映画「家族はつらいよⅢ」

ユーモアの中にある社会風刺

 

先日、カミサンと二人で「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」を観に行ってきました。
封切された週末の混雑を避けて雨降る平日に出かけました。
映画館は空いているだろうと思っていましたが、これがなんとシニア層のおじさん、おばさん達が大勢来館していました。
早朝9:35からの上映で、終わるのがちょうどお昼ごろです。
皆さん考えることは同じなんですね(笑)

かつての渥美清主演の「男はつらいよ」シリーズを彷彿させるユーモアたっぷりのこの映画は、すでに3作目になります。
「男はつらいよ」では渥美清が全作主役でしたが、今回の「家族はつらいよ」はその時の作品(ストーリー)ごとに主役が変わる?ようです。
いったい主役は誰?というより、家族全員が主役なんですね。

監督の山田洋次らしいほのぼのとしたコメディは、観る側にとってなんとも気持ちが落ち着く映画だと思います。

 

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今までの作品では、それぞれ社会問題や社会風刺を取り入れた物語ということで、これも山田洋次監督らしい映画ではないかと思います。

■1作目 「熟年離婚」
■2作目 「無縁社会」「老人の運転事故」
■3作目 「家庭内の主婦の立場」「介護問題(認知症、徘徊)」

単なるコメディ映画かと思われがちですが、そんな社会問題と風刺を織り交ぜていることから観る側にとって考えさせられる映画でもあります。

そんな論評があるコラムに書かれていました。

映画的に盛り上がりを作り出しやすい刑事や探偵、官僚など。特殊な人間を主人公に置きはしない。
どこにでもいるような平均的な庶民を主人公にし、そこから見上げた「現代社会」を切り取るのが山田作品だ。

作品自体に強烈なメッセージ性はないにしても、庶民から見たリアルな社会は不条理として描かれることが多い。
社会、政治は我々庶民には何もしてくれない。それでも生きていく私たち庶民。
そんな風景を山田洋次は自身の作品で描き続けてきた。
ある映画サイトのコラムより

 

今回の3作目は、家庭内における主婦の立場に焦点が当てられていました。
世の男性陣にとっては、今までの自分自身の言動を振り返ってみたのではないでしょうか(笑)
「俺が稼いできている」「俺がお前たちを食わせている」などというとんでもない考えは許されるものではありません。
夫を支え、子どもを育て、更には親の介護なども含めれば、たいへんな労働ではないでしょうか。
それは、外に働きに出る夫の ”労働の価値” に匹敵するものでもあり、それ以上なのかもしれません。

 

この映画の第二作目もユーモアのあるコメディタッチの面白いストーリーでした。
以前、映画館で観ましたが、先日テレビで放映されていたのでもう一度観てみました。

二作目は、お父さん役(平田周造)の橋爪功が、学生時代の友人役(丸田吟平)の小林稔侍と再会する物語です。
映画の内容については省略しますが、年老いても働かなければ生きていけない一人暮らしの友人(小林稔侍)が橋爪功の自宅で突然亡くなるというストーリーでした。

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友人が亡くなり、あまりにも哀れな友人のことを想った橋爪功のセリフがとても印象的でした。

あいつが葬儀屋のたった一人の係員に見送られてあの世に旅立つなんてあまりにも哀れでな。
いったいあいつがどんな悪いことをしたっていうんだ。事業に失敗した、借金を背負い込んだ、だまされて連帯保証人になった・・・。
それが、それが一人であの世に旅立たなければいけないほどの罪なのか。
税金だって納めたし、事業で雇用を生み出したこともあるんだぞ。なんであいつが75を越した老人が、カンカン照りの中で汗をかきかき赤い棒を振り回さなければならないんだ。※工事現場の交通整理の仕事
死ぬまで働けというのか、この国は!

以前、NHKで「無縁社会」というタイトルで取り上げられた放送がありました。
家族、地域、社会などにおける人との絆が薄れ、孤立する老人が増えているという社会問題でした。
これから更に拡大していく高齢化社会に向けての課題を指摘するものでした。

もちろん映画の中では「無縁社会」という言葉やそれに類する表現は使われてはいませんが、結果として孤立してしまったことは単に自己責任だけではない問題が内在することを暗に示しているストーリーでした。
又、そのことだけに留まらず、国としての政策(社会保障制度など)に対する強烈なメッセージも込められていたと感じました。

コメディの中にも私たちの身の回りのことがいろいろ表現されていますね。
喜劇王チャップリンの映画を思い起こさせます。

 

第三作目の映画が終わってトイレに行きました。
トイレから出てきたカミサンが一言、
トイレの中で雑談していたおば様たちが、「ダンナに観せたいわよね~」と喋っていたそうです。

なるほど!

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