焼津グルメと小川港

志太地区の食文化

まぐろは「生」で食べる習慣

 

92歳になる母は、現在地元の老人介護施設「グループホーム」に入居しています。
そんな母の様子と通院も併せて入居以来定期的に施設を訪れることが日課になっています。

私の実家と母の施設は島田市ですが、近隣の藤枝市と焼津市を含めて志太地区と呼ばれています。
この志太地区は、東に高草山(日本坂峠)、西に牧之原台地(大井川)を挟んだエリアとして昔から共通した文化圏を形成しています。
こうした地域文化圏というのは、日本全国同じ県内であってもそのエリアごとに異なる文化が根付いているものです。
それは主に生活習慣であったり、方言や食などに顕著にあらわれたりします。
しかし、最近では各種情報や交通の便が盛んになったことで、こうした地域特有の文化というものが次第になくなりつつあります。

この志太地区には焼津があります。
焼津といえば、まぐろやかつおの陸揚げ漁港として全国的にも有名な港町です。
そんな港町が近くにあったことから、昔から魚をよく食べる食習慣があり、私も子どもの頃から親しんできました。
例えば、小学校の給食にクジラやイルカが献立として頻繁に出ていました。
今では何かと問題になりますが、当時としてはごく普通の給食風景だったのではないかと思います。

そしてもう一つ特徴的なことは、まぐろは ”生” で食べる習慣があったことです。
新鮮な魚介類が水揚げ後短時間で魚屋さんやスーパーの店頭に並べられたことから、特産品の「桜えび」「しらす」をはじめ、同じようにまぐろも生が一般的でした。
今では冷凍技術の進化と流通の発展から「冷凍もの」が主流になっています。
一般的にまぐろの場合、太平洋やインド洋などの遠洋漁業で獲れた魚は当然冷凍されます。更に冷凍によって熟成されその旨みも出てくると思います。

一方で生まぐろというのは、「近海生まぐろ」のことを指します。
焼津港に水揚げされたまぐろは、主に駿河湾や伊豆七島周辺で獲れた生まぐろです。魚種で言えば、メバチ、キハダ、ビンチョウといった小型のまぐろです。
こうした生まぐろは、流通段階で鮮度落ちしてしまうことから地元で消費されることが多く、このことが ”生で食べる習慣” が根付いたと思います。
このような習慣は、志太地区エリアの他にも例えば和歌山の那智勝浦、宮城の仙台周辺、青森の深浦などでも同じような食文化があると聞いています。

この中でも特にビンチョウマグロ(静岡ではトンボマグロと言われる)はよく食べました。
関東地方の場合、”まぐろは赤い身” というのが一般的ですが、静岡、特に志太地区エリアでは漁獲の高いリーズナブルな生ビンチョウがよく消費されていたこともあり、身の色にはこだわらない感覚があったのではないかと思います。
※ビンチョウマグロの身は白・ピンク色

こうしたことからまぐろの場合、”生であれば魚種は問わない” というような捉え方があったことから、入荷したばかりの新鮮な生まぐろ(メバチ、キハダ、ビンチョウ)で美味しければいいといった「鮮度・味・価格」を重視したその土地ならではの食習慣があったと思います。
ちなみにビンチョウマグロの多くは加工品用(ツナ缶)として流通しています。

 

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地元スーパーの鮮魚売場。
刺身コーナーでは、全てのお造りが生ビンチョウマグロだけの品揃え。
刺身の冊コーナーでも生ビンチョウと生キハダがメイン。
関東や他の地域では多分絶対に見られない珍しい品揃え風景だと思います(笑)

 

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特産品のしらす売場も広く、品揃えが豊富。

焼津で生産された「黒はんぺん」は、昔から志太地区エリアで消費されていました。
焼津港で水揚げされたサバ、イワシ、アジなどの青魚を主原料にした魚肉練り製品です。
はんぺんと言えば、この黒はんぺんのことを指します。私も進学のため東京に出てきた時、逆に白はんぺんを見てビックリしました。はんぺんは黒い物だと思っていたからです(笑)
この黒はんぺんは、静岡の特産品として紹介されたりしますが、主に生産・消費されているエリアは焼津、清水、沼津などの港町周辺です。日持ちしないということもあって広範囲の地域で消費されないといったことからでしょうか。
ちなみに浜松エリアでは白はんぺんが主流のようです。

 

焼津小川港魚河岸食堂

 

静岡県は、関東や中京地区から比較的近く日帰り観光地として訪れる方も多いと思います。
特にバスツアーは、富士山周辺や箱根伊豆、三保の松原、日本平など盛んに企画されたりしています。
こうした中で焼津・清水・沼津・由比などの港町グルメ、市場買い物ツアーなどが人気があるようです。

由比・沼津漁港グルメ

焼津には、「焼津さかなセンター」という魚介グルメと買い物が楽しめる市場があります。
こうしたお魚市場は、全国の港町にあり観光ツアーの立ち寄り先として賑わっています。

そんな焼津さかなセンターとは別に、「小川港魚河岸食堂」という魚介類専門のお店があります。
この食堂は、小川港(焼津港)の目の前にあり漁業関係者専門のお店で一般の人も利用できます。
前述した焼津さかなセンター内には主に観光客が利用する食堂がありますが、こちらの魚河岸食堂は主に地元民が訪れるお店です。
魚介類の販売はなく、あくまでも食堂だけということから観光客が訪れることはなく穴場的な食堂といったところでしょうか。

 

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焼津小川港

 

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小川港市場の目の前にある「魚河岸食堂」

 

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魚介類中心のメニュー一覧

 

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お昼時、漁業関係者や一般のお客さんで賑わっていました。

 

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お刺身定食1000円
この日は、生かつおとまぐろ(メバチ)でした。
以前、お刺身定食を注文した時は、生ビンチョウマグロでした。市場に水揚げされた状況で刺身メニューも変わるのかもしれません。
こういったところが市場の食堂という特徴なのでしょうか。

 

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駿河定食1500円
特産品の桜えびのかき揚げ、しらすと黒はんぺん。

 

今回はお魚の町「焼津」を紹介しました。
こちら方面に来る機会がありましたら、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
おすすめします。

6 thoughts on “焼津グルメと小川港

  1. こんにちは。「くろはんぺん」「しらす」「さくらえび」に反応しました。
    すべて大好物です。

    最近、仲間の一人で清水が実家の人から「釜揚げシラス」をたくさんい頂きました。おいしかっ
    たです。
    こちらで買うと値段も良いのですが、地元ではお手頃の値段と聞きました。良いな~。

    舅の故郷が由比ですので、桜エビを冷凍で送ってもらい、春菊と桜エビのかき揚げを
    作りました。生で冷凍品は築地でないと手に入らないと思います。
    最近は年のせいか、あまり食べられませんが。
    マグロは漬けにして毎晩のように夫の家では食べていましたよ。

    静岡は気候が温暖なせいか、果物もおいしいですよね。

    海に面した地域はうらやましいと思いました。

    1500円の定食、迷わず選びそうです。

    1. Roseさん

      反応していただきありがとうございます(笑)
      黒はんぺんがお好きですか、ちょっとクセのある味なので慣れていない人には好まれませんが、大好物だとおっしゃっていただけると嬉しいです。

      子どもの頃、黒はんぺんと同じくらいよく食べたのがシラスです。
      ほとんど毎日のように食卓に出ていました。それだけ安く手に入ったんだと思います。
      中学、高校の時のお弁当では、ご飯の上に一面シラスが敷かれていたほどでした。
      その代わりおかずはほとんどありませんでしたが(笑)

      桜えびはやっぱりかき揚げが美味しいですよね。
      かき揚げにした時のえびの香りが何とも言えません。

      海に面した地域はやっぱり羨ましいですね。

  2. すーさん様

    こんにちは、すーさんの故郷は良い季節になってまいりました。
    先日主人と焼津鰹三昧という催しに行ってまいりました。
    豪華な鰹丼と握り5カンと潮汁で1000円でした。
    私は食べきれずに主人に手伝ってもらうことに、満腹になりました。
    私は以前は三浦半島に産まれて定年になるまで住んでおりましたので、三崎のマグ
    ロは常食にしていたし佐島のタコや腰越のシラス漁もあったので、生のシラスも知っ
    ておりました。
    こちらに来てそれがスーパーでいつでも買えるのは嬉しかったです。
    しかしクジラのベーコンは食べたことがありますが、イルカは食べたことがありませ
    ん。
    主人に言わせると給食に出ていたよとの事でした。
    スーさんの言うように、こちらはメバチやキハダのマグロが多いですね。
    そして美味しいです。
    ビックリは黒はんぺんです。私はいつも白いはんぺんしか食べてませんでしたので
    最初は恐々食べてました。
    しかし何より安くて美味しいです。おでんにフライに焼き物にと大活躍です。
    そして果物も四季折々美味しいですね。
    近頃は静岡育ちと言うブランド牛も話題です。
    オシャレなお店や食べ物はありませんが、老後の年金暮らしの老夫婦にはいいの
    かもしれません。
    私達二人の両親はすでに見送っており、定年後は車で好きな所に行きたいねと話し
    ておりましたが…
    現在保護猫2匹(キジ君&シロちゃん)がおり、そして私はまだパート勤務をしており
    ます。
    いつになったら出かけられるのかしらと思っております。
    その為にもすーさんのお出かけ、長期滞在の情報を楽しみに拝見しております。

    1. キジ&シロ母さん

      コメントお待ちしていましたよ。
      今回のブログが志太地区の話題を中心にしたことから、キジ&シロ母さんから多分コメントがくるかな?と思っていました(笑)

      そういえば、三浦半島もまぐろの陸揚げ漁港として有名ですよね。
      以前、三浦半島をくるまで周遊した時、港に立ち寄って「まぐろ三昧」の丼ぶりを食べたことを思い出しました。実に美味しかったです。

      黒はんぺんはちょっとクセがあるので、他県から来られた方にとっては敬遠される食材のひとつかもしれません。
      でも安くて美味しいと言っていただけると嬉しいです。
      確かにおでん、フライ、焼き物など、いろいろなかたちで食べられる食材ですから食卓に出る頻度は高いです。
      なによりも1袋(8枚入)で80~100円で買えるのがいいですね(笑)

      いよいよ温かくなってきて行楽シーズンを迎える季節になりました。
      昨年から計画していた九州くるま旅に来週から出かける予定です。
      旅の様子を途中途中でアップしていきますので、またぜひお立ち寄りください。
      気になる観光地、グルメ、その他何でもかまいませんのでコメントもお寄せください。

      1. だいぶ昔のことですが、焼津市中港の魚市場会館2階にあった魚市場食堂へ行ったことが
        ありますが、小川港はないですね。

        焼津に行く機会があったら、ぜひ寄ってみたいです。
        一見さん扱いされないように、すーさんの紹介だよと言って訪ねますね(小笑い)

        1. Rockyさん

          管理人さんの掲示板でRockyさんの台湾滞在記読ませてもらっていますよ。
          台湾は親日なのでとても過ごしやすそうですね。
          機会があったらぜひ行ってみたいと思っています。

          小川港は、東名焼津ICや焼津駅からも近いので、ぜひ立ち寄ってみてください。私の紹介でなくても大丈夫ですよ(笑)
          誰でも気軽に利用できます。

          そういえば、中京エリアはカゴメの本拠地ですから、ソースはカゴメ一色ですね。静岡も愛知県の影響で昔からカゴメソースが主流でした。
          関東ではブルドックがメインでカゴメソースの品揃えがないスーパーもあります。
          今回帰省した時、カゴメソースをおみやげで買ってきました(笑)
          私は今でも野菜とトマト風味のあるカゴメソースのファンなんです。
          生まれ育った頃のDNAはなかなか変わらないものですね(笑)

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