働き方と税制

働き方の多様化=リスク化?

非正規雇用とワーキングプア

 

コロナウイルスの感染が日を追うごとに拡大してきています。
テレビをつければ、「あ~また感染が増えている!」と連日のようにその報道が目に飛び込んできます。
こうした危機的な状況の中、本来国が果たすべき役割がすべて後手にまわっていることに多くの国民が不安・不満をつのらせているのではないでしょうか。

「帰国者、接触者外来」を持つ医療機関以外でも、発熱や疑いを持つ人たちに対しても民間医療機関で診察できるようにすることが急務なのではないでしょうか。
誰でもがすぐに診察やPCR検査ができることで感染拡大を防ぎ、初期段階での手当が行われることで重度化が予防できるようになりると思います。

今日の報道でも、同程度の感染被害が起っている韓国などに比べても極端にその対策が遅れていることに驚きを感じます。
更に、このような後手にまわることで経済への打撃も大きくなってきているようです。
外国人観光客を受け入れているホテルをはじめ、各観光地への客が激減しています。

こうした国の緊急事態に対して、健康保険利用はもちろん検査費用、診察・入院費用、又、病院への補助など無償化・低額化対策支援を行うことが、国としての役割でもあると思います。
まさにこうした時にこそ財政出動すべきなのではないでしょうか。

今年は東京オリンピックをひかえて、海外から多くの選手やその関係者と観戦者が来日します。
日本は安全だ、安心して観戦や旅行ができることを強くアピールする上でも積極的な対応が必要だと思います。

私たちの大切な税金を使って1機100億円以上もするF35戦闘機を105機買うの? とんでもないことです!
こうした事態への対応をはじめ、自然災害の被災者やその対策費用、更には国民の暮らしを守ることにその財源を使うことが大事ではないでしょうか。

 

先日、定期的に開催されているセミナー「文庫カフェの会」に参加してきました。
今回は、2020年度の予算に関連して「今後の税制について」がテーマの講演でした。

以前のブログでは「社会保障の財源」と題して、消費税増税と法人税について記しました。
今回は、”税のあり方と働き方” について考えてみたいと思います。

私たち60代シニアの世代は、若い頃にオイルショック、バブル、リーマンショックなどの経験を経てきましたが、正社員として働く機会があり一定の収入が保障されていました。
しかし、雇用緩和政策や企業の収益悪化に伴う人件費の削減から非正規化が進んできました。
本来であれば収益が回復すればから正規化への道が開かれそうですが、企業はより利潤を拡大する方向をとり非正規の更なる拡大につながりました。
これは、派遣法によって企業の利益をより拡大できる雇用政策が確立されてきました。
一度非正規雇用になれば二度と正規社員にはなれないしくみが完成してきたとも言えます。

 

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こうした状況の中、どのようなことが起きるのでしょうか?
非正規雇用は、厚生年金はありません。又、国民年金保険料や健康保険料などの公的保険は全額自己負担になるため、毎月の負担増をはじめ、将来の老後生活においても全く安心できません。

正規雇用者の平均年収は486万円、非正規雇用者は172万円 (平成28年 国税庁民間給与実態調査)
この場合、非正規雇用者は派遣社員や契約社員だけでなく、パートタイマーも含まれています。
ではフルタイムに近い男性の場合では227万円だそうです。

 

「ワーキングプア」という言葉を最近よく耳にします。

ワーキングプアとは、「フルタイムで働いているのに、最低限の生活の維持が難しい状況にある人」を指す。
非正規雇用者として働いている人で年収が200万円以下の人。

 

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年収200万円以下の人たちは、すでに1000万人を超えているのが実態のようです。
そのほとんどが非正規雇用者に当たるとも言えます。

年収200万円といえば月額約17万円ですが、これに社会保険料や諸税、住宅費用(アパート代など)の支出を考えれば10万円そこそこの生活費になってしまいます。
生活保護レベル以下の状況が浮かび上がってきます。
1日8時間働いても生活できない社会というものを真剣に考えなければいけないのではないでしょうか。

こうした状況が生まれてきたことで、親と同居してある程度の生活を維持するために「パラサイト・シングル」が増加してきた背景があるようです。
(パラサイトとは「寄生」という意味)

 

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今回のセミナー「今後の税制について」の中で、政府税制調査会が出した「経済社会の構造変化を踏まえた令和時代の税制のあり方」にこのようなことが書かれていました。

1.人口減少・少子高齢化
人口減少・少子高齢化は今後も一層進行し厳しさを増す。社会保障の諸制度やそれを支える負担を見直していく必要。

2.働き方やライフスタイルの多様化
非正規雇用やフリーランスの拡大など働き方が多様化。多くの人々が育児や介護、転職や学び直しを含む多様な人生を送るようになり、ライフコースも多様化。特定の働き方を前提とせず格差固定化につながらないよう、社会の諸制度を見直していく必要。

ざっと読んだ限りでは、社会保障制度の見直しや働き方の多様化への対応など諸制度を見直していく方向の必要性があるとしていますが・・・。
しかし、その中身は問題のすり替えと無責任な対応で全てを国民負担に転嫁する内容です。

少子高齢化による社会保障給付費の増大対策は、前回ブログで何度も述べたように、全て消費税増税による国民負担を推し進めるものです。
又、「働き方の多様化」は自然に起きてきたものではなく、雇用制度の構造変化(非正規雇用推進による企業利益の拡大)を作りあげてきたものです。
もちろん、自分の手腕で自営業として起業する若者もいますが、大半は正社員になれないためにフリーランスにならざるをえないのが現実ではないでしょうか。

更に、「特定の働き方」は、”多様化=リスク化” を意味し、各種保険制度や労働規制(労働基準法)の枠外に置くことですべて自己責任扱いにする狙いもあると思います。
これは「働き方改革」の「高度プロフェショナル制度」が一例です。
一定の年収は保障されても、労働時間規制はなく、時間外を含む働いた時間に応じた賃金支払い義務がないなど長時間労働を促進し、肯定化する制度で健康面に大きく影響するものです。

「格差固定化につながらない」のではなく、逆に ”格差固定化につながるもの” であり、「社会の諸制度の見直し」は、更にそれらを促進するもにつながっていく税制の考え方です。

 

結果、消費税増税を推し進め、財界・経済界の要請に基づき法人税を引き下げ続けていく税制のあり方のようです。
こうした状況の中、大企業を中心に企業の内部留保は450兆円に達しています。
これはまさに人件費の削減(非正規雇用化)と ”払うべき税金を払っていない” ことで生み出されたものです。

政府は、少子高齢化によって高齢者の社会保障費が拡大し財政が厳しくなることを言い続けています。そして、現役世代や子育て世代への負担が大きくなることを盛んに宣伝しています。
これは、世代間格差を強調して、そちらに目を向けさせようとする意図があります。

現在のこのような働き方は、こうした税制と深く関わっていると思います。
そういう意味で、政府や財界・経済界の本来の狙いに目を向けていく必要があるのではないでしょうか。

 

今回のコロナウイルスの感染拡大とその対応なども含め、私たちの暮らしは常に政治と関わりを持っています。

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