60歳からの現実 (リアル) (17)

いつまで「うちの会社」意識?

 

私の山仲間たちとの付き合いは現役時代までさかのぼります。
ほとんどのメンバーが50代の頃から登山を始め現在に至っています。
そんな仲間たちは、すでに60代に突入しました。(メンバーの9割)
そして、私を除く全ての仲間は継続雇用を選択して働き続けています。(内、一人は65歳完全リタイア)
そんな仲間たちとの会話は、山の話以外で仕事のこと、自分の健康のこと、親の介護や孫の話題になります。
多分同世代の人たちの話は、こうした話題がほとんどだろうと思います。
特に男性の場合、継続雇用で役職定年になっても仕事の話が中心になることが多分ほとんどではないかと思います。

定年前の現役時代(サラリーマン)、男たちが集まればほとんどが仕事の話で終始していたと思います。
「思います」というより「していた」と断言できるものだったのではないでしょうか。
これが仮に同世代の女性同士(女子会)の集まりだったら、多分仕事の話は半分以下で家庭のことやこれからの自分のことになるのではないでしょうか。
以前のブログ(「定年女子」)でも記しましたが、女性の場合は、仕事以外でも家庭のことや趣味、レジャー、グルメなど思考や行動が多岐に渡っていることから話題が豊富です。

 

サラリーマンとして企業・団体・官庁などで働き、つまり機能集団としてのゲゼルシャフトに帰属していた人生を送ってきた人たちは、ひとたびそこから去ったら、多くの場合、もはややることがないのである。
若い頃から帰属社会の外で自分自身の関心領域でのネットワークを構築したり、自分の生活基盤の中でコミュニケーションをつくってきた人は、めったにいない。
特にこれまでの日本のサラリーマンは組織への帰属意識が強く、「うちの会社」意識にのめりこんできた。
寺島実郎著「シルバー・デモクラシー」(岩波新書)
※ゲゼルシャフト:利益集団、利益社会。共同体、社会集団などの意味

私自身も35年間の会社生活の中で「うちの会社」的な意識を持ち、それが今までの人生の全てであったといっても過言ではありません。
生きるための生活の糧(自分や家族)はそうした組織に帰属すること、又、自分自身を高め、仕事(組織)を通して社会貢献するという観点からも必要なことであり、ほとんどの人に共通するものだと思います。
問題はいつまで帰属意識を持つのかという点です。

定年を迎え今までやるだけのことはやってきたと思います。
そして継続雇用で働き続けても、これからの自分や家族のことを見つめなおし、別なかたちで行動を起こす時期にきているのではないでしょうか。

私たちのような世代が集まった時、仮に「うちの会社」ではなく次の仕事(起業、やりたかった仕事など)に意欲を持ちチャレンジする話だったら歓迎しますが、いつまでも「うちの会社」の話ばかりでは、「もういいんじゃないの」という気持ちにもなります。

寺島氏は、「ひとたびそこから去ったら、多くの場合、もはややることがないのである」と言っています。
「そんなことはない!」と反論したいですが、現実は、「多くの場合」そうなんですね。

 

先日、私たち夫婦共通の友人(既婚女性)が来訪しました。
彼女は今年定年を迎えますが、管理職のまま継続雇用で働き続けることが決まっています。まさに「定年女子」の典型的な方です(笑)
そんな彼女は、時々我が家に来て夕食を共にし、夜遅くまでおしゃべりして帰ります。
仕事の話はこちらから問えばしますが、話題はいつも趣味やレジャーの話で終始します。
今回も「今度、友人とグアムにゴルフに行くの」とか「ね~、今度落語に行かない?」という具合に誘いを受け、来年早々2回の落語公演の予約を頼んだほどでした。
仕事は仕事、遊びは遊びとハッキリ区別して同時並行で人生を謳歌している姿です。
こうした女子を見れば、定年後も元気で意欲的な生き方を楽しめるんだな~と思いました。

 

「してもいい自由」を選択

 

先日、登山仲間たちと槍ヶ岳登山を終えて、来年以降から5年先までのプランを立てていました。
ほとんどのメンバーが継続雇用になったということで、多少時間的にも余裕が生まれてきたということと、ワンステップ上げた登山をしようと思い連泊縦走登山なども考えながら計画を練っていました。
北アルプスでは雲ノ平、裏銀座縦走もしてみたいな~、南アルプス縦走もいいな~、ちょっと遠征して東北の山旅もいいんじゃないかな~など・・・。そんな仲間たちとの登山の思いは尽きません。

そんな時、途中ではたと手が止まりました!
「待てよ、あと何年こうした登山ができるんだろうか?」と。
単独であればそんなことはあまり考えませんが、これがパーティ登山ということになれば、各人の年齢や個人ごとの身体状況、体力差など考えなければなりません。

私たちの世代が、登山というひとつの共通した趣味を持った時、年齢や体力的なことを考慮に入れることが必要なんですね。
なにも高山ではなく近場の低山でもという考えもありますが、いざ時間的な余裕が出てきたならば憧れの山や稜線を縦走する登山をしてみたいという思いになります。
ようやく余裕ある時間ができた時、その先自分の力で行動できる期間はあと何年だろうか?ということはなんとなく分かっているつもりですが、いざこうしてプランを立てると現実的なものとして突きつけられたような気持ちです。

 

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ちょうどそんなプランを立てていた時、楠木新著の「定年後」(岩波新書)を読んでいました。
この中で楠木氏は、森村誠一氏(小説家)の言葉を引用して、
60歳から70歳は、本当は自分の能力が一番発揮される時期であって、それが組織の都合により60歳で肩を叩かれてリタイアする。そしてその後の20年、30年は何をしてもいい自由を選ぶのが「誉生」。何もしなくてもいい自由を選ぶのが「余生」である。
と規定する。そして、「しなくてもいい自由」より「してもいい自由」を選ぶのがポイントで、自分の一番したいこと、今までしたかったけれど組織の都合や家庭の都合でできなかったことである、それが挑戦的であり、誉れある生ではないかと述べている。

最初の「60歳から70歳・・・発揮される時期」に注目しました。
「その後の20年、30年は何をしてもいい自由を」を選べますが、身体的な老化から人の手を借りることになる年齢です。(健康寿命)
そういう意味では、60代に「してもいい自由」をもっとはっきり意思表示し行動することが大切なことではないかと思いました。
ここで、「してもいい自由」は自分自身のことだけでなく、”家族や妻と共に”  ということや ”親の介護に専念” ということも、更にはボランティア活動、起業なども含んでいると解釈します。

継続雇用で「うちの会社」に縛られるというよりも、「うちの会社」に居場所を求め続ける意識が「してもいい自由」を自ら放棄しているように思えます。
前回「定年女子」ブログの中で継続雇用を選択する理由を三つ挙げました。
①経済的な理由、②仕事に生きがい、働くことが好き、社会に関わっていたい、③とりあえず、やることが見つからないから。
最初はこの三つの理由が絡み合った状態で仕事を続けていると思います。
そして65歳完全リタイアする時期になっても、その理由は絡み合った状態のままの方も「多くの場合」いると思います。
私たち60代の過ごし方は、継続雇用で働き続けても「定年女子」(私の友人など)のように仕事は仕事、家庭は家庭、そして遊びは遊びとハッキリ分けて「してもいい自由」を選択する生き方なのではないでしょうか。

なぜなら、私たち山仲間の登山に限らず ”あと何年できるだろうか” という問いかけがあるからです。
そして、「60歳から70歳は、本当は自分の能力が一番発揮される時期」なのかもしれないからです。

8 thoughts on “60歳からの現実 (リアル) (17)

  1. こんにちは~。

    >”あと何年できるだろうか” という問いかけがあるからです。

    同感です。
    比較的私は元気で、大病はなかったので元気に生んでくれた両親には感謝しています。

    ただ、2,3年前から股関節に痛みが出るようになってしまい、やはり遠出は少し億劫になって
    しまいました。
    でも近場の里山ウォーキングは楽しめます。その時その時の状況でお楽しみも変化してくるよう
    です。

    元気な時間を大切にするという思いはいつも心の片隅に置いてあります。

    1. Roseさん

      コメントありがとうごじます。
      身体状況は人それぞれですが、大なり小なり何らかの不具合が出来てくる年代だと思います。
      特に足腰や体力を使う登山、トレッキングなどは、ほんの少しの身体的不調が大きく影響してきます。
      そういう意味から言っても日ごろの健康状態には気を使いますね。

      私や仲間たち、「あと何年できるか?」という問いかけは近い将来というよりも、もうすでに目の前に来ていると思います。
      来週、そんな仲間たちとの集まりがあります。
      その席でこのテーマ(あと何年できるか?)を投げかけてみようと思ってます(笑)

  2. すーさん様

    今晩は、こちらは田舎なので朝晩はしのぎやすくなりました。
    ほんとですね、あと何年できるんでしょうね。
    主人は私より一つ上なので、この思いは強いのだと思います。
    時々いつまで働くつもりなのと言ってきたりします。
    お互いの都合を待っていたらいつになるかわからないので、まずは自分で行動を起こさないといけませ
    んね。
    所で教えて頂きたいのですが、北海道に50日ほど行かれていた時は自宅の管理はどのようになさって
    いたのですか?
    たとえば郵便物などです。
    我が家はセコムが付いているので防犯はよろしいのですが、庭もあり植物なども心配です。
    いずれは保護猫ちゃんを病院に預けて、北海道を周りたいと思ってます。
    差し障りの無い程度で結構です、よろしくお願いします。

    1. キジ&シロ母さん

      お久しぶりです。お元気そうでなによりです。

      さて、ロングステイ時の家の管理ですが、これといって特にありませんでした(笑)
      郵便物は一ケ月止めました(郵便局で手続き、一ケ月まで止めて保管してくれます)
      ご近所で親しくしている方に鍵を預け、時々見てもらうように頼みました。その時、郵便物以外で投函されているチラシなどの回収や一ケ月以上経った郵便物の回収なども。
      庭はほとんどないので出かける前に雑草刈と除草剤をまきました。
      電気、ガス、水道はそのままで、電気のコンセントだけは全て抜いていきました。
      私の家でも猫ちゃんを19年飼っていましたが、3年前に亡くなり今回のロングステイを計画することができました。
      その他、施設に入っている母のこともあったので、田舎に住む兄や義理の姉には連絡を入れておきました。ご近所では班長さんだけには話をして、何かあった時に携帯電話番号を伝えておきました。

      こんなところですね。帰ってきてから家のことでは特に問題ありませんでした。
      最初は長期留守にするということで心配でしたが、何もなく良かったと思います。
      これからも何かありましたら、いつでもご連絡ください。

  3. すーさん様

    さっそくのご指導ありがとうございます。

    私は医療従事者で施設に勤務しておりました。
    人生の先輩方と毎日過ごしておりました。
    その時感じたことは、身体を鍛えておかないと大変な事になるなということです。
    お金があっても自分で歩けないと何処へもいけないんですよね。
    そこで退職を前にジム通いを始めました。
    神奈川に住んでいた時代から数えるとジム生活も7年目に入りました。
    これは大変良かったと思っております。今ではジムに行って体を動かさないと気持ちが悪いです。

    さて長期の旅行はご家族によって環境も変わりますので、ケースバイケースなんですね。
    私共はもうどちらの両親も虹の橋を渡ってしまいましたので、そこの所の心配はありません。

    後は少しづつ計画を練っていくことでしょうか…
    最初から長期のステイの計画はありません。
    職場も68歳の先輩が7月に2週間のフランス旅行に行きました。
    モンブランに登って来たそうです。で私もお休みは取れそうかなと思います。

    主人はあと10kg減量して山を再開したいようです。昔槍で滑落したのですが、やはりお山は恋しいよう
    です。

    色々長くなりました。リタイアの先輩としてまたご相談することもあると思います。
    すーさんの故郷は、朝晩涼しくなりました。庭はもう虫の声でにぎやかです。
    夜になると外は真っ暗で、時々ネオンの不夜城が恋しくなります。
    まだまだ暑い日もありますので、どうぞご自愛を。
    大変有難うございました。

    1. キジ&シロ母さん

      医療施設に勤務されておられたんですか。
      そうしたお仕事の経験から日常的に身体を鍛えることが大事というお言葉、たいへん説得力があります。それと継続して体を動かすことも効果があるんですね。
      妻も昨年からカーブスに行くようになり、短時間ですが楽しくやっているようです。
      私も今年から週2~3回程度、市営プールとジムに行っています。皆さん元気で楽しそうに体を動かしています。
      身体を動かすことが苦痛というより、楽しく動かした方が効果があるんじゃないかと思うようになりました(笑)

      旅行やロングステイなどは、やっぱりケースバイケースだと私も思います。
      例えば、憧れの旅を見聞きして自分もしてみたいと思っても、様々な条件や個人的なこともあるのでその通りにいきませんよね。
      自分スタイルの旅でいいんじゃないかと思います。まさにオリジナルな旅こそ満足感ある旅になるんじゃないかと思います。

      こちらも涼しくなってきましたが、まだまだ湿度が高いのでジットリした日が続いています。
      そちらは湿気が少ないので日中でも過ごしやすいと思います。
      でも朝晩は気持ち良い気候になったので睡眠がとれるようになりました。
      それだけでも助かりますね(笑)

  4. 60代から70代が、自分の能力が一番発揮される時期って
    なにをしたいかで変わってきますね。
    起業するのは早いほうがいいと言いますが、実は起業するつもりで働いてきたら、多少年食って
    てもOKです。
    反対に造形っていうか、創造的なモノ作りたいなら、60代は遅い。
    30代から40代です。
    創造的な作品創る方に、何度かお目にかかった事ありますが、専業主婦多いです。
    家事労働も大したこと無くなったら当世は、作品を制作するのに最高の環境です。

    やりたい事にによって、いつリタイアするって時期が変わりますね。

    わたしもツアーではなく、行きたい場所で楽しむ事が条件ですと、55歳が最適です。
    でも、信じて付いてきてくれる従業員裏切るのが難しいです。

    仕事も、年齢制ではなく成果制に変わったほうがいいです。
    雇用延長で、意味もなく会社に在籍して無駄飯食いが多すぎます。

    1. ヒロさん

      コメントありがとうございます。
      お久しぶりですね。

      岸本さんの「定年女子」や内館牧子さんの「終わった人」などの書籍を読んだりすると、女性とは、男性と違っていろいろ多方面に渡って興味、関心事があるというのが分かってきます。
      男性は仕事といえば仕事のことだけになってしまいますが、女性の場合、仕事であっても「その仕事を通して」いろいろな感性が発信されてくるような気がします。
      常にアンテナを立てているというんでしょうか。
      そういう意味でも、岸本さんや内館さんもおっしゃっていますが、働く女性の場合、定年退職を待たず自分の好きな道、やってみたいことなど躊躇しないでその道に入っていく場合が多いようです。もちろん全てではないですが、その傾向はあると述べていました。
      男性の場合、どうしても「それしかない」「それ以上考えない」というんでしょうか。
      だから定年退職しても、そのまま継続雇用に「自分の居場所」を求めてしまうんじゃないかと思います。それも65歳まで引きずってしまうことになるんですね。
      ヒロさんがおっしゃる「意味もなく会社に在籍」は「自分の居場所確保」なんだと思います。
      これも全てではありませんが、その傾向があるように思えます。

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