたいという思いがありました。
私以上の年月でまだ働き続けているカミサンには申し訳ないと思いつつ話してみると「ゆっくりと何日でもいいからいってらっしゃい」と言って送り出してくれました。
人気のある有名な温泉地はできるだけ避け、秘湯といわれる温泉で湯治ができるような場所はないかと調べました。
選んだ温泉地は、東北の花巻大沢温泉と山形の肘折温泉です。はじめてのことだったので一ケ所では飽きてしまうのではないかと考え2ケ所の温泉地を巡る電車とバスの10日間の旅でした。                                                            関東地方で桜が咲く2年前のちょうどこの時期、着替えと文庫本だけをリュックに詰め込み電車に乗り込みました。

 

岩手の山間にあるノスタルジックな湯治湯~大沢温泉

 

温泉地には湯治場というものがあります。
農閑期に温泉に入って身体を休めたり、温泉療養で身体を治すことなどを目的に滞在します。一般的な観光での宿泊と違って、この湯治湯は「長期間と自炊」が特徴的です。
大沢温泉には「自炊部」があります。通常の宿泊棟とは別に湯治を目的とした方が宿泊する建物で、自炊や洗濯ができる専用の設備があります。簡単に言えば素泊まりで食事は自分で作ったり、食料を持ちこんだり、外食したりして自由に過ごすというものです。
今回の旅は、観光というよりも温泉でゆっくりすることが目的だったので迷わずこの自炊部に予約しました。
大沢温泉自炊部

 

IMG_0198  2015大沢温泉1

実は東北の温泉選びでは、はじめから湯治ができる秘湯を探していました。更に、完全自炊ではなく食堂などがあって自由に食事できる温泉地を探していたところこの大沢温泉が見つかったということです。そしてなによりも安いということが魅力でした。
宿には食事処があります。朝食だけ事前予約ですが、昼食と夕食は自分の都合の良い時間帯に行って食べたい物(メニューはいろいろあります)を注文するといった具合です。
宿泊料金は、基本の室料に寝具(敷布団200円、掛布団200円、枕10円、灯油代など)の積上算方式でした。たしか1泊で3300円位だったと思います。※時期や部屋の大きさなどにより基本室料は異なります。
自炊部宿泊利用の仕方パンフ

 

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泊まった部屋からは目の前に川を挟み茅葺の宿泊棟が建っていました。敷地内ですので橋を渡って自由に行き来でき温泉もあります。
写真右は、裏側から見た大沢温泉の外観。中央には川沿いに大きな露天風呂があります。対岸からは丸見えでしたが、敷地内ですからそんなことおかまいなしです。

 

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館内には売店があり湯治に必要な日用品類や食品、生鮮品などを販売しています。
ノスタルジックな昭和の面影を残す古い建物ですが綺麗に清掃が行き届いていました。
私が泊まった部屋は6畳間の完全個室でしたが、内側からのカギがかかるだけで外出時はカギがかかりません。貴重品はフロントに預けておきます。写真のような部屋もあり家族的な雰囲気がありました。

 

散歩しながらもう一つの秘湯「鉛温泉 藤三旅館」へ

 

湯治客が入浴できる4つの温泉めぐりをしたり、部屋で寝転がって好きな本を読んだり、飽きれば昼寝したりしながらゆっくりと過ごす時間、なんと贅沢なことでしょうか。
天気がいいので散策してみたりしました。観光地ではないのでもちろん見学する名所や遊ぶ場所などありません。山と小川、一面にひろがる田畑があるだけです。
宿の方に聞いたところ、この先に珍しい温泉があるから行ってみたらどうですか、と案内され散歩がてらに行ってみました。

 

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東北地方も春を迎え新芽が芽吹く頃です。雪解けも終わりいたる所にフキノトウが芽を出していました。天ぷらにして食べたいな~。
その珍しい温泉までは路線バスでも行けますが、ポカポカの春の日よりだったので約30分ほど歩きながら向かいました。

 

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あれ~!どっかで見たことがあるな~。「日本の秘湯」という本に載っていた温泉旅館でした。
藤三旅館HP

 

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日帰り入浴700円。お昼頃、誰一人お客さんがいなかったので写真をパチリ。レトロ感あふれる浴槽です。脱衣場は写真のとおり浴槽の脇にあります。深さ1.25mもあるので立っての入浴になります。ここは混浴ですから女性は入りずらいですね。(女性専用時間帯もあります)

 

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藤三旅館は旅館部と湯治部に分かれた、東北らしい古き良き温泉文化が生きている宿である。名物は宮沢賢治も愛した「白猿の湯」だ。廊下の引き戸を開けると、地下二階ほどのところに小判型の浴槽が口を開けている。浴槽の深さは平均1.25mもある。この風呂はもともと川床から温泉が自然湧出していたところを囲んで浴槽とし、これを中心として宿が建てられていった名残りであるが、時が経つに連れて湧出場所が段々と深くなっていき、現在の立ち湯というスタイルになっていったのだという。
「日本の秘湯」より

 

こんな素晴らしい温泉に偶然出会えてこれもまた贅沢な気分になっちゃいました。
大沢温泉に数日間湯治した後、今度は東北本線~北上線~奥羽本線を乗り継ぎ山形の新庄に向かいました。

 

名峰月山を仰ぎ見る奥深き温泉郷~肘折温泉

 

のんびりとした電車の旅もいいものですね。この時期はまだまだ雪深く車窓からの景色は真っ白です。北上線と奥羽本線が交わる横手駅を経由して新庄まで電車旅です。新庄から路線バスで1時間山奥の肘折温泉に向かいます。

 

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4月に入ってもこの地方はまだまだ雪が多く、川の水もかなり冷たかったです。

 

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肘折温泉郷では、つるや肘折ホテル(つるや金兵衛)に宿泊しました。この宿も通常の旅館部と湯治部があります。表玄関は近代的なホテルとしての外装ですが、裏側は写真のような湯治宿といった風情の旅館です。ここでも湯治連泊プランを予約して温泉三昧でゆっくりしてきました。肘折温泉の湯治は、食事を出すのが基本だそうです。この湯治プランは1泊3食付きで5000円という格安料金でした。

 

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大沢温泉の一軒宿とは違って、この肘折は古くから温泉郷として発展してきたようです。温泉街を散歩すると昭和のレトロな建物が並び、郷愁をさそう街並みです。 退職後すぐにしたことは、観光旅行でもなく、好きな登山でもなく、又、くるま旅でもないオヤジの温泉一人旅でした。永年勤めてきた仕事漬けの人生でしたので、ゆっくりとしたかったことがこの旅に向かわせたのではなかったかと思います。
帰ってからカミサンに「ありがとう」といって感謝の気持ちを伝えました。
「ゆっくりできて良かったね」と笑顔で迎えてくれました。

おみやげは、帰る前日に肘折温泉の川の土手で採ってきた「ふきのとう」でした。                                    

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