環境問題と原発 (1)

地球温暖化への対応

現在、私たちが住む地球は、その環境保全と自然エネルギーへの対応が大きな課題となっています。地球温暖化の原因となる指標として温室効果ガス(主にCO2)の排出量があります。世界のCO2の排出量は、1990年の196億tから2012年の345億tへ、約1.7倍増えています。                                     アメリカと中国の2国だけで世界の温室効果ガス排出の4割以上を占めています。            先日11月12日に北京で行われた米中会談では、                                              温室効果ガス削減の新たな目標で合意した。米国は2025年までの05年比で同ガスを26~28%減らすと公表、中国は30年頃までを二酸化炭素(CO2)の排出がピークとし、国内の消費エネルギーに占める化石燃料以外の比率を20%とする目標を掲げた。(朝日新聞)

温室効果ガス排出量

温室効果ガス排出量は、人口の増加と経済成長に比例して増加してきました。特に石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料を採掘してエネルギーや多様な用途に転換する石油産業が世界経済を主導してきました。最近の企業の総収入ランキングでは、2位~6位までが全て石油産業であることに驚きます。現在の私たちの生活に欠かせない多くの石油製品がありますが、あまりにも化石燃料に依存してきたのではないかと思います。        そういう意味で自然エネルギーへの転換や資源の再利用は大きな課題でもあります。   私たちの日々の生活の中では、ゴミの分別、詰め替え、買い物袋持参などの消費行動が求められ、企業においてはエコカーの生産とその需要の拡大、太陽光を利用した発電システムは、住宅をはじめ産業用や公共施設などでの活用と導入がすすんでいます。

世界の最終エネルギー消費における割合をみると、化石燃料が78.2%、自然エネルギーは19%、原子力は2.8%であった。自然エネルギーの世界的需要は増加し続けている。化石燃料消費による温暖化を防止し、資源の枯渇やエネルギー価格の不安定要素を考えるなら、自給自足できる自然エネルギーは魅力ある安定的に確保できる市場である。2012年末における世界の自然エネルギー発電総容量は14億7000万kwを越え、2011年末から8.5%上昇した。世界全体では、風力発電が39%を占め、水力発電が約26%、太陽光発電が約26%を占めた。                                                                EUの自然エネルギー発電の消費量は高く、世界の自然エネルギー発電容量の約44%を占めている。・・・EUの優れたCO2削減実績と政策的優位性を科学的に裏付けるものである。 足立辰雄「原発・環境問題と企業責任」

原子力発電(原発)は必要なのか?

福島原発事故から3年以上も経過しています。いまだに14万人もの方々が避難生活を強いられ、震災関連死が地震・津波の直接被害で亡くなった方を上回るなど、先の見えない生活が続いています。そうした中、先日の川内原発をはじめとして再稼働の動きが目立ってきています。                                   今年、毎日新聞が行った全国世論調査では、再稼働に反対する回答が60.2%、賛成31.6%だったようです。この数値を見る限り過半数の方が反対の意志を表明しています。

日本の高度経済成長期を支えたエネルギーとしてその恩恵を受けてきた実績はあります。   原子力発電の論議は、化石燃料消費だけに頼ることなく環境問題にも対応したエネルギーとして「平和利用」「安全神話」という四文字熟語がその度登場してきました。                しかし、東日本大震災を境にこの熟語は大きく崩れることになりました。そして、今回の原発事故は、原子力発電そのものを問う問題として浮上してきています。                 今進められている再稼働は安全性だけに焦点が当たっています。使用済み核燃料の処理問題がいまだ解決されないままの再稼働です。又、稼働しても膨大な費用がかかることも指摘されています。更に現在、火力発電を動かすとともに原発を維持しています。原発の場合、動かさなくても燃料の冷却費用として運転時の3分の2以上もの費用がかかり、額は1兆円以上もかかるといわれています。

原発再稼働はその運転での安全性と費用を譲歩したとしても、使用済み核燃料の処理問題や自然災害の発生を常に抱えながらのものとなります。現在、世界の最終エネルギーの原子力の割合は2.8%です。一方、再生持続可能な自然エネルギーは増加し今や世界の流れになっています。                                日本の自然エネルギーの世界全体の発電シェアは3.8%を占めるに過ぎない。原子力発電に固執したエネルギー政策が自然エネルギーの開発と普及の足枷になったことは疑いない(同著書)

なぜ原発再稼働に固執するのか?

原発立地県として初めて、鹿児島県の伊藤祐一郎知事と県議会が7日、九州電力川内原発の再稼働に同意した。原発事故への不安が根強い中、伊藤知事は国の新たな規制基準とそれに基づく九電の対策を高く評価し、「もう命の問題なんか発生しない」と明言。しかし、再稼働に反対する県民は、「安全神話の復活だ」と猛反発している。両社の主張は相いれないまま、知事判断で再稼働の地元手続きは完了した。              知事が手続きを急いだ背景には、立地自治体以外に再稼働判断への関与を求める声の広がりや、来春の統一選への影響を懸念した思惑が透けてみえる。 11月8日毎日新聞

福島の原発事故の教訓はいったい何だったんだろうかと思います。「もう命の問題・・」という県知事の発言には驚きました。再稼働の理由が、すべてがこの「安全性」の一点に絞られていますが、これからも自然災害が発生する可能性がある以上、安全性の保障は全くありません。又、「再稼働判断への関与を求める声」とはいったいどのような理由での声なのでしょうか。その裏にはいろいろな損得勘定や利権も見え隠れしているように思われます。

放射能は目に見えない脅威

先日、再稼働について川内市民にインタビューするTV番組がありました。若いお母さんが子どもを抱えて賛成する姿が目に留まりました。                  内部被ばくは目に見えない放射性物質の粒を呼吸とともに肺から吸い込んだり、母乳や牛乳・水や食物とともに消化器から取り込んで被ばくすることである(晩発性障害)。内部被ばくの影響は数年後に顕在化する。被ばくした若い人ほど晩発性障害がでやすい。晩発性障害には、白血病、甲状腺がん、女性乳がん、肺がんなどがある。 (同著書)          

福島原発事故が起きてからのこの3 年間に、                      甲状腺がんやその疑いがあると判断されたのは58人・・・。甲状腺がんにかかった子どもには自覚症状がないため、触診や超音波検査で早期に発見しなければならない。   チェルノブイリの原発事故では小児の血液患者が4年後に9倍、10年後に20倍に増加したように、今後、内部被ばくを主因とする心臓病や白血病などの血液疾患が原発事故被災地を中心に増加するであろう。 (同著書)

では、原発事故が起こらなく、原子力発電所が近くにあるだけの場合の被ばくはどうなのでしょうか。アメリカの原子力発電所のある6州での乳幼児死亡率の調査では、     核実験(事故)がなかった場合、本来の減少傾向をたどらず相対的に高いレベルを維持した。原因は原子力発電所から放出されている放射性物質(低レベル放射線)以外に考えられないと断定している。 (同著書)

鹿児島県川内市は、福島県からかなり離れて直接的な事故の影響はありませんでした。  福島原発事故の放射能汚染は、東北地方はもとより関東・中部エリアまで広がりました。 あれから3年以上経ち、直接的な影響がなかった地域では、東日本地域に比べその認識度のレベルが違うのでしょうか。事故が起こらなくても近くにあるだけで常に危険な環境にあることは間違いありません。                                                         原子力発電稼働にかかる運転費用や使用済み核燃料処理問題、いつ起きるかわからない自然災害に対応した危険な安全性を抱えています。一方で、再生可能な自然エネルギーの台頭とその拡大ができる環境が整ってきています。将来的なことを考えればやはり後者を選択する必要性に納得がいきます。

 

原子力発電所の建設に伴う補助金(電源3法交付金)、建設や稼働に関わる大企業、原子力が温暖化対策に貢献するという電力会社の説明がほんとうにそうなのか?などについて今後考えていきたいと思います。

「環境問題と原発」つづく