総選挙結果に思うこと (2)

三権分立と選挙制度

 

多くの国民の皆さんが、安倍政権になってから国会での論議が形骸化されてきていると感じているのではないでしょうか。
十分な議論を尽くさないで採決に持ち込んだり、官僚が書いた答弁用紙をそのまま棒読みする大臣、質問に対しての答弁が全く意味不明な発言になったり、繰り返すだけの答弁に終始・・・。
「質問に応えていないんじゃないの?」「アレッ!この閣僚何を言っているの?」とか。
国会中継を見ただけでこうした光景に疑問を持つ人は多いと思います。
私の友人に昔から自民党支持の方がいますが、その方でさえ「ちょっとおかしいよね」「異常だよね」と疑問符を投げかけています。

行政が出す政府提出法案を国民から選ばれた議員が国会という場で審議し議論することが立法府の役割です。
その法案への質問に対してまともに応えられない、応えようとしない状況になっているのが今の現状ではないかと思います。

 

2017選挙5  2017選挙3

 

■なぜこうした状況になってきたのか考えてみました。

それは安倍政権になってから与党議員の絶対多数の国会運営になったからだと思います。
質疑時間が限られること(配分時間)もそうですが、決定的なことは絶対多数派であることから、審議するしないに関わらず政府提出法案は100%可決できるおごりがあるためではないでしょうか。

三権分立
日本の政治の枠組みは、立法(国会)、行政(内閣)、司法(裁判所)の三権が互いにチェックし合う三権分立の体制である。
国家権力を、立法、行政、司法のそれぞれ独立した機関に担当させ、相互に抑制・均衡をはかることによって、権力の乱用を防ぎ、国民の権利・自由を確保しようとする原理。
コトバンク

冒頭でも述べましたが、本来であれば国民から選ばれた議員が国会で法案を審議し、国民にとって有益なかたちでの可否で採決されることが望まれますが、与党の絶対多数によって ”法案提出と採決” の2つの権力(立法・行政)が集中してしまう現象が起きています。

与党議員の中には、法案への修正・反対意見を持つ人もいるかもしれませんが、国会提出前の自民党内審議(総務会)で最終決定されると、自民党議員に ”党議拘束” がかかるため国会での反対意見を述べることができなくなります。
こうして国会に提出された時点で法案の成立が事実上決定することになり、国会審議を通じて法案が修正される余地はほとんどない状況になるのでしょう。

 

小選挙区制度の弊害

 

■ではなぜこうした絶対多数派の状況になってしまったか考えてみました。

それは今の選挙制度の「小選挙区制」にあると思います。

皆さんもすでにお分かりになっていると思いますが、自民党が得た比例得票は33%にすぎません(有権者比17.3%)
それなのに全議席の6割の議席を得たのは小選挙区制度によるものだと思います。
一つの選挙区で1人しか当選しない小選挙区は、議席に反映しない大量の「死票」を生みます
その結果第1党に得票以上の議席を与えることになります。
大政党有利に民意をゆがめる小選挙区制中心の選挙制度には大きな問題があると思います。
こうした選挙制度については、多くのメディアや有識者も指摘していました。
より民意を反映させるための選挙制度として、比例区の割合を増やす、あるいは全て比例選挙にする。その他、中選挙区制度に変更するなどの意見もありました。

 

議会制民主主義
議会制民主主義が本当に民主主義として機能するためには、代表者(議員)の構成が、民意を正しく反映するものでなければならない。したがって、国民の意思を可能なかぎり反映できるような選挙制度が要請される。
議会においては多数決による決定の前に、少数意見を最大限に尊重した冷静な討議がなされなければならない。
人間科学大辞典

民主的な議会運営では、民意を反映する選挙制度について指摘されています。更に ”少数意見の尊重” という点においても十分考慮されなければならないと思います。
結果として野党が小議席になりましたが、選挙結果の比例得票は野党得票数の方が多いということを念頭に国会運営がされることを願っています。

 

2017選挙1

 

「立憲」を冠にした意味?

 

今回の選挙では、民進党が分裂して「希望の党」への合流と「立憲民主党」という新党が生まれました。
枝野氏が中心となってその党名が「立憲」という言葉を冠にしたことは、深い想いと願いが託されたように思いました。

立憲主義
政府の統治を憲法に基づき行う原理で、政府の権威や合法性が憲法の制限下に置かれていることに依拠するという考え方。「憲法に立脚する」という意味合いである。
ウィキペディア

基本的人権、自由及び権利、個人の尊重をはじめ、前述した三権分立、議会制民主主義においてもそれを遵守し、憲法の制限下で国会運営が行われなければならないと思います。
現在、選挙制度(小選挙区制=民意が反映されない)そのものに大きな問題がある中、多数派を占めた党による国会運営の横暴に一石を投じる意味も含まれていると思いました。
最近ではモリカケ問題など、そんな現実(国会運営)に有権者は辟易しているのではないでしょうか。

今回の選挙で直接民意が反映される比例票では、立憲民主党が1100万票獲得しました。
支持した有権者にとってはさまざまな考えがあると思いますが、今の政治に対しての批判票としての民意がこの数字に表れていると思います。
そして、枝野氏は「国会運営における単なる数合わせはしない」とキッパリ言い切っていました。
このことは、目指す方向性と理念は曲げず、政策重視で対応していくという決意から多くの有権者の支持を得たのではないでしょうか。

アベノミクスによる格差と貧困が進み、改憲問題をはじめ消費税増税、原発補償問題と再稼働、社会保障制度の後退、そして民意をないがしろにした国会運営などに対しての疑問や怒りがこの1千万を超える票になったと思います。

 

衆院選の結果を踏まえ、首相や各閣僚の記者会見では、「謙虚」「真摯」「丁寧」という言葉が目立ちました。
自民党の大勝におごらず、国民目線で政治を進める、という意思表示だと思いますが、そんな舌の根の乾かぬ内に野党の臨時国会延長要求にも耳を傾けず、更に自民党内から「野党の質問時間削減」を求める声が出ている状況です。

本来、立法府(国会)の役割は、行政(内閣)のチェック・監視にありますが、逆に行政府の立法府に対する干渉が行われようとしています。
まさに「数のおごり」がこうした状況を生み出しているのではないでしょうか。
二つの権力が集中したことでどれだけ民主主義の根幹を揺るがすものになっているか、今私たちは目の当たりにしています。

 

「総選挙結果に思うこと」 おわり

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