税収のあり方と使い方

金融庁の金融審議会報告

投資など「自助」を勧める内容!?

 

人生100年時代と言われる中、年金・医療・介護制度などの社会保障問題が大きな課題としてあります。
少子高齢化社会になりつつある今、しっかりとした対応を図っていく必要がありますが、安易な対策を提示したりする考えが目に付きます。

今回、金融庁の「高齢化社会における資産形成・管理」の報告書もその典型と言ってもいいのではないでしょうか。
この報告書は、老後の生活には年金だけでは足りず2千万円必要だとして、若い頃からの投資による資産形成を国民に求める内容のものでした。
年金暮らしの高齢夫婦の生活費は、平均で月5万5千円ほど足りない。その分は貯金などを取り崩すことになる。老後が20年、30年続くとすれば、単純計算で1300万~2千万円が必要だとして若い頃からの長期の積み立て投資、年を取ってからもできるだけ働き続けたりすることで自らの「資産寿命」を延ばすことを勧める報告書でした。

こうした報告に対してマスコミ各社は批判の記事をあげています。

 

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報告書は、現役期・退職前後・老後の高齢期に分け、資産形成や運用などの自助に取り組む必要性を国民に訴えている。
今の60歳の4人に1人は95歳まで生きる見込み。年金や退職金だけだと寿命より先に蓄えが尽きる恐れがある・・・。
金融庁は報告書を踏まえ、今は選択肢が少ない長期・分散・積み立て投資向けの金融商品の開発を金融機関に促す。
6/4付 朝日新聞

簡単にいえば、リスクのある金融投資で資産を増やしたらどうか、という報告書なんですね。

年金だけでは老後の資金を賄えず、95歳まで生きるには夫婦で2千万円の蓄えが必要になると試算。
現役期とリタイア期、高齢期といった人生の段階別に資産運用、管理の心構えを説いた。少子高齢化による公的年金制度の限界を政府自ら認め、国民の自助努力を求めた形だ。
6/4付 東京新聞

 

更にテレビのワイドショーなどでも取り上げられ批判が集中していました。

 

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テレビ番組の報道では、
金融庁としては、支援制度を使って投資する人を増やしたいという狙いがあるのでは。
金融審議会のメンバーは、みんな金融のプロなので、本来、年金や老後について話し合うようなメンバー構成ではない。

 

確かにこうした「自助」へのすり替えは容認できるものではありませんが、根本的な問題がいつも曖昧になってしまっていることに疑問を感じます。
それは、税収入のあり方と使い方だと強く思います。(歳入と歳出)
取るべきところからしっかり税収を確保すること。無駄な歳出を減らしていくこと。こうした税のあり方が全く見直されていない点に根本的な問題があるのではないでしょうか。

政治というものは、いったいどうあるべきものなのでしょうか。
国民生活の安定と安心を第一に考えて、国民に負担を強いらない具体的な政策を打ち出し実行していくものだと思います。
少子高齢化による社会保障費の増大から国家財政の危機を訴えることに集中し、国民の理解を得ようとする行為はまさに政治そのものを放棄しているのではないでしょうか。

「社会保障の財源が足りない、だから消費税増税をするしかないのか?・・・」
「将来年金は先細りしてくる。だから自己防衛のために今から金融投資をやる必要性があるのか」
「老後資金が足りない。70歳、いや75歳まで働き続けなければならないのか・・」

”少子高齢化” という言葉から、政治家をはじめマスメディアも将来に対して不安を掻き立てるような声や記事があちこちから聞こえてきます。
こうした現状に対して私たち国民もまた「そうなんだよな~」と迎合してしまう風潮さえも見受けられます。

確かにこうした現実と将来を見据えれば、様々な問題が起きてくることも事実であり、その対策も緊急課題として必要になってくるものだと思います。
しかし、こうしたことが全て「自助」(税負担、自己防衛、働き続けることなど)でなければならないのか? と大きな疑問を持ちます。

私たち国民は、様々な税負担をしています。
住民税、所得税、消費税、相続税、自動車税、酒税、たばこ税、復興特別所得税・・・。
と同時に社会保険料(国民健康保険料、国民年金保険料、介護保険料など)も拡大の一途をたどっています。

一般家庭における家計収入や支出の計算は、どの家庭でも行われていると思います。
収入が減れば支出を抑える、当たり前のことです。必要な支出は確保して、できるだけ切り詰めた生活をするなど・・・。
国家財政のあり方においてもまったく同じものではないでしょうか。

私たちが納付する大事な税金が、本当に国民にとって有効に使われているか検証されないままに無駄な支出が垂れ流しされているのではないでしょうか。

1機100億円を超える米国製戦闘機F135を147機購入?軽く1兆円を超える支出です。本当に必要なことなんでしょうか。
原発の放射能汚染水処理にかかる費用は年間1兆円かかり、更に核のゴミ処理費用も税金が使われている現実など・・・。例を挙げればキリがないほど無駄な支出があります。

又、歳入についても、現在所得税は累進課税ですが、所得税負担率は1億円をピークに低くなっているのが現状です。これは莫大な所得にあたる株式などの譲渡にかかる税率が15%に抑えられているからです。
更に、法人実効税率は現在29.7%と低く抑えられ、このため大企業を中心とした内部留保は400兆円超になっています。
本来税収入を確保すべきところから取っていないことが大きな問題だと思います。

こうした税制のあり方をとってみても見直されるべき点がたくさんあるのではないでしょうか。

 

「自助」ではなく「税のあり方」の見直しを

 

このような中、様々な税金を納付している国民に対して、更に「自助」?、それもリスクのある金融投資を勧める?
”開いた口が塞がらない” という言葉はこういう場合に使われるのでしょう。

「少子高齢化社会」と言うと、その後にくる現実は「社会保障費の増大」と言われます。
そして、「社会保障の財源調達」と言えば、その後にくる手段は「消費税増税」ときます。

はたしてそうなんでしょうか?、それでいいんでしょうか?

今年3月、「税制セミナー」に参加してきました。
主題は「平成31年度税制改正の概要(国税)」で、その中の主な内容は、”消費税増税” に関するものでした。
講師は、財務省主税局審議官の方でした。

 
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セミナーの詳細については省きますが、消費税増税を国民に受け入れてもらうための最も有効な説明が、「社会保障の財源調達」に終始していた点に驚きました。
少子高齢化社会になれば社会保障費の増大は免れない、その財源確保ためには消費税増税を受け入れるしかないでしょ」というものです。

 
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「社会保障の財源を調達する手段としてふさわしい税金」?

この説明を受けて、たいへんな違和感と疑問が起きました。
本来、社会保障費の財源は歳入全体の中から対応されるもので、消費税収から歳出されるものではありません。
所得税、法人税、消費税、その他税収を含めた一般会計税収計(歳入計)から社会保障費がどれだけ必要なのかというところから歳出されるべきものです。

この点を審議官に質問してみました。
「おっしゃるとおりです。そのとおりです」と返答されました。

ではなぜ、こうした表現になっているかというと、増税するために国民に説明しやすく説得性があるからなんです。
この点について審議官はハッキリ言っていませんでしたが。(財務省官僚という立場から言えない?)

株式譲渡税率と法人税率の引き上げについても質問してみました。
審議官は、税率の見直しによって税収確保はできると返答されていました。

所得税の累進課税に沿う税率の見直し(所得1億円を超える税率など)、法人税の引き上げなどによって十分税収確保ができます。
又、国民が望んでいないものや無駄な支出を抑えることで、社会保障費増の分はおつりがくるくらいの財源確保ができるのではないでしょうか。

 

老後の生活には年金だけでは足りず2千万円必要?
資産寿命を延ばすためにリスクのある投資をしなさい?
年を取っても働き続けなさい?

そんなことをしなくても、別の財源を確保する方法はあるんじゃないんですか。
社会保障4経費(子ども・子育て、医療、介護、年金)の充実に2.8兆円必要ならば、税収の見直しとその使い方によって十分確保できると思いますよ。

様々な税金を払っている国民に対して、更に「自助」を求める前に、政府・各省庁のお役人の皆さん、本来やるべき仕事をしてほしいと思います。

4 thoughts on “税収のあり方と使い方

  1. 常々、政府に提言をする審議会・懇談会・諮問会議等のメンバーが有識者と紹介されますが、誰
    が人選するのか疑問でした。
    有識者の中にも相反する意見をお持ちの方がいると思いますが、政府に肯定的な方しか依頼され
    ないのではと想像していました。

    それが今回、自分たちに都合の悪い内容になってしまい、財務大臣が提言を受け取らないという
    ことは、忖度しない委員の提言なんて求めていないということが、はっきりしましたね。

    政府が目論む政策を後押しするメンバーにアリバイ作りをさせて、いかにも世論であるかのよう
    に振る舞う姿は、高齢者を狙う詐欺集団のようにも感じます。

    いっそ、すーさんがメンバーになってくれたらと思えてなりません。
    でも今回の対応からすれば、庶民派のすーさんには声がかからないでしょうね。

    だからこそ、国民が身近な課題として受け留めるためにも、すーさんがキャンピングカーで諸国
    行脚をすることで、「現代版・黄門様」として、庶民の声を代弁してほしいものです。

    ブログ応援してま~す!

  2. Rockyさん

    面白いコメントありがとうございます(笑)

    >政府が目論む政策を後押し・・・世論であるかのように振舞う姿・・・
    全く同感です。
    こうした審議会そのものは、すでに決まっているストーリーに肉付けするような役割を持っているんでしょうね。
    但し、今回の場合は違ったようですが(笑)

    今まで何度か「財政セミナー」に参加してきましたが、財務省官僚の方々の財政再建策は、”消費税増税” の一点に絞られていることがよく分かりました。
    すでにそうしたロジックができているのでしょう。
    今回8%~10%ですが、その先の増税政策(10%以上)もすでにストーリーができているように思います。

    話は変わりますが、昨日カミサンと「伊吹山」に登ってきました。
    昨夜は岐阜市内の道の駅に車中泊して、今日明日の2日間は岐阜名古屋周辺のお城めぐりをする予定です。
    そして、16日は豊田市でトライアスロンが開催されるので、その大会に出場する予定です。
    週末は名古屋周辺ウロウロしてますよ(笑)

    1. Rockyさん

      情報ありがとうございます。
      昼(ランチ)は会場で済ませ、その後は静岡に向かう予定です。
      また機会があったら竹善料理楽しみたいと思います。

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