社会福祉の現場から

介護・保育にたずさわる職場環境

働く人たちの生活基盤の充実を

 

消費税10%増税から2ケ月経ちました。
経済産業省の商業動態統計によると、卸売りと小売りを合わせた商業販売額は10月、前年同月を9.1%下回ったようです。
増税前の「駆け込み需要」の反動減と見られていますが、時系列でみると昨年12月から今年8月にかけて9ケ月連続で前年割れが続いています。
国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費の低迷が続いていることは深刻な問題です。

消費税増税は「社会保障の拡充」とうたわれていますが、現実はその逆が進行しているようです。

財務省の諮問機関である財政制度審議会が提出した2020年度答申では、

■来年度、公的年金を削減するマクロ経済スライドが発動する見通し
■後期高齢者医療制度では、現在1割である75歳以上の医療費負担について2割に引き上げる提案
■介護の分野では、要介護1、2の人を保険から外すことが提案
■子育て分野では、保育公定価格の削減に向けた検討(別途資料)
・・・・。

更に注目すべき点は、消費税増税を「長い道のりの一里塚に過ぎない」として、「消費税率 10%超への引き上げも有力な選択肢の一つ」としています。

皆さん、どのように思われますか?
軽減税率やポイント還元制度(制度加盟店が少ない)とはいっても、税負担は今まで以上になっていることは変わりません。
そして、「消費税は社会保障のため」と言われながら、現実はここ7年間で合計4.3兆円もの負担増と給付削減が行われています。
つまり、税収を増やすための口実として「社会保障のため」(国民の目をそらす)と言って、実際にやっていることは削減なんです。

 

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こうした中、定期的に出席している「文庫カフェ・セミナー」に行ってきました。
このセミナーは、その時々の社会・経済問題を題材にあげて、関係する専門家や知識人、実際にたずさわる方々の講演会です。
今回のテーマは、「社会福祉の現場からの声」ということで、連合の総合政策推進局長からお話がありました。
内容は、老人ホーム・介護施設・保育現場にたずさわる人たちの実態についてでした。

私の母は現在グループホーム(認知症)に入所しています。
又、義父はサ高住(サービス付き高齢者住宅)、義母は特養(特別養護老人ホーム)に入所しています。
こうした施設のことについては、一般的に受ける側(入所する側)からの視点が主に話題になります。
それは、施設のシステムやサービス、料金など様々です。

しかし、そこで働く人たちの職場環境や労働条件などについては、あまりよく知られていないのではないでしょうか。
例えば、母の様子を見に定期的に施設を訪れた時、「あれ、今まで担当していた○○さんはいないの?」の問いに、「あの方は先日辞めました」というように頻繁に離職が目立つことに気づきます。

 

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特別養護老人ホームの人員と給与の現状

 

少子高齢化が拡大する中、「介護の社会化」ということでこうした老人介護施設が必要とされています。
同時にその受け皿としての施設で働く人たちのことについても考えてみることも大事なことではないでしょうか。
実際の現場では様々なことが起きているというお話がありました。

【人員(スタッフ)に関して】
■募集しても応募がない
■介護系の学校を卒業しても一般企業に就職する現状
■介護の質向上のための研修増加による勤務体制の負荷
■職員の高齢化

【給与に関して】
■給与水準が低い
■定期昇給が少ない

給与は、全産業平均に対して月額8万円少ないそうです。
又、保育の現場においても介護職員と同じような環境のようです。

 

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介護職員の平均給与額と保育職員の公定価格の算出に使用される人件費額
保育公定価格の削減も検討されている。

 

大切な親が施設において充実した生活が出来ているか?、大事な子どもが保育所で元気に過ごしているか?、私たちにとっては一番の関心事ではないでしょうか。
そして、そうした施設で働く人たちの生活自体もより安定したものでなければ、安心して親や子を任せることはできないと思います。

いつ訪れても施設内は清潔に保たれている、職員が笑顔で生き生きと働いている、施設内はいつも活気づいている・・・。
こうした状況こそ私たちにとっては一番の安心ではないでしょうか。
そこで働く人たちの生活基盤と労働条件が安定していることも社会保障制度の大事な要素だと思いました。

これからの社会は少子高齢化によって社会保障費が増大していきます。
社会保障財源は、消費税増税によって成り立つものではありません。
全ての税収入(歳入)から必要な財源を再配分(歳出)して充てられるものです。
国家財政(税収)が少ない、足りないから増税しなければならないということを、「社会保障拡充」という名目で消費税を増税しているに過ぎません。

税政策を変えることで税収入は確保できます。
歳出の再配分を見直すことで社会保障財源は十分に確保できます。
このことについては、すでに何度かブログで記述しているので詳細についてはコメントしませんが、財界・大企業・富裕層重視の政策から国民主体の政策転換することで可能だと思います。

 

社会保障制度は
■社会保険(年金・医療・介護)
■社会福祉(障害者、母子家庭など社会生活をする上でハンディを負っている国民への公的支援)
■公的扶助(最低限の生活を保護し、自立を助けようとする制度)
■保険医療・講習衛生(健康維持のための予防、衛生のための制度)

そして、こうした制度を支えるために従事する人たちの働く基盤を安定させることも大きな課題だと思います。
講演の中で、「社会保障給付を単に抑制すれば現場に歪みが広がる」と話されていました。

まさに福祉現場の最前線で働く人たちがあってこその福祉だと思いました。

2 thoughts on “社会福祉の現場から

    1. 紀州のカモシカさん

      お久しぶりですね。
      お元気でお過ごしでしょうか。

      少子高齢化の時代を迎え、本当にこうした社会保障制度が重要視されてきます。
      高齢者に限らず多くの世代の人たちが関心を抱いていると思います。
      「国の制度」は改善できるはずなのに、そうしない今の政府に大きな疑問があります。
      黙っていれば肯定とみなされます。
      そうならないためにも少しでも出来る範囲で声をあげていくことが大事なことだと思います。

      コメントありがとうございました。

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