年金加入期間延長

年金加入期間5年延長案

65歳までの45年間保険料を払い続けるの?

厚生労働省は10月1日、国民年金(基礎年金)の加入期間(現行20歳から60歳)を5年延長し、65歳までの45年間とする案を社会保障審議会年金部会に示し、大筋了承されたようです。(毎日新聞、日本経済新聞)                          新たに5年間に負担することになる保険料は単純計算で年18万円~20万円にもなり、支給開始年齢の引き上げ(65歳)に続けて、保険料でも大幅な負担を強いるものです。

厚生労働省は、支給開始年齢を引き上げておきながら「高齢者の就業意欲が非常に高い」などとして延長は可能だとしました。はたしてそうでしょうか?               特にリーマンショック以降、労働者の賃金は抑えられ、企業は自己防衛策として内部留保を蓄えています。

資本金10億円以上の大企業が保有する内部留保が、前年度比で5兆円増の272兆円(2012年)に達する。大企業が内部留保を着実に積み増す一方で、民間企業労働者の年間平均賃金は、賃金のピーク時に比べ約60万円も減っている。(労働総研)

昔に比べ医療技術も発展し平均寿命も延び、健康維持への意識と行動も進む中、たしかに60歳を過ぎても就業意欲は維持されています。しかし、一方で前述した労働者賃金の抑制や公的年金の削減、更に支給開始年齢の引き上げが続き、退職後の生活資金に不安が拡大していくことで就業せざるをえないというのが実態なのではないかと思います。          「定年退職後も働かなくては喰っていけない」という実態が、「就業意欲が非常に高い」ということに置き換えられているのではないでしょうか。けっして純粋な就業意欲を否定するつもりはありません。働くことで健康が維持され、仕事の中で目標を持つことで生きがいにもつながっていることも事実です。                                             定年退職後は、ゆっくりしたい、やりたかったことや趣味に没頭したい、妻や家族と一緒に旅行に出かけたいなどたくさんの夢や希望が頭をよぎったと思います。しかし、現実はまだ働き続けていかなければ老後が不安ということが大半だと思います

私たちの世代は、まだいいかもしれませんが、企業側の都合による給与の抑制・契約社員や非正規雇用化が拡大する中、国民年金の加入期間延長は、更に深刻な問題として捉えていく必要があると感じます。

健康寿命と年金を考える

厚生労働省は更に、年金の給付水準が2043年には50.6%に落ち込むと指摘。加入期間を5年延長することで給付水準を57.1%に改善できるとしている。             ※給付水準:現役世代の平均収入に対する年金の割合、現在62.7%)          60歳から受け取る場合は金額は低く、65歳から70歳まで受け取りを選択できるとも。遅く受け取る方が、1ケ月の受け取り金額が多くなるとされるだろうが、総額として年金原資を抑え込むことが目的であることは明白です。

昨年4月、60歳定年退職者の希望者全員を65歳まで雇うことが企業に義務付けられました。このことは、国政の年金財源と関係して近い将来65歳定年制につなげていくことになると思います。そして更に65歳~70歳までの継続雇用も充分考えられるのではないでしょうか。年金支給を遅らせ、減らせ、保険料支払い期間を延ばすことで、いかに国民に年金支給をさせないかということがアリアリと感じます。

日本人の健康寿命は男性で約70歳、女性で74歳だそうです。そして、平均寿命は男性で80歳、女性で86歳です。男性の場合、仮に65歳まで働き続けるとしたら健康寿命まで5年しかありません。又、70歳まで働けば寿命まで10年しかありません。その10年は何らかの介助が必要とされる年代です。自分の足で動き回ることさえできなくなる年代です。  もちろん個人差はありますが、ひとつの指標として捉え考えなければならないと思います。

見方を変えれば考え方も変わる

年金財源の減少による給付水準の落ち込みをいかに上げていくかという課題があります。 その施策として前述したような「支給年齢の引き上げ、支給金額の削減、保険料納付期間の延長」などありますが、全て国民に負担を強いるもので後退的な政策だと思います。  極端な言い方ですが、お金がないからガマンしよう、お金が足りないから減額しようという施策は小学生でもできます。                           国家財政の歳入は、利益が出て儲かっているところからしっかり税金を取り(安易な法人実効税率の引き下げや証券優遇税制などしないで)、これから必要とされていく社会保障(年金、高齢者医療、介護保険など)に当てていくことがが本来の政策ではないかと思います。                                     ※法人税減税 年間1兆2000億、証券優遇税制延長5000億、原発推進4000億など

日本経済の活性化対策として、法人税減税や証券優遇税制の延長が進められています。  このことで株価が上がり好景気が演出され、私たち庶民の生活が向上するか?はなはだ疑問です。優遇された大企業や一部投資家だけの利益だけではないでしょうか。             企業が活性化することで賃金が上がるか?正社員が増えるか?過去の数値だけみても明らかです。内部留保が拡大していくだけだと思います。

今後更に高齢化社会がすすむ中、こうした政策ではたして良いのかと感じます。年金問題ひとつとってみても政治・経済と深く関係しています。見方を変えれば考え方も変わってくる今日この頃です。