電力「託送料金」の問題

電気を運ぶ電線使用料

原発賠償金、廃炉費用を上乗せ!?

 

2003年電力小売自由化がスタートし、2016年には一般家庭や商店などを対象に全面自由化になりました。
この電力の自由化は、今まで各地域の電力会社が独占的に行っていた電力事業の市場を開放することで、電気料金の抑制につなげることが目的でした。

一般家庭でも生活スタイルに合わせた料金メニューを自由に選べるようになり、又、ガス会社との契約でガス料金と合わせてさまざまなサービスや特典が受けられるようになりました。
更に、家庭からの売電もできるようになり、太陽光発電によって小売できるしくみも整ってきました。

こうした中、我が家も2年前に東京電力との直接契約を解除し、〇〇ガス会社と契約してガスと電気のセットプランに切り替えました。
基の電力供給会社は東京電力ですが、小売事業者(ガス会社)からガスと電気を購入することでサービスと特典が得られるかたちになります。
ブログ:「ガスと電気の契約」

 

大手電力会社が発電した電気は、小売電気事業者に販売されます。
小売電気販売事業者は、電気を送配電網を通じて消費者に届けます。
そして、小売電気事業者は支払われた電気料金から送配電網を使用した費用を「託送料金」として送配電事業者に支払われるしくみのようです。

このように私たちが支払う電気料金の内訳は、「発電量+託送料金+営繕費+利潤」ということになります
この内訳の「託送料金」の割合は、家庭向け電気料金の30~40%程といわれているそうです。
送配電に関わるメンテナンスや減価償却費用、人件費などに充てられるということですね。

この「託送料金」は、送配電の維持費用ですから消費者からみれば必要経費として納得しますが・・・。

 

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今年10月、託送料金に福島第一原発事故の賠償金と廃炉費用を上乗せするしくみが始まりました。

原発事故の賠償金?、廃炉費用の負担? なぜ私たち電力消費者が支払わなければならないの?
大きな疑問であり問題です。

 

こうした中、「eシフト」(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)は、消費者庁と内閣府消費者委員会に「賠償金・廃炉円滑化負担金の託送料金への参入に関する要請」をしました。

「eシフト」とは、福島第一原発事故を契機に脱原発と自然エネルギーを中心とした持続可能なエネルギー政策を実現させることを決意した団体・個人の集まりです。
「eシフト」HPより

この市民団体の要請は、
「本来東京電力および原子力事業者が責任をとり、負担すべき費用を消費者が負担するしくみで大きな問題があります」
と指摘しています。
上乗せは見直すべきであり、消費者負担がなければ支えられない原子力事業自体を見直すべきなどを求めています。

なるほど確かにそのとおりだと思います。

又、同じように、新電力会社の「グリーンコープでんき」(福岡市)が、国を相手取って託送料金認可取り消しを求める訴訟を福岡地方裁判所に起こしました。
この訴訟によれば、
「賠償負担金や廃炉円滑化負担金は、送配電事業を営むために必要な費用ではなく、電気事業法でいう『能率的な経営の下における適正な原価』に該当しない」
というもので、電気事業法に存在しないことを無理やりこじつけ的に施行しようとしています。

 

このような託送料金に原発賠償金や廃炉費用負担に関して、「FoE Japan」(国際環境NGO)もその問題を指摘しています。
※FoE Japan:地球規模での環境問題に取り組む団体

本来、東京電力及び原子力事業者が責任をとり負担すべき費用を消費者が負担するというしくみで、大きな問題があります。
FoE Japanサイト

 

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賠償負担金:事故前に確保されておくべきであった賠償への備えの不足分の一部2.4兆円が、2020年以降託送料金で回収されることになった。年間約600億円程度が、40年間にわたって回収される。
FoE Japanサイト

 

電力小売自由化によって自然エネルギーを利用した発電事業が各地で起こなわれています。
こうした事業者にとっては自分たちで発電しているにも関わらず、送配電網を利用することで原発賠償や廃炉費用負担をしなければならない疑問や矛盾があると思います。
大手電力会社の発電利用に直接関わらない自然エネルギー事業者にとっては当然のことと思います。

 

福島第一原発事故の補償費用と廃炉費用は、東京電力と原子力事業者が負担すべきものではないでしょうか。
私たちが知らないところでこのような負担問題があります。

原発事故から10年経った今でもこうした補償や廃炉関わる問題が山積しています。
更に、原発処理水の海洋放出においても、政府は薄めて海に流す方向で進めています。
このような行為はようやく落ち着いてきた福島の水産業界に大きな影響を及ぼし、風評被害など社会的影響が懸念されます。

メディアはこのような状況をしっかり報道し追及すべきだと思います。
国会においてもこの問題が審議されましたが、それを推進する政府与党の数の力で一蹴されてしまっているのが現実です。
このことは「託送料金」問題以外でも数多くの審議がないがしろにされていることに注視しなければならないと思います。

コロナ禍での特別定額給付金の支給やGoToキャンペーンの中止・延期に至った経緯は、世論の大きな力によるものでした。
同様にこうした原発問題においても国民の声・世論の力で方向転換していくことが大事なことだと思います。

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